著者
澤田 隆介 岩田 通夫 梅崎 雅人 臼井 義比古 小林 敏一 窪野 孝貴 林 周作 門脇 真 山西 芳裕
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.2B01, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
2

漢方薬(漢方方剤と呼ばれる葛根湯など)による医療は日本の独創的かつ伝統的な治療体系である。その有用性は、欧米でも注目されている。本研究では、富山大学和漢医薬学総合研究所が長年に渡り蓄積してきた莫大な漢方医薬情報を、統合的に解析するための情報技術を開発し、漢方薬の作用機序の科学的考察や、漢方薬の新規効能予測を行うアルゴリズムやデータベースを開発した。漢方薬、その構成生薬及び成分化合物と標的タンパク質の階層的関係から、漢方薬が生体に薬理学的効果を及ぼすメカニズムの考察を可能にするだけでなく、in silico結合シミュレーションや機械学習の手法を用いて、漢方関連ビッグデータを解析することにより、漢方薬の新しい適応可能疾患の予測(漢方薬リポジショニング)も可能にした。本研究で構築したデータベース「KampoDB」は、web上で公開している(http://wakanmoview.inm.u-toyama.ac.jp/kampo/)。
著者
福島 真太朗 本山 裕一 吉見 一慶
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.2C12, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
9

近年,機械学習や深層学習を用いた逆合成の経路探索が活発になっている.本研究では比較的簡便なColey et al.の方法に着目する.この方法は目標とする生成物と反応データベースのマッチングを行い,生成物と反応物の類似度をそれぞれ計算し,その類似度に基づき一段階前の反応候補を出力する.Coley et al.の方法は既存の方法に比べて比較的高精度である一方で,探索空間は過去に生じた反応に限定される.本発表では以上の問題点に着目し,探索空間を広げるために敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Network,GAN)を用いた手法を提案する.この手法は,探索空間を広げるためにGANに基づく反応物の生成モデルを学習し反応物を生成した後に,順方向の反応予測により反応式を生成する.その結果,既存の反応データベースには存在しない反応物が生成された.また,列挙した反応経路の中に正解が含まれるサンプルの割合は既存手法よりも高くなった.現在,探索空間が拡大されたことの検証も進めており,当日は詳細について発表する.
著者
影山 椋 清野 淳司 藤波 美起登 五十幡 康弘 中井 浩巳
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.2C11, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
4

Orbital-free密度汎関数理論(OF-DFT)では、原子・分子のエネルギーを軌道を用いず電子密度の汎関数で表す。我々は運動エネルギー(KE)項について、Kohn-Sham DFT(KS-DFT)計算で得た電子密度とKE密度の関係を機械学習で結び付けKE密度汎関数(KEDF)を構築する手法を開発した。機械学習により構築されたKEDF(ML-KEDF)は従来のあらゆるKEDFより小さい誤差でKS-DFTのKEを再現した。一方、ML-KEDFを用いてOF-DFT計算を行うには初期電子密度から基底状態の電子密度を決定する最適化計算が必要となる。本研究はこの計算を実装した。またこの計算で用いる、ML-KEDFの電子密度に関する微分で表される運動ポテンシャル(KP)を機械学習により構築する手法を開発した。幾つかの原子・分子に対し最適化された電子密度と全エネルギーの計算精度について検証を行った。
著者
岩田 通夫 Longhao Yuan Qibin Zhao 田部井 靖生 山西 芳裕
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.2B09, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
4

ヒト由来細胞の薬物応答を遺伝子レベルで明らかにすることは、創薬において重要課題である。しかしながら、実際の薬物応答遺伝子発現データは多くの欠損値や未観測値を含んでいる。本研究では、新規のテンソル分解アルゴリズムTT-WOPT (tensor-train weighted optimization)を用いて、高階テンソル構造からなる薬物応答遺伝子発現データを解析する手法を提案した。本研究では、208薬物、978遺伝子、15細胞、3時点からなる薬物応答遺伝子発現データに適用した。実際に、提案手法は既存手法よりも、薬物応答遺伝子発現データ中の欠損値を正しく補完できた。また、遺伝子発現データから薬物の効能を予測する問題においてTT-WOPTで欠損値を補完することにより薬物の効能予測の精度が向上することを示した。提案手法は、薬物の標的分子予測や新規効能予測など様々な用途への活用が期待できる。
著者
萩原 正敏
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.1S01, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
5

我々はスプライシングなどの遺伝子発現過程を、蛍光・発光プローブによって生体内で可視化する独自技術を開発し、創薬スクリーニングに用いることで、RNAスプライシングを操作できる合成化合物を開発してきた。その作用機序の検討やトランスクリプトーム解析などから、スプラシング操作薬の標的となり得る遺伝性疾患の条件が判明しつつある。遺伝病データベース等をもとに標的疾患をリストアップして、独自のスプライシングアッセイと、疾患iPS細胞および疾患モデルマウスによる薬効評価を行っている。このような新しい創薬手法を駆使して、従来は治療出来なかったライソゾーム病などの遺伝病や特殊な癌などに対する治療薬候補物質を見出している。また、脳梗塞や神経変性疾患などに対する再生医療も、小分子で実現できる可能性が見出されている。ケミカルバイオロジーに立脚した新しい創薬手法とその今後の可能性について議論する。
著者
宮尾 知幸 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.1A06, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
7

