著者
田中 孝志
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.8, pp.35-49, 2005-12

本論はスピーチでどのような表現方法が聞き手の興味を引くのかを考察するために失言を分析し、同時に失言が発生する原因を究明する。特に本論では話者のメッセージの描写方法に対する聞き手と第三者間での視点と解釈という観点を重視する。分析方法に関してはボーマンのファンタシー理論を応用し説明する。
著者
小池 保
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.47-67, 2006-11-30

かつての売り声は、なぜ日本人の心の原風景に流れるBGMとなり得たのか—— 心に響く表現が、どのように工夫されていたのか、音声分析を用いながら考察を重ねるうち、売り声が「市井の詩」となり得たいくつかの条件をはじめ、高いコミュニケーション力を備えていることが明らかになってゆく。やがて、拡声器で売り声を聞かせる時代が到来する。なぜ拡声器が用いられたのか、日本人の住まい方の構造変化にまつわる問題点が見えてくる。その点に注目しながら探るうちに、戦後に起こったコミュニケーション上のパラダイム・シフトとの関係が浮かび上がる。日本人に親しまれた売り声の文化は、事実上、消えてしまった。しかし、それは生活の片隅でさえずっていた小鳥がいなくなったというレベルの、ささいな出来事ではなかった。忍び寄る気体の毒性をいち早く知らせる、カナリアの死であったのかもしれない。
著者
石井 満
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-12, 2007-03-31

テレビジョン放送におけるクイズ番組を、その出題傾向から分類すれば、知識を問う知識指向タイプと、謎掛けに近いパズル指向タイプに分けることができる。後者の番組内でなされる出題の映像表現には、言語とイメージのレヴェルを跨いだ多様なテクスト表層での記号表現が行われているものが見られる。その修辞技法の記述の試みとして、映像表現技法の修辞について事例に則した考察を行った。これらのクイズは、修辞学的に捉えれば、解答が規範表現で、対応する問いが、或る隔たりを設定した逸脱表現であると見ることができる。主に、解答となることばを音韻レヴェルで別の意味を成すことばに分節した後、転義的なイメージを付加的に配列したものである。イメージ記号の性質は、記号表現と記号内容が分節しがたい個別性を持っているが、ここでは言語に対応する抽象的な記号として用いられている。その修辞的技法は、映画芸術において詩的な叙述が成されていると指摘される場合の事例と非常に似た表現傾向を示す。