著者
相田 直樹
出版者
容装心理学研究編集委員会
雑誌
容装心理学研究 (ISSN:24363367)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.63-66, 2022 (Released:2022-05-02)

本研究では,学級内で生まれた着装規範を遵守する誘因について検討した。私服が許可されている高校の生徒116名に対して,着装規範に関する質問紙調査を実施した。重回帰分析を行った結果,自身におしゃれのセンスがあると認識していたり,自らが所属する学級のことが好きであったりするほど,同じ学級の生徒と服装を合わせていたことが示された。興味深いことに,自身の学級におしゃれのセンスがないと認識しているほど,規範に沿った服装を着用していることが示された。
著者
松下 戦具 三島 爽香
出版者
容装心理学研究編集委員会
雑誌
容装心理学研究 (ISSN:24363367)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.29-38, 2022 (Released:2022-05-02)

イレズミ(tattoo)の人口が増えてきている国々においてさえ,自分や他者のイレズミに対する抵抗感は依然として存在している。人々がイレズミに対してさまざまな否定的意見を持っているという点で,同じことが日本にも当てはまる。しかしながら,どのような意見がイレズミへの抵抗感と結びつく傾向があるのかはよくわかっていない。本研究では,イレズミに関する否定的な意見について因子分析を行い,イレズミの人物への嫌悪,社会的不利益,リスクの3つの因子を得た。次に,3因子で抵抗感の強さを説明する重回帰分析を行った。その結果,回答者本人がイレズミを入れる事を想定した場合には社会的不利益因子が重要で,他人がイレズミを入れることを想定した場合には人物への嫌悪因子が重要であった。これらの知見は、自己と他者のイレズミへの抵抗感につながる因子が明らかに異なるということを示唆している。
著者
小林 真綾 矢澤 美香子
出版者
容装心理学研究編集委員会
雑誌
容装心理学研究 (ISSN:24363367)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.19-22, 2023 (Released:2023-03-20)

醜形恐怖症の発症に小児期における母親の養育態度が寄与している可能性が指摘されているものの,そのメカニズムは明らかになっていない。本研究の目的は,母親の養育態度(養護と過保護)は醜形懸念と関連し,その関連に拒絶過敏性が介在するかを検討することであった。大学生428名を対象にWeb上での質問紙調査を行った。その結果,母親の養護と醜形懸念との間に有意な関連は認められなかったが,母親の過保護と醜形懸念との間に有意な正の関連が認められた。加えて,母親の養護と過保護は拒絶過敏性を介して醜形懸念に関連することが示された。今後は,BDD臨床群を対象に本研究の結果が再現されるかを検討することが求められる。
著者
木村 昌紀 森末 理沙 藤井 菜穂
出版者
容装心理学研究編集委員会
雑誌
容装心理学研究 (ISSN:24363367)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.32-44, 2023 (Released:2023-03-20)

類似性魅力は, 対人魅力に関する頑健な現象である。従来の研究は, 主に態度やパーソナリティの類似性に注目してきた。本研究は, 化粧や衣服の類似性が対人魅力に及ぼす影響を実験的に検討した。41名の女性大学生が研究1に参加して, 化粧の類似性が対人魅力を高めることが実験的に示された。研究2では47名の女性大学生が参加し, 衣服の類似性が対人魅力を高めるが, 同じ衣服は似た衣服より魅力を低めることが実験的に示された。一連の結果から, 化粧や衣服の類似性が初対面の人物の魅力を高め, 関係形成を促進することが示唆された。ただし, 同じ衣服は独自性欲求の充足を妨げるため, 類似性魅力理論の予測に反して対人魅力を低める可能性がある。最後に, 本研究の限界と今後の展開について議論した。
著者
大坊 郁夫
出版者
容装心理学研究編集委員会
雑誌
容装心理学研究 (ISSN:24363367)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-4, 2022 (Released:2022-05-02)

外見の表現様式としての装(粧)いは,生存につながる心身の健康を維持する適応や社会的な所属性を示す重要な意味を持っている。さらに,時代と共に細分化された社会性へのニーズや個人性の表出を求める傾向とも密接に関連している。所属する文化による軽重の差はあるが,外見は人為的に操作できるが,内面についての操作はし難い故に,外見よりも内面を重視する,信頼する意識が一般に広く流布している。しかし,外見の魅力は,それが直ちに出会い後の関係を左右するものではないが,内面を理解した上で持続する関係づくりの重要な契機となっている。装(粧)いには身体に由来する概ねの共通性と個人差による識別性,そして社会的な所属性との総合的な機能がある。化粧と服装のバリエーションは多岐に渡り,その心理的,社会的影響には際限がない。装(粧)うことは,肉体の可能性を拡大しながら,多様化している。それ故研究のニーズはさらに増すであろう。
著者
大村 美菜子 髙橋 稔
出版者
容装心理学研究編集委員会
雑誌
容装心理学研究 (ISSN:24363367)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.13-19, 2022 (Released:2022-05-02)

産後女性のストレス要因の中で「容姿の変化」は大きく,本研究では産後の化粧行為に焦点を当てた。本研究では,産後の化粧行為の実態について把握することを第一の目的,化粧行為とメンタルヘルスとの関係について把握することを第二の目的とした。産後の出産という大きなライフイベントを迎えた産後女性を対象に,化粧行為とメンタルヘルスとの関連について検討した。調査対象者は,20~40代の産後1年以内の経産婦206名であった。結果としては,化粧行為にかける時間は産前と比較して産後は減少し,化粧行為の内容についても産後は簡易化していることが確認された。また,産後において化粧行為による満足が自己肯定感を高め,それによって気分の落ち込みが低下することが明らかになった。
著者
山岡 重行
出版者
容装心理学研究編集委員会
雑誌
容装心理学研究 (ISSN:24363367)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.67-70, 2022 (Released:2022-05-02)

同伴者効果とは,魅力的な異性と親密な関係にある人物の評価は,非魅力的な異性と親密な関係にある人物よりも肯定的になることである。この同伴者効果を検討するために実験を行った。刺激人物の顔写真を組み合わせて4つの実験条件を設定した。組み合わせは以下の通りである。美しい夫と美しい妻(条件1),普通の容姿の夫と美しい妻(条件2),美しい夫と普通の容姿の妻(条件3),普通の容姿の夫と普通の容姿の妻(条件4)。実験参加者は,夫婦と紹介された一組の男女の顔写真を見て,その夫の印象と妻の印象を評定した。条件2において,普通の容姿の夫は社会経済的地位の高さと関連した属性において最も高く評価された。条件3において,普通の容姿の妻は望ましい性格を持つと評価された。この実験結果は,同伴者効果が夫と妻で異なる属性で生起することを示した。本研究では条件1の夫婦の評価は条件4の夫婦の評価よりも低く,美しい人物は性格も良いと見なされる美人ステレオタイプは生起しなかった。