三次元リガンド情報に基づきヴァーチャルスクリーニング(VS)を行う際、標的マクロ分子との結合状態におけるリガンド分子の立体配座が重要な役割を果たすと考えられる。また、類似性検索に基づくVSでは、活性化合物の類似構造のアンサンブルを検索クエリとして利用する手法が提案されている。本発表では、リガンドベースVSにおいて、活性化合物のコンフォメーションが重要なのか否かを判断するためのベンチマーク計算、並びに、三次元リガンド構造に基づくVSにおけるアンサンブル効果を検証した結果を報告する。コンフォメーションはそれほど重要ではなく、アンサンブル効果は三次元リガンド構造に基づくスクリーニングであっても有効であるとの結果となった。
著者
小寺 正明
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.2Y05, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
10

代謝産物とその代謝経路に関する我々の知識は、天然物のほんの一部に過ぎない。既知酵素のリストであるIUBMB Enzyme List は参照経路に基づく代謝経路再構築の基礎である。ところがこのストラテジーは生物種固有の天然物生合成経路や、環境汚染物質の生分解経路には本質的に向いていない。近年私は代謝経路のde novo再構築として、新規化合物を生成するアプローチとは別に、機械学習を用いて既知化合物間を酵素反応でつなぐアプローチを開発した。また、その反応を触媒する酵素の予測として、化学構造からのECサブサブクラス予測手法と、化学構造からの酵素タンパク質予測手法を開発した。これらの研究は有機合成戦略の問題と類似した問題であり共通部分も多いが、利用可能な情報や、取ることができる戦略などの違いがあるのでそれを理解することが大変重要である。
著者
加藤 涼太 田中 健一 小寺 正明 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.1P02, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
10

化合物の物性を予測する手法の一種に、定量的構造物性相関(QSPR)がある。QSPRでは、物性既知の化合物を用いて化合物の構造と物性値の間の関係を統計的手法でモデル化する。QSPRの入力として化学構造から計算した記述子を用いる場合、その中に予測に必要な情報が含まれない可能性や、3次元構造の考慮が難しいという問題が挙げられる。そこで、本研究では記述子を計算することなく原子の3次元座標値と原子番号を入力とする統計手法を開発した。前処理で座標系の統一等を行った各原子の座標値と原子番号を再帰型ニューラルネットワーク(RNN)の入力として用いモデルを構築した。 オクタノール水分配係数に関して、記述子を用いる既存の手法と比較し、提案手法の予測精度が優れていることを確認した。今後、データセットの形式による影響の除去、複数の立体配座の考慮により、より汎用な手法になると期待される。
著者
菅原 悠樹 小寺 正明 田中 健一 中野 博史 浮田 昌一 白沢 楽 冨谷 茂隆 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.2C08, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
8

蛍光物質は液晶ディスプレイや照明、創薬の動物実験などの広い用途で用いられており、重要性が高まってきている。蛍光を示す化合物のなかでもBODIPYと呼ばれる二置換ホウ素原子とジピロメテンの複合体を分子骨格に有する化合物は、シャープなスペクトルを持ち、溶媒環境による波長変化の影響が小さく、量子収率が安定して高いので実用性が期待される。本研究では望ましい物理的性質を持つ新しい候補BODIPY化合物を迅速かつ正確に予測するモデルを提案する。提案モデル(MAE = 17.34、R2 = 0.90)は、量子計算モデル(MAE = 24.71、R2 = 0.84)と比較して、非常に正確な性能を示した。提案モデルが、吸収波長の予測に重要と判断した記述子には化学の知見と一致するものもあり、提案モデルの信頼性を示している。しかし提案されたモデルは溶媒情報を適切に活用できておらず、今後のさらなる改良が期待される。
著者
井上 貴央 田中 健一 小寺 正明 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.2B11, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
7

近年、機能性有機分子の開発が盛んに行われている。開発の効率化のための手段として構造生成器が挙げられる。目的物性を有する構造を生成するために設計された構造生成器DAECSに対し、本研究では生成構造の多様化に取り組んだ。構造生成の起点となる構造を生成構造群から選ぶ際に、範囲の制限とクラスタリングを組み合わせることで、生成構造群の多様性の向上を目指した。提案手法を評価するため、ヒスタミンH1受容体に対するリガンド構造の生成を行い、生成構造の分布と生成構造群の任意の2構造間のTanimoto距離の平均を確認した。既往手法と比べて提案手法の方が、生成構造群の分布は散らばっており、平均Tanimoto距離が大きいため、提案手法の生成構造群の多様性が示唆された。また、提案手法の計算効率が良いことを理論的に示した。しかし、ターゲットに近い構造が生成されにくく、生成構造が初期構造に依存するという課題が見出された。
著者
鈴木 天音 田中 健一 小寺 正明 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.1P04, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
8

所望の活性を持った化学構造を得るinverse-QSARはケモインフォマティクス分野における主要なタスクのひとつである。近年では深層生成モデルを利用した構造生成手法が提案され始めているが、それらはいずれも多量のデータを必要とするものであった。創薬の現場においては、必要としているタンパクに対する活性データが大量に得られている状況は稀である。そこで本研究では多量の教師なしデータと少量の教師付きデータを組み合わせて学習を行う半教師付き学習を構造生成手法に応用した。構造生成手法の中で用いている活性予測の性能評価をalpha2Aアドレナリン受容体に対するリガンドデータについて行い、既往の手法に対して優れた予測精度を持つことを確認した。実際の構造生成、およびその生成結果の検証が今後の課題である。
著者
田中 るみ子 中山 伸一
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.1A04, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
9

特許公開公報に記載されている化学物質名は、多様であり、記載法も書き手に委ねられているため共有化を妨げている。化学物質名を自動抽出できれば、共有化に役立つ。日本語の化学物質名を抽出するために、化学物質名をタグ付けしたコーパスの作成を行い、文章から単語の切り出し、切り出した単語の連結、連結した単語群から化学物質名を取り出す方法を検討した。化学物質名と間違えやすい官能基名との選別比較も行った。