著者
田谷 正仁
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.507-511, 2010 (Released:2016-01-25)
参考文献数
10

二酸化チタンの光励起により発生する活性酸素種は,種々の有機化合物を酸化分解し無機化することから,セルフクーリング機能のある環境浄化材料としての利用が期待されている。このような二酸化チタンの反応機構は,有機物の集合体ともいえる微生物やウイルスの滅菌や殺菌にも有効である。二酸化チタンによる有機物処理は,高い有機物含有環境には不向きで,低濃度で有機物(あるいは細胞)を含む系において効果を発揮する。この場合,標的とする反応物(細胞)を二酸化チタン粒子近くに引き寄せるような工夫が重要となる。ここでは,このような観点からの二酸化チタン複合材料の調製とその利用について,筆者らの取組みの一端を解説いただいた。
著者
峯 浩二 宇治田 吾朗 田谷 正仁
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.119-124, 2014

チューベローズ(<i>Polianthes tuberosa</i>)カルス培養液からの多糖類(TPS)の分離・回収に関し,工業化に向けたろ過装置運転における操作指針の検討を行った.ろ過助剤を用いた加圧型ろ過機によるデッドエンド定圧ろ過において,同一の透過流束下では,単位膜面積当たりのプレコートろ過助剤量の増大とともにろ液の光学的透過度は上昇した.プレコート層の流動抵抗は,0.48から2.7 kg/m<sup>2</sup>の範囲のプレコートろ過助剤量に対し直線的に上昇した.ケーク層の平均ろ過比抵抗は,ろ過原料中のカルス濃度に対するろ過助剤濃度の比が,60から89の間でほぼ一定の値であった.加圧型ろ過機によって得たデータより,フィルタープレスでのカルス培養液のろ液処理量は,膜面積1 m<sup>2</sup>当たり0.22 m<sup>3</sup>と計算され,デッドエンド定速ろ過において,ほぼ100%のTPS回収率を伴って,光学的透過度が95%以上の清澄なろ液が安定して得られた.
著者
峯 浩二 宇治田 吾朗 田谷 正仁
出版者
The Society of Chemical Engineers, Japan
雑誌
化学工学論文集 = Kagaku kogaku ronbunshu (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.363-367, 2013-07-20
参考文献数
18
被引用文献数
1

<i>Polianthes tuberosa</i>(チューベローズ)カルスが産生する細胞外酸性多糖(TPS)について,沈殿分離方法を検討した.無機塩存在下において,培養液と相溶する有機溶媒(エタノール,アセトン,2-プロパノール)の添加がTPSの沈殿形成に有効であった.2%NaCl存在下では,有機溶媒の種類によらず,比誘電率が50近傍でほぼ100%の沈殿生成率が得られた.一方,50 vol%エタノールを添加した溶液において,TPS分子中のグルクロン酸基に対する無機塩中のカチオン(Na<sup>+</sup>, Ca<sup>2+</sup>)のモル比率と沈殿生成率には正の相関が得られた.同様の傾向は,グルクロン酸基を含有する酸性多糖のキサンタンガムでも見られた.本研究で得られた沈殿分離条件により,TPSの構造を維持しながら,主な夾雑物の濃度を許容濃度に低減できることが示された.
著者
尾島 由紘 岩本 嗣 西岡 求 紀ノ岡 正博 金谷 忠 浅田 雅宣 田谷 正仁
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.176-183, 2008-09-01
参考文献数
21

植物不定胚の同調化は,その後の植物体への安定な再生を実現する上で重要である.本研究においては,アスパラガス(A. officinalis L.) &lsquo;ウェルカム&rsquo; から誘導された不定胚の同調化手法の確立ならびに長期継代培養中における不定胚の形態および遺伝的安定性の評価を行った.不定胚の誘導については,ECの初期PCVに依存して,得られる不定胚のPCVが変化することがわかった.ECの初期PCVが1.0&times;10<sup>-2</sup>m<I>l</I>/100 m<I>l</I>-mediumのとき,誘導後42日後の不定胚PCVが43 m<I>l</I>/100 m<I>l</I>-mediumと最大に達した.このとき得られた不定胚をメッシュで分級したところ,心臓胚から魚雷胚へ移行する不定胚を多く含む画分が60.6%となり,不定胚誘導に適した条件であることがわかった.さらに,継代培養中の不定胚の投影面積ならびに円形度は,不定胚の生長過程を評価するパラメータとなりうることがわかった.誘導42日後の不定胚を用い,メッシュを組み合わせた分級収集を行ったところ,約90%の不定胚が平均投影面積1.0-4.0 mm<sup>2<sup>,円形度1.2-1.6の領域に含まれ,不定胚が同調化されていることが示された.しかし,さらに長期継代培養を続行したところ,誘導70日後において不健全な形態を示す不定胚の存在が認められた.誘導後42日後と70日後の不定胚から再生された植物体を対象にRAPD-PCR法により遺伝子解析を行ったところ,長期継代を経た一部の不定胚は遺伝子レベルで変質している可能性が示唆された.