著者
粟沢 尚志 Takashi Awasawa 千葉経済大学 CHIBA KEIZAI UNIVERSITY
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = Chiba keizai ronso (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.50, pp.67-76,

本稿の目的は、西千葉における地域通貨「ピーナッツ」に始まるまちづくりの意義を、ポジショニング理論とコーペティション理論から考察することである。第1節では、地域通貨を牽引してきた経営者たち(ピーナッツクラブ西千葉)が渋沢栄一の唱えた論語と算盤の経営倫理観と整合的な考え方から行動してきたことをみる。第2節では、地域通貨の意義を経営学的にみると、コーペティション経営の協調(つまり市場拡大)にあたることをみる。第3節では、経営革新のために立ち上げられた異業種経営研究会の意義をポジショニング理論から考える。第4節では、2014年に始まった「ようこそ西千葉へ」プロジェクトの概要を紹介する。そこには、地元事業者の経営革新と地元事業者と学生との協働が両輪で進められるという新しいまちづくりのモデルがみられる。
著者
菅根 幸裕
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = CHIBA KEIZAI RONSO (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.58, pp.139-161, 2018-06-30

平成30年3月、文部科学大臣は、中央教育審議会に公民館・図書館・博物館の所轄を教育委員会から首長部局への移転の可能性について諮問した。中央教育審議会は同年7月9日、特例としてこれを認めるとする答申を行った。一方、平成30年4月21日、政府の未来投資会議構造改革徹底推進会合「地域経済・インフラ」第4回会合で、文化庁は「アート市場活性化に向けて」という発表を行い、この中でリーディング・ミューゼアムの検討を明らかにした。これはアート市場活性化の役割を美術館や博物館にも担ってもらうというもので、このリーディング・ミューゼアムに指定された美術館や博物館には国から補助金が交付され、学芸員を増やすという優遇措置がされるという内容である。聞こえは良いが、実際にはミューゼアムが資料をオークションに売却する構造が示され、その売却のために展覧会などの活動が使われるというものである。結果として学芸員が美術市場に関与する必要が生じ、そのために学芸員は「残すべきもの」を見極める能力が必要ということになる。博物館の観光利用による地域活性化が提唱されて以来、様々な変動が起きている。前述の博物館の管轄が首長部局移転すれば、博物館は観光施設として営利活動を行うことを余儀なくされるであろう。一方、リーディング・ミューゼアムは、美術館・博物館の自活促する有効な手段であると解釈することができる。よって、博物館の生き残りのためには、生涯学習施設・教育的配慮などは等閑にならざるを得ないという結論になる。簡単に言えば、これからの博物館活動の基準は「資金稼ぎ」なってしまうのである
著者
中嶌 剛 Tsuyoshi Nakashima 千葉経済大学 CHIBA KEIZAI UNIVERSITY
雑誌
千葉経済論叢 = Chiba keizai ronso (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.48, pp.23-39,

本研究は、近い将来、就職活動を控える学生の心理状態に注目し、キャリア教育(キャリア形成支援)を通じて顕在化する潜在意識が、彼らのキャリア形成にとってどのような役割を果たし得るのかを、複数大学(4年制大学、女子大学)の学生の自由記述回答データを用いたテキストマイニング手法により探ったものである。厳しい新卒採用状況下、先行き不透明かつ不安感に満ちた学生心理に立脚した計量テキスト分析により、教育現場おいて、いかなる潜在意識への働きかけが学生の主体的行動にとって重要となるかを明らかにした。こうした結果は、「行動してからようやく物事を理解する」という体験学習が人生を切り拓くヒントになり得ると同時に、潜在意識の有効活用が自己のキャリア形成に寄与することを論じたものである。
著者
小野 正芳 Masayoshi Ono 千葉経済大学 CHIBA KEIZAI UNIVERSITY
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = Chiba keizai ronso (ISSN:21876320)
巻号頁・発行日
no.50, pp.27-48,

2000年以降、社会保険・税ともにその負担は増してきた。社会保険料は年々増加し、減税措置はなくなり、所得控除も縮小されている。したがって、絶対額としての各個人の負担は高まっている。その一方で、その負担は高所得者に多く課されており、標準世帯全体としては、格差がより小さい状態へと向かっているといえる。どの世帯においても負担が増えながらも格差が小さくなっているということは、高所得者にかなりの負担がかかっているということでもある。