著者
芳之内 雄二
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.74, pp.47-61, 2008

ソ連崩壊後独立した新興独立国家では、それまで公用語、教育言語として優位な立場を占めていたロシア語に代って民族共和国の言語が国家言語と規定され、ロシア語の社会的地位が低下している一般的な傾向がある。そうしたなかで、ロシアの歴史要素や文化要素が大きなウクライナでは、家庭内での使用言語や図書出版、読書、マスコミの分野で依然としてロシア語の優位性が維持されている。
著者
田部井 世志子
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.72, pp.43-64, 2006

「個人は愛し合えない。」D・H・ロレンスはアポカリプスの中でこのような現代における個人の愛の不毛性の問題を世に投げかけてこの世を去った。われわれは彼のこの言葉をどう受け止めればいいのだろうか。おそらく人類が始まって以来、常に振り子のように揺れてきた人間存在の在り方──個人重視か集団重視か──についての議論を加えつつ、とりわけ個人主義が標榜される今日にあって、今一度真摯にロレンスの問題提起に耳を傾け、問題解決の一助──宇宙的大自然との一体化のうちに個人どうしの愛の可能性を見る──を彼の『アポカリプス』の中に探る。
著者
梶原 将志
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.91, pp.1-18, 2021-03

Wenn Tetsuo WATSUJI durch die eingehende Analyse der einigen japanischen Wörter wie z. B. „mono" und „koto" die Besonderheit des darin ausgedrückten „japanischen Geistes" zeigen will, muss er mit einem „banalen" Stil schreiben, um seine These mit Allgemeingültigkeit und Überzeugungskraft zu versehen. Dieses rhetorische Dilemma um die japanische Sprache könnte aber ein Anlass dafür sein, einen neuen philosophischen Stil zu konzipieren, der sich mit seiner eigenen banalen Rhetorizität abfindet.
著者
富田 広樹
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.88, pp.1-52, 2018-03

二○○○年に物故した英文学者、永川玲二は長年にわたってスペイン・セビーリャに居住し、膨大な蔵書を構築した。現在この蔵書はセビーリャ大学図書館に所蔵されている。本稿ではこのコレクションに含まれる日本語ならびに日本で刊行された文献について、その目録の有する問題点を指摘するとともに、実用に堪える書誌情報を提供することを目的とする。
著者
寺田 由美
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.89, pp.1-22, 2019-03

2010年代以降、禁酒法ならびに禁酒法をめぐる動きについて、20世紀アメリカ国家建設に大きな影響を及ぼしたものとしての再評価が進んでいる。本稿では、主にマクギアー、アンダーソン、オクレントの研究に依拠しつつ、禁酒法が20世紀アメリカ社会の形成にどのように関係しているのかについて検討を加える。
著者
岩本 真理子
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.89, pp.57-73, 2019-03

日本およびドイツ、オーストリアの古本に残されていた書き込みから見えてくる世界に関するエッセイ。
著者
馬場 美佳
出版者
北九州市立大学文学部比較文化学科
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.83, pp.1-20, 2014

日本近代文学における心理学の受容について、明治後期に移入された「情調」という概念に注目して考察した。主たる関心は、当時、翻訳・紹介されたドイツの心理学書における詳細な記述に依りつつ、「情調」を描く文学作品の解釈を試みることにある。「情調」の心理学の、創作方法への影響と同時に、批評への展開にも言及した。
著者
八百 啓介
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.74, pp.37-46, 2008

本稿は近世の菓子料理書における飴の製法から外来技術の影響を探るとともに、近世小倉藩における飴の生産についての近年の研究成果を踏まえて、北九州地域の飴について考察するものである。すなわち、江戸時代においては糯米・麦芽を原料とする麦芽飴に空気を混入した堅飴と砂糖を原料とする砂糖飴の二種の外来系の飴が存在したのである。三官飴は、中世以来の膠飴(地黄煎)をもとに、近世初期に西日本各地に来航した唐人によってもたらされた気泡を入れるための牽白技術によるものと考えられるが、小倉の「三官飴」は、本来の三官飴とは別種の粘度の低い引飴の一種であったと思われる。