著者
堀田 かおり 石丸 美奈
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 = Journal of Chiba Academy of Nursing Science (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.61-70, 2021-09-30

[要旨] 本研究の目的は,実践コミュニティの概念を用いてボランティア活動を行う高齢者グループの学習の要素と学習による高齢者個人・グループの変化を文献より明らかにし,ボランティア活動における高齢者グループの学習と学習による変化について仮説的な枠組みを作成することである。CINAHL,MEDLINE,PsycInfo,医中誌Web,CiNiiを用いて,ボランティア活動による高齢者個人またはグループの変化が記述されている12文献を選定し,質的記述的に分析した。結果,高齢者グループの学習の要素18カテゴリ,個人の変化5カテゴリ,グループの変化3カテゴリを得た。 ボランティア活動における高齢者グループの学習は,【メンバー同士で折り合いをつけた活動】や【支援対象者からの学び】等の相互交流から【高齢者の心身の健康と生活への支援】や【自己の能力・知識の向上】,【地域における高齢者の生きがい・居場所づくりの支援】等が目的となり,【活動の質を向上させる知識・技術・ツール】や【日常生活に役立つ知識・技術・情報】を共有して活動することにより,【継続的に学び合う居場所】となり【地域社会における役割と課題の付与】をもたらすと構造的にとらえることができた。ボランティア活動における学習は,高齢者の健康づくりに波及しており,さらに地域づくりへと波及する可能性が示唆された。
著者
西開地 由美 吉本 照子
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 = Journal of Chiba Academy of Nursing Science (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.107-116, 2019-08-31

[要旨] 本研究の目的は,救急・集中治療領域の終末期患者の家族支援に困難感を有する看護師を支援し,家族支援を充実させるための看護管理者の働きかけを明らかにすることである。急性・重症患者看護専門看護師資格を有し,救急・集中治療領域の終末期患者の家族支援の充実に向けた看護管理実践を語れる看護管理経験者8名に半構造化個人面接調査を行い,質的帰納的に分析し,看護師が家族支援に困難感を有する状況に対する看護管理者の意図と行動を抽出した。看護師が困難感を有する状況として【医師・看護師・家族間で治療方針を合意形成できない状況】【終末期患者及びその家族へ看護を提供する意味が見出せない状況】【家族支援に関して支援環境が整っていない状況】等7項目,サブカテゴリー21項目を抽出した。看護管理者は各状況に対し〈医師と看護師が患者と家族にとって最善な治療や支援について考える機会をつくる〉〈看護師自身の価値観に目を向け,家族支援における使命や役割を看護として意味づける〉〈看護師が患者や家族のケアに専念できるようにする〉等30の働きかけを行っていた。救命を使命とする治療・ケアの場では,医療者と家族の合意形成が困難,終末期ケアに意味を見出せない,ケア環境が不適切等の状況があり,看護師が困難感を有すると考えられる。看護管理者は,こうした状況に対し,患者と家族にとって最善の治療方針を決めるように,医師と看護師,家族間の合意形成や救命と共に終末期患者の家族支援に関する看護師の役割遂行を促し,ケア環境を調整していたと考える。