著者
清野 淳司 中井 浩巳
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-17, 2014-03-21 (Released:2014-03-21)
参考文献数
63
被引用文献数
3 6

本稿では,大規模な重元素化合物を高効率・高精度に計算するための理論を取り上げる.まず相対論的量子化学の現状を概観し,それを踏まえて目的を遂行するためにどの部分を考察しなければならないのかを述べたい.次にこれらの問題点を解決すべく,著者らが開発した高効率・高精度な2成分相対論計算手法,無限次Douglas-Kroll-Hess変換に基づく局所ユニタリー変換法の理論について解説し,数値検証を行うことで有用性を示す.さらに本手法を分割統治法へと拡張することにより,計算全体の線形スケーリングを達成する手法となることを示す.本手法に基づけば,非相対論と同等の計算コストで (スピン非依存の) 4成分相対論と同程度の精度を与えることができるため,従来の非相対論的なSchrödinger方程式から相対論的なDirac方程式へのパラダイムシフトが可能となる.
著者
影山 椋 清野 淳司 藤波 美起登 五十幡 康弘 中井 浩巳
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.2C11, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
4

Orbital-free密度汎関数理論(OF-DFT)では、原子・分子のエネルギーを軌道を用いず電子密度の汎関数で表す。我々は運動エネルギー(KE)項について、Kohn-Sham DFT(KS-DFT)計算で得た電子密度とKE密度の関係を機械学習で結び付けKE密度汎関数(KEDF)を構築する手法を開発した。機械学習により構築されたKEDF(ML-KEDF)は従来のあらゆるKEDFより小さい誤差でKS-DFTのKEを再現した。一方、ML-KEDFを用いてOF-DFT計算を行うには初期電子密度から基底状態の電子密度を決定する最適化計算が必要となる。本研究はこの計算を実装した。またこの計算で用いる、ML-KEDFの電子密度に関する微分で表される運動ポテンシャル(KP)を機械学習により構築する手法を開発した。幾つかの原子・分子に対し最適化された電子密度と全エネルギーの計算精度について検証を行った。
著者
寺西 慶 石川 敦之 中井 浩巳
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.A15-A29, 2016 (Released:2016-08-10)
参考文献数
115
被引用文献数
3 4

アルカノールアミンによるCO2の化学吸収法は,発電所などの大規模CO2排出源における排出削減措置として現在最も有効な手段の1つと考えられている.現在,主にCO2回収過程におけるエネルギーコストの削減を目的として様々な吸収液が開発されており,CO2吸収液に用いられるアミンの分子設計が実験・理論の両面から精力的に進められている.本稿では,CO2とアミンの化学反応の理解・分析において理論計算,特に量子化学計算および第一原理分子動力学計算がどのように用いられてきたかを解説する.
著者
中井 浩巳
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
pp.2021-0020, (Released:2021-08-14)
参考文献数
130

日本コンピュータ化学会(SCCJ)は,日本化学プログラム交換機構(JCPE)と化学ソフトウェア学会(CSSJ)が合併して2002年1月1日に設立され,まもなく創立20周年を迎える.この記事では,コンピュータ化学に関連する文献を紹介することにより,SCCJの過去20年間を振り返りる.まず,化学,物理学,工学,材料科学,生化学などの研究分野ごとに文献数を比較する.次に,引用数の多い上位100位の文献のいくつかを,方法論,ソフトウェア,データベース,およびトピックに分類して説明する.
著者
秋葉 欣哉 大越 昌樹 菊池 那明 渥美 照夫 中井 浩巳
出版者
基礎有機化学会(基礎有機化学連合討論会)
雑誌
基礎有機化学討論会要旨集(基礎有機化学連合討論会予稿集) 第20回基礎有機化学討論会(第39回構造有機化学討論会・第59回有機反応化学討論会)
巻号頁・発行日
pp.30, 2009 (Released:2009-11-20)

秋葉らは3中心4電子超原子価結合の概念に基づき、オクテットを超え、中心炭素原子が形式的に10個の価電子を収容する安定な5配位超原子価炭素化合物(10-C-5)を合成した。 本研究では、同様の概念に基づき12個の価電子を収容する、6配位超原子価炭素化合物(12-C-6)の安定構造が存在することを量子化学計算により示し、またその誘導体における置換基の影響を解析し、より安定な超原子価結合を有する12-C-6化合物を提案する。
著者
稲森 真由 五十幡 康弘 王 祺 中井 浩巳
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.124-126, 2018 (Released:2018-10-16)
参考文献数
12
被引用文献数
1

The crossing of potential energy surfaces plays an important role in photo-decay processes and photochemical reactions. The energies and geometries of the crossing points have been reported for various molecules using quantum chemical calculations. In this research, excitation energy components of uracil are investigated to understand the characteristics of the crossing points. We revealed that the HOMO−LUMO exchange integral becomes approximately zero at the minimum energy conical intersection between S0 and S1 states. Furthermore, it was found that the HOMO−LUMO gap is close to the HOMO−LUMO Coulomb integral at the crossing structures.
著者
清野 淳司 大越 昌樹 中井 浩巳
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第38回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.24-25, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
5

完全基底関数極限における高精度な電子相関を含んだ電子相関エネルギーを高効率に算出することは化学的精度(1 kcal/mol以内)での量子化学計算を実現するために重要である。これまで種々の電子相関エネルギーの完全基底関数極限への外挿手法や、幾つかの計算レベル・基底関数でのエネルギーを組み合わせた複合法が提案されてきた。本研究では情報学手法を用いてより効率的に、完全基底関数極限におけるCCSD(T)レベルの電子相関エネルギーを算出する手法を提案する。
著者
高田 雄太 大越 昌樹 星野 稔 石川 敦之 石川 誠 中井 浩巳
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.242-249, 2014 (Released:2014-10-12)
参考文献数
47

DNAは電荷輸送特性を有し,生理的な機能のみならず電荷輸送デバイスとしての応用が期待されている.電荷輸送特性のうち,ホール移動に関して,実験的・理論的研究から多くの知見が得られてきた.しかしながら,過剰電子移動(EET)に対する知見は限定的である.本研究ではMarcus理論に基づいて,密度汎関数理論(DFT)レベルの量子化学計算によるDNA内EET速度の算出を試みた.隣接チミン間のEET速度の計算値(2.31 − 3.49 × 1010 s−1)は,実験値(4.4 ± 0.3 × 1010 s−1)を良く再現した.また,ミスマッチ(MM)塩基対を含む系に本手法を適用し,MM塩基対の挿入によるEET速度低下のメカニズムを明らかにした.