著者
雨宮 一彦 中村 由紀 新井 由紀
出版者
国際学院埼玉短期大学
雑誌
国際学院埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:02896850)
巻号頁・発行日
no.29, pp.81-85, 2008

日本人が古くから親しんできた香辛料の中で,寿司や刺身に欠かせない薬味といえばわさびである。わさびの細菌に対する抗菌効果を確かめるため,蒸散暴露(気相法)により大腸菌と黄色ブドウ球菌を用いて実験を行った。暴露する温度条件を4℃,室温(25℃),35℃で抗菌効果を比較すると,チューブ入り加工わさび,生わさびのいずれも暴露温度が35℃時に抗菌効果が高かった。わさびに7日間継続的に暴露し続けた結果,生わさびは途中で菌の発育がみられたが,チューブ入り加工わさびは菌の発育はみられず,細菌に対する増殖抑制と共に殺菌効果があることがわかった。菌数減少の推移を定量的に測定したところ,暴露開始5時間後から徐々に菌数が減少し48時間後には生菌は全く認められなかった。わさびの主な抗菌成分は揮発性のアリルイソチオシアネートといわれる。この実験からも寒天培地に触れさせず蒸気で接触させる方法で抗菌効果が強く認められたと考えられる。
著者
黒須 泰行 岩黒 大志
出版者
国際学院埼玉短期大学
雑誌
国際学院埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:02896850)
巻号頁・発行日
no.29, pp.87-91, 2008

日本の伝統的な和食には,その味の命として,様々な食材のダシが用いられてきた。特にかつお節のイノシン酸,昆布のグルタミン酸,そしてシイタケのグアニル酸は三大旨味成分として位置づけられており,昔から日本料理に欠かせないものとして重宝されてきた。これら旨味成分の中でも,シイタケのダシの抽出には冷水を用いることが,一般的に知られている。これは加熱抽出が当たり前である他の食材のダシと比べてみて,特異なダシの抽出法といえる。また,ダシ抽出に使うシイタケは,乾燥させた干しシイタケである。そこで,本実験では,なぜ一般的にシイタケのダシ抽出は乾燥シイタケを冷水で5時間戻した後に調理するのが良いといわれているのかを検証するために,抽出温度,戻し時間,シイタケの品種によってどう影響するのかを調べた。その結果,抽出温度では,グアニル酸生成に作用するリボ核酸分解酵素と,グアニル酸分解に作用するヌクレオチド分解酵素の2つの活性に影響を与えていることが推定され,抽出時間では,冷水中で乾燥シイタケに含まれるリボ核酸量が約5時間で,プラトー状態に達することが確認され,品種では,肉質の薄い香信が外部の水温の影響を受けやすく,加熱によってリボ核酸分解酵素が働きやすくなり,また成分も流出しやすいことなどが推定された。