著者
高橋 幸司 高畑 保之 今井 敏彦 志斎 金一
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 = Kagaku kogaku ronbunshu (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.479-482, 2011-11-20
被引用文献数
1

持続可能な開発が望まれている近年,バイオマスエネルギーはカーボンニュートラルであるため環境負荷が少なく,注目を集めている.その中で最も実社会への普及が進んでいるのがBDF(バイオディーゼル燃料)であろう.BDFは植物油を原料として製造され,廃棄の面倒な廃食油からも製造可能である.加えて軽油に比べ硫黄酸化物の排出が少なく,環境に優しい.このようにさまざまなメリットを有することからも,より一層の利用の拡大が望まれている.日本では近年小型のBDF製造装置が開発され,企業だけではなく自治体や学校,福祉介護施設などで導入され,BDFがその団体のバスやトラック,公用車などに使用されている.しかしながら市販されている装置は液体混合に基づいた最適化が成されているとはいえず,操作性が悪いことに加え価格が高く,普及のための大きな障害となっている.<br>本研究ではBDF製造工程に配慮して装置を見直し,すでに市販されているものよりも高性能な装置の開発を目的に種々の検討を加えた.実験結果よりBDF製造においては円錐底円筒槽よりも四角錐底角型槽の方が撹拌状態において有効であることを明らかにし,このことにより操作時間の大幅な軽減と,装置の小型化に成功し,低価格の実現を可能とした.さらに,本研究成果に基づきBDF製造装置を開発し市販するに至った.
著者
峯 浩二 宇治田 吾朗 田谷 正仁
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 = Kagaku kogaku ronbunshu (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.363-367, 2013-07-20
参考文献数
18
被引用文献数
1

<i>Polianthes tuberosa</i>(チューベローズ)カルスが産生する細胞外酸性多糖(TPS)について,沈殿分離方法を検討した.無機塩存在下において,培養液と相溶する有機溶媒(エタノール,アセトン,2-プロパノール)の添加がTPSの沈殿形成に有効であった.2%NaCl存在下では,有機溶媒の種類によらず,比誘電率が50近傍でほぼ100%の沈殿生成率が得られた.一方,50 vol%エタノールを添加した溶液において,TPS分子中のグルクロン酸基に対する無機塩中のカチオン(Na<sup>+</sup>, Ca<sup>2+</sup>)のモル比率と沈殿生成率には正の相関が得られた.同様の傾向は,グルクロン酸基を含有する酸性多糖のキサンタンガムでも見られた.本研究で得られた沈殿分離条件により,TPSの構造を維持しながら,主な夾雑物の濃度を許容濃度に低減できることが示された.
著者
峯 浩二 清水 将夫 佐野 耕太郎
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 = Kagaku kogaku ronbunshu (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.52-56, 2012-03-20
参考文献数
23
被引用文献数
1 3

細胞外へ多糖を産生する<i>Polianthes tuberosa</i>(チューベローズ)カルスについて,多糖産生に対する溶存酸素濃度およびせん断力の影響を評価した.両者を独立して評価する方法として,充填層型リアクターを使用することが有効であった.カルスの酸素消費速度は溶存酸素濃度の上昇とともに増加するが,多糖の産生は7.6 g/m<sup>3</sup>をピークに減少した.溶存酸素濃度を7.6 g/m<sup>3</sup>近傍に保った条件の下では,供給する培地が与えるせん断力に対して,多糖の産生は極大値を有した.工業生産において一般的に使用される通気撹拌槽では,7.6 g/m<sup>3</sup>付近での溶存酸素濃度の制御は可能であり,好ましいせん断力の付与は難しいものの,安定な操作域での運転が可能であった.
著者
田隈 広紀 桜井 誠 亀山 秀雄
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 = Kagaku kogaku ronbunshu (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.256-264, 2013-07-20
被引用文献数
3

イノベーション・エコシステムの確立が,文部科学省による「イノベーション促進のための産学官連携基本戦略」の中で提唱されている.イノベーションはホリスティックであり,そのシステムを確立していくためには,総体的な研究アプローチが必要であり,研究開発マネジメントが求められている.<br>本研究では,このような研究アプローチを支援する仕組みとして,プロジェクト&プログラムマネジメント(P2M)の導入と具体的な研究支援ツールであるロジックモデルとバランススコアカードを利用した,研究計画支援システムを提案する.このシステムを4年間大学の研究室における工学研究に導入した結果,研究発表数,研究論文数等研究業績の向上に効果が見られ,また大学で研究する学生の研究力向上に効果が見られた.さらに産学官連携研究にて,両ツールが複数技術の統合化や,ステークホルダ間の利害調整に重要な役割を果たすことが示唆された.