著者
早川 洋行
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.97-112, 2016-03-31

本論文は,政治学者神島二郎の業績を社会学理論の観点から再評価するものである。1では,問題の所在を明らかにし,2ではこれまでの研究と評価を紹介して,その不十分さを指摘する。3では,神島の業績の中から7つの概念群を抽出して解説する。4では,それら7つの概念群を使って,神島の近代化論を再構成した後に,そこから読み取れる神島の視点の特徴を論じる。そして,これら7つの概念群が現代社会の理解にも有効なものであると主張する。
著者
江利川 良枝
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.231-244, 2017-03-31

「平成28年度学校基本調査」によると,高校生の2人に1人が大学に進学しており,年々その割合は増加傾向にある。しかし,その割合が増えるほど,目的なく進学する高校生や不本意ながら入学した学生も増える可能性が高い。事実,親や高校の先生のすすめ,周りが進学するから,何となく将来のためになると思ったからといった理由で入学する学生も少なくない。一方,大学におけるキャリア教育には学校から社会への移行として,組織や社会が求める能力を身につけることが求められている。大学での学びや学生生活は高校までのそれとは全く異なる。前述のような大学進学者が多い中で,彼らがまずクリアしていかなければならないのは高校から大学への移行である。学生生活における自己確立や大学生の発達課題でもあるアイデンティティの獲得のために,まずは進学動機や大学生の発達課題に目を向け,本学のキャリア教育がどのように影響したかを検証する。
著者
岡澤 憲一郎
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.19-43, 2015-01-31

本稿は,マックス・ウェーバーの論文「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の『精神』」を,できるだけわかりやすく,しかもできるかぎり正確に概観し,それをふまえてまず,晩年のウェーバーが「近代の経済エートス」の生成過程という視座から旧論文をエートス論として補整し,再構築したことを明らかにしている。ついで,理解社会学の立場からすれば,ウェーバーは現世内的禁欲のパラドックスを強調するあまり,社会的行為の視点から旧論文を補整するのにやや片手落ちになってしまったと指摘している。ゲオルク・ジンメルがウェーバーにあたえた影響についても,その一端を示した。
著者
大林 信治
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.1-49, 2018-10-31

フーコーは若いときからニーチェを読み,戦後のフランスで支配的であった現象学や実存主義の意味付与的な主体の哲学の行き詰まりを打開するために,近代的主体の成立の出発点に遡り,ニーチェやハイデガーの目で「カントの人間学」を解読した。そこから「知の考古学」が展開されたが,1968年の「五月革命」を機に権力と直面したことから,改めてニーチェの系譜学を読み,「知と権力」の系譜学を展開した。さらに1978年フランス哲学協会で「批判とは何か」という講演を行ったとき,カントの「啓蒙とは何か」を取り上げ,ヨーロッパにおける「批判的態度」の成立を「統治」と「司牧的権力」の系譜の中に位置づけた。カントにおける「啓蒙」と「批判」の「ずれ」の問題は,フランクフルト学派によって「啓蒙批判」とか「理性批判」という形で展開されたが,フーコーはその問題を独自の仕方で「現在の存在論」ないし「われわれ自身の歴史的存在論」という形で「西欧近代の系譜学」を展開する。
著者
宍戸 明美
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.105-124, 2010-07-31

本稿ではソーシャルワークは果たして専門職か,という古典的な疑問を軸に専門職ソーシャルワークの成立過程を概観し,その過程で現れる矛盾を捉えながら根本的な課題を提示してみようとするものである。専門職として成立したソーシャルワーカーの養成教育,特にソーシャルワークの定義にある「相談業務」と「連携」業務を担う背景を検証し,袋小路にあるソーシャルワーカーに求められる機能を問い,そしてそのための体系的な教育カリキュラムの必要性を述べている。
著者
皆川 芳輝
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1-10, 2018-01-31

プロスポーツリーグ・チームの持続的成長には,他の諸プロスポーツリーグ間の観客争奪戦における競争優位構築が決定的に重要になる。そのためには,当該プロスポーツリーグの全試合においてクロスゲームが展開されなければならない。プロスポーツリーグが観客数を増加させるうえで最も重要な要因は,優秀な選手が数少ない特定チームに偏在するのではなく,全チームにおいて優秀な選手がプレーしていることである。しかしながら,優秀な選手のスカウト・雇用には多額の資金を捻出しなければならない。この問題を解決するための方法の1つとしては,収益分与(revenue sharing)があげられる。これは,まず最初にプロスポーツリーグ・チームが自分の収益から一定額をリーグ全体に拠出し,続いてそのプールした資金を各チームに分配する。本論文は,北米プロスポーツリーグにおける収益分与に焦点をあてて,その有用性を考察する。
著者
越智 祐子
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.245-253, 2017-03-31

2015年度,ぎふ多胎ネットは多胎妊娠・出産・育児の体験について,当事者やその家族から自由記述テキストを集めた。本稿では,当事者が実施した親和図法による分析から導出されたキーワードである「不安」と「大変」に着目したうえで,テキストデータを計量的に扱い,多胎育児者の妊娠・出産・育児体験についての考察を試みた結果,「不安」「大変」に加えて「上の子」への気遣いやケア資源の割り振りがキーワードとなっていたことを報告する。
著者
小谷 光正
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.13-24, 2016-07-31

1970年代,欧米で環境保全やエコロジーへの関心が高まり,エコロジー運動をはじめとする消費者運動が活発に展開された。その結果,環境を配慮した消費行動を推し進めるグリーンコンシューマーリズムの思想が確立され,そのような消費行動を実践する消費者はグリーンコンシューマーと呼ばれた。 さらに,「企業は環境に負荷をかけないマーケティング活動を行わなければならない。」とする環境マーケティングの考え方が生まれた。 国内外の環境問題の歴史は深く,環境の世紀といわれる21世紀の今,将来世代の暮らしをも思慮し,「持続可能な発展」に基づく解決策が問われている。 「社会」と「政府」という2つの次元の下で,「持続可能な発展」を目指す消費者のソサエタルな関心が,市場に向けてどのような消費パターンの選択を導くかが問題となる。 環境を配慮する消費行動により,企業,消費者,社会的環境の全てに利益がもたらされる社会の構築を目指す上で,私たち消費者が負う責務は重大である。 本稿ではグリーンコンシューマーリズムと消費者運動,環境マーケティングの発展の歴史的背景をまとめ,私たちの環境を守るために,政府,企業とともに消費者がなすべき課題と意義について考察する。
著者
松本 浩司
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.87-105, 2015-07-31

大学におけるピアサポートの拡充・支援には,支援者・被支援者双方の学生にとって成長する機会となるとともに,財政的制約から比較的自由に教育サービスの質と量を確保できるという意義がある。そこで,その一環として行った,本学教養科目におけるピアサポーター育成の試行的取り組みについて,そこに至る経緯とその概要を紹介するとともに,その成果と問題点を考察した。その結果,養成講座は自尊感情の高揚やコミュニケーション技能向上の点で十分に効果があったことがわかった。他方,実践演習から脱落したり単位認定まで到達できなかったりした学生がおり,養成講座においてクラスづくり・協同性の構築が不十分であったことなどがその要因として指摘された。本学における今後の課題は,ピアサポーター育成の体系的なシステムを整備すること,全学生に対してコミュニケーション技能の自己評価を高める教育的対応にある。