- 著者
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小笠原 輝
- 出版者
- 将棋と文学研究会
- 雑誌
- 将棋と文学スタディーズ
- 巻号頁・発行日
- vol.2, pp.112-116, 2023
吉井栄治(一九一三~没年不詳)は、将棋界においては朝日新聞社の将棋記者として、また、観戦記者として名を残している。観戦記者としては、『朝日新聞』において「栄」の名義で名人戦の観戦記を九本、順位戦の観戦記を六十二本。『週刊文春』において本名で名将戦の観戦記を十八本書いた。そんな吉井は元々作家志望であり、「北風」「微笑」の二作品で第二十三回直木賞の候補となっている。なかでも「北風」は、関西の将棋界を題材にした将棋小説である。そんな将棋と文学とを行き来した吉井の人物像を、今回は大阪府立高津中学の同級であった織田作之助(一九一三~一九四七)の書簡から感じ取りたい。『定本織田作之助全集第八巻』(文泉堂書店、一九七六年)に収録されている書簡において、吉井が出てくる書簡が残っているのは「杉山平一氏宛」「白崎礼三氏宛」「品川力氏宛」「吉井栄治氏宛」の四名である。順番に見ていく。