著者
松田 美智子 南 彩子
出版者
天理大学
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.79-105, 2016-10

高齢者福祉・介護にかかわる人材確保の対策は,これまでハード面からの支援策中心に行われてきており,ソフト面からの支援策すなわち対人援助職者の共感疲労に伴うストレスへの対処といった側面に焦点が当てられてこなかった。そこで本研究では,感情労働の視点から福祉・介護従事者を捉え,インタビュー調査の方法を用いて,高齢者福祉施設における介護・福祉従事者の感情的疲弊(共感疲労)とそれへの対処の現状を明らかにすることを目的とした。 最終的に作成されたストーリーは,「高齢者福祉施設に従事する福祉・介護従事者は,【感情労働】によってストレスフルな状態にあり,なかでも【援助者としてのストレス】や【職業人としてのストレス】によって【共感疲労】に至る可能性を孕んでいる。しかしながら,【職場の支え】や【自己覚知による学びと自己理解】や【それぞれの対処法】を駆使しながら,サポートシステムをうまく活用することによって,支援の報酬としての【共感満足】に変化させることが可能である」というものである。今後の課題として,支援者自身がストレスから来る感情的疲弊に陥らないために,疲弊の蓄積を早めにチェックする自己診断票等のツールの開発を行うこと,また,介護・福祉現場でサポートシステムが早急に整備されるべきであることが明らかになった。
著者
吉川 敏博
出版者
天理大学
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-25, 2016-10

言語習得における「臨界期仮説」は,Eric Lenneberg(1967)がBiological Foundations of Language『言語の生物学的基礎』の中で提唱した仮説である。本稿では,この臨界期仮説について神経言語学から検証する。臨界期は,失語症や精神遅滞の子どもの母語喪失からの言語能力回復に関連づけた仮説であったが,第一言語(母語)習得に関連して立てられたこの仮説が第二言語(外国語)習得に当てはまるのか否かについて第二言語習得研究者の間では意見が分かれている。第一言語と第二言語の両方の習得に関して年齢による影響は認められているが,はたして臨界期なるものがあるのか,そして根本的な疑問点として言語習得に関わる臨界期とはどのようなものか,また,その原因は何か,と言った疑問に取り組み,この臨界期仮説についての先行研究を概観しながら第二言語習得との関係を論じる。 この臨界期は,子どもの成長と深く関わりも持つ脳の成熟スケジュール,脳の機能分化による可塑性(plasticity)と関係していると考えられるが,本稿では,一側化(lateralization)による脳の左半球と右半球に機能分化することによって,母語習得は右脳使用による暗示的習得メカニズムが働き,一方,第二言語習得では,認知機能をつかさどる左脳を中心とした明示的習得メカニズムが稼働するとする仮説を提案する。そして,脳科学研究から臨界期を少しでも明らかにしながら,脳の成熟による習得メカニズムへの変化が第二言語習得にどのような影響を与えるのかについて論じていく。
著者
関本 克良
出版者
天理大学学術研究委員会
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.109-129, 2012-02

日本軍「慰安婦」問題は90年代に国連を中心にさかんに議論が行なわれた。その背景には旧ユーゴスラビア紛争での「強かん収容所」などに見られる武力紛争下での女性に対する性暴力が国際社会の重大な関心事であり,2000年の国連安全保障理事会決議1325の採択に至る経緯があった。武力紛争下の性暴力を断ち切るには犯罪行為の責任者を処罰する必要がある。元「慰安婦」による国内訴訟は全て申立てが棄却され原告敗訴で終った。判決の重大な焦点の一つに条約における個人請求権の解釈がある。日韓請求権協定によって不法行為に基づく被害者個人の損害賠償請求権が放棄されているのか否か,また国際法上個人の損害賠償請求権が存在するのか否か,本論はそうした視点から若干の考察を行なっている。
著者
中西 善弘
出版者
天理大学学術研究会
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
no.144, pp.p75-86, 1985-03
著者
石村 広明 田里 千代
出版者
天理大学
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.61-74, 2017-02

High school baseball has given us many dreams and inspirations in our country. However, it also holds many problems, and one is the issue of corporal punishment. The purpose of this research is to make comparisons with religious culture, which enforces corporal punishment and acceptance. An interview was held with 12 high school baseball related-persons with experience. 5 cultural elements were found as a result of the interview. They are the unsociable environment, the absolute pecking order, rational interpretation, the pursuit of victory and compromise and recognizing anew of the corporal punishment and the group mentality. These 5 elements are also functioning as a cultural device. In this composition, I would like to link these elements to a discovery of an educational way to eradicate the use of the cane.
著者
山本 義泰
出版者
天理大学学術研究会
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
no.126, pp.p1-17, 1980-03
著者
中村 久美
出版者
天理大学
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.113-128, 2015-02

月と鏡はともに他者の像を反映するという相似の機能を担い,心理的にも互いに隣接する観念である。両者は地上の現実世界の反映であると同時に,異次元世界へと人を誘う扉でもあり,我々のなじみ深い世界にぽっかり空いた未知の世界,夢の世界への入り口である。しばしば絵画や文学作品の主題ともなり,重要な場面に欠かせない道具ともなる月と鏡であるが,これらは偶然というより,見かけの相似以上のつながりがあるのではないだろうか。西洋とわが国の文学作品を比較した時,その結びつきはより明らかになるが,東西の違いもまた浮かび上がる。月は西洋では不吉な事件の前兆となることが多く,日本では異界への入り口の象徴になることが多い。また鏡は西洋では現実の真実を現すのに使われ,日本では裏面の真実が語られる。
著者
佐村 幸弘
出版者
天理大学学術研究会
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
no.165, pp.p103-120, 1990-10
著者
Brousse Michel 細川 伸二
出版者
天理大学学術研究委員会
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.33-44, 2008-02

This section of the Tenri University Journal is a continuation of the translation and annotation of "LE JUDO, son histoire, ses succ?s" written by Mr.Michel BROUSSE. The fifth part of this book is broken down into the following sections : The French Federation of Judo?Jujutsu, The Black Belt Commitee, Professional Tradition, Profession : Judo Master (History of Profession), Various Types of Recognitions, Passion and Requirement for Quality, Crisises and Growth, Abe Ichiro and Kodokan Judo. Uncovering the roots and development of Judo in France could indicate guidelines for the development of Judo throughout the world.
著者
高森 淳一
出版者
天理大学学術研究委員会
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.21-57, 2002

物語というメタファーから心理療法の諸相を顧みることが本稿の課題である。自己は物語的に展開する時間性と等価なものであり,心理療法の場で扱われる心理的問題も物語として理解されうることを示した。そして臨床場面でクライエントが治療者を聴き手として,自分自身を語ることが,いかに自己の主体性・能動性を恢復するよう寄与するかを論じた。一方,語りが孕む自己隠蔽性や自我防衛的側面を指摘し,語りのメタファーでは取りこぼされる,語り以前の体験や自己傾聴について合わせて論考した。また治療理論や文化・社会的文脈といった治療に作用する「物語」に関しても考察を加えた。
著者
山本 義泰
出版者
天理大学学術研究会
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
no.142, pp.p108-123, 1984-03