著者
一井 隆夫
出版者
神戸大学
雑誌
兵庫農科大學研究報告. 農芸化学編 (ISSN:04400216)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.33-37, 1957

1)昨年に続いて生長促進物質(主としてIBA, ラノリン1g当り12mg)による取木実験を行つた。取扱つた果樹は栗実生及び品種, 及び柿, 桃, 梨の若干である。2)栗品種は実生に比して発根に日数を要し, 発根率も低い。品種の中では豊玉早生及び銀寄の発根がよく, (60日で60%)岸根及び中国栗系統の利平, 傍土350は殆んど発根しなかつた。傍土350の実生も日本栗実生に比して発根は不良であつた。3)再処理によつて, 銀寄, 豊玉早生の場合は20日で約80%, 利平及び傍土350は約10%発根した。4)栗実生の取木の時期は6月中旬から7月初旬が適当である。品種の場合は5月下旬から6月下旬に亘つて3回処理した中, 6月10日処理のものが最もよかつた。5)発根の難易は主として穂の性質により決定され, 台木の性質は穂に影響しないようである。6)実生では2.4.5-T_pの1mgがIBAの2∿4mgに相当して代置できること, 単独で使用する時はラノリン1g当り5mgが適当のようである。7)桃は初期にIBAとB_1を併用することにより60%発根した。8)柿, 梨は未発根であつた。
著者
森本 勇
出版者
神戸大学
雑誌
兵庫農科大學研究報告. 農芸化学編 (ISSN:04400216)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.69-81, 1958

1.本研究は日本全国各府県農事試験場水稲品種比較試験, 自昭和6年至同30年の25年間延約65000品種の総成績を取り纒めたものである。2.全国水稲出穂期変異分布は7月25日を始点とし9月20日を終点とするM8月29日, M_09月8日の明らかに重心が右側に偏つた変異分布を示している。以上の様な歪分布を示す理由は, 東北は早生であり関西は晩生であつてそれらの県の数的関係によるものである。3.全国を構成する各府県の出穂期の変異分布は早生で早生重点的な, 山形, 青森, 岩手型から, 変異の巾の広い北陸型及び東北, 関東型を経て, 早生の少く中生晩生の多い全国集計に似た重心の右側に偏つた関西型を経て, 中晩生のみの変異の巾の狭い九州型に到る一連の変化を示している。4.播種から出穂までの積算温度を中心にして, 日本全国についての品種の相対的早晩についての一つの仮説を提出した。5.稈長の全国変異分布は, 昭和6∿15年はM_0を91cm昭和16∿30年はM_0を85cmとする何れも美しい単頂正規分布を示し, この15年間に約6cm短稈化したことを示している。稈長の地城的変異は, 長稈の地は関東及び九州で短稈の地は青森, 福岡, 愛知であり本邦内地の南北では大した差異はない。6.一株穂数の全国変異分布は, 昭和6∿15年と昭和16∿30年とに分けて見れば, M_0を14.5本と15.5本とする多少重心が左に偏つた美しい変異分布を示しており, この15年間に少蘗型が減り多蘗型は差なく変異の巾が狭くなつた。一株穂数の各府県での変異分布は, 北陸が多い様である外大した地域性はない。一坪穂数の各府県での変異分布は明らかに東北において多く, 東海近畿が少く, 西南暖地で又殖えるL字型又はU字型の変異分布を示している。7.全国反当収量の変異分布はM_0 2.75石の正規分布に近い分布を示し, 昭和6∿15年より昭和16∿30年の間に約6升の増収を示している。昭和16∿30年の各府県の反収の変異分布で多いのは, 3石以上は青森, 岩手, 山形, 新潟, 長野, 兵庫, 愛媛であり, これに亜ぐのは秋田, 千葉, 山梨, 奈良, 広島, 佐賀の諸県であり, 少いのは高知, 栃木, 山口, 福岡, 徳島の諸県である。そしてこの様な研究によつてCrop productivity地力とも云うべき地力が算定され得ると考えるものである。8.昭和6∿30年間の毎年の全国農試平均の出穂期, 稈長, 一株穂数, 農試反収及び農林統計反収の累年変化を明らかにした。農試反収と農林統計反収との間には, +96.2%の殆んど完全なる相関々係が成立し, 農試品比較成績と農林統計とよく一致することを示し, 俗に云われていた昭和20年の農林統計の過少評価及び最近の農林統計の過少評価の俗説を否定すべきことを示している。
著者
長谷川 清三郎 山口 禎
出版者
神戸大学
雑誌
兵庫農科大學研究報告. 農芸化学編 (ISSN:04400216)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.61-62, 1958

本実験は水稲の出穂直前に台風(暴風雨)にあてたものについて, その後の水分と炭水化物含量を測定した。茎葉3部位別の水分は処理区の方が対照区よりも常に[table]若干少く, その後回復の見込は殆んどない。また3部位別に水分の多少をみると葉身の含量は最も少く茎は最も多く葉鞘は両者の中間にあたり, これらの差は何れも僅少であるが全て有意差をもつている。全糖と澱粉含量は処理区の方が多い傾向を示した。これは前報の結果とともに出穂期或はその後に台風をうけた稲は穂への同化産物の移行が若干妨げられて3部位に貯蔵的な状態で一時存在しているものと思われる。
著者
川上 幸治郎 高山 昭康 前川 進
出版者
神戸大学
雑誌
兵庫農科大學研究報告. 農芸化学編 (ISSN:04400216)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.20-24, 1961

1. 標高差による種イモの春作における比較では, 1,000m(5月4日植∿8月20日掘)産及び1,400m(5月14日植∿9月5日掘)産は, 収量ことに大イモ収量が多い。標高600m(4月23日植∿8月10掘)産は劣る。前2者は月令が6∿7で適令の範囲にあるのに対し後者は適令を過ぎて7.5に達しているためである。2. 600mのところでは普通植よりも3週間晩く(5月14日)植付けすることにより生産性の高い種イモができ, これは月令を切り下げるためである。1000mで晩植の効果がないのは月令のこの程度の切り下げがなお適令を外れないからである。3. 掘上げは茎葉枯凋期がよく, これを晩くすることは種イモの品質を高めることとはならない。