著者
坪口 昌恭
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.21-39, 2018-03-31

バリー・ハリスのメソッドは、平均律12 音のクロマチックスケールを大前提とし、それを二つに分けたホールトーン・スケール、三つに分けたディミニッシュ・コードがビバップ・ジャズにおけるDNA だというとらえ方からスタートする。これはドミナント7thコードを捉える上でもっとも根源的かつシンプルな法則であり、1950 年代までのジャズ・サウンドを表現する上で欠かせない要素である。一方ダイアトニックコードはオープン・ヴォイシングで習得することで、ジャズ特有の響きやアプローチがしやすくなる。また、主要なコードを6th コードとして捉えることもバリー氏の特徴であり、ディミニッシュ・コードと組み合わせることにより、コードネームやスケールだけでは表現できない、味わい深い音の動きを作り出すことができる。ここでは主にピアノでの演奏を想定したコードに対する様々な音の動かし方を紹介する。
著者
坪口 昌恭
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.6, pp.71-87, 2004-12

第一章では、アフリカ土着音楽において特徴的な要素であるポリリズムについて、CDやVTR等の音資料から採集・採譜し、その特徴を分析する。第二章では、アフリカ音楽に特有の音律について、音資料から聴取し十二平均律とのずれや傾向を調べる。それらにより、ジャズやブルースのルーツがアフリカ音楽にあるという通説の音楽的裏付けをおこなう。
著者
鳴海 史生 Fumio NARUMI 尚美学園大学芸術情報学部
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.35-42, 2009-11-01

「固定ド・移動ド」は単なる譜読みの方式ではなく、音楽解釈や演奏にまで深くかかわる。本学に入学してくる学生たちの大半は、現代日本の音楽教育環境を背景として「固定ド」しか知らないのだが、その現状を放置することは許されないであろう。歴史をひもといたときに明らかなのは、「ドレミファ…」は元来、階名、つまり「移動ド読みのためのツール」だということだ。一方、固定ドは平均律に調律された現代ピアノを拠り所としている。それは一見、便利かつ合理的なものにみえるが、われわれは平均律そのものの欠点をよくよく認識しなくてはならない。「良い音楽家」を目指す者には、やはり「移動ドのセンス」が必要なのである。The " fixed doh/movable doh" is not simply a way of music reading, but also a matter of music interpretation.Most students who get into our department of music expression only know the " fixed doh"against the background of music-educational environment in present-day Japan; but I think we must notoverlook this situation. When we trace the " movable doh" back to its origins, it is obvious that " dore-mi-fa…" are essentially the syllable names, in other words a tool for the movable doh reading. The" fixed doh" is based on the equally tempered piano. It seems to be convenient and reasonable, but wehave to understand sufficiently its weak points. Students who aim at becoming good musicians are requiredto have the sense of " movable doh."
著者
坪口 昌恭 Masayasu TSUBOGUCHI 尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of informatics for arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.28, pp.21-39, 2018-03

バリー・ハリスのメソッドは、平均律12 音のクロマチックスケールを大前提とし、それを二つに分けたホールトーン・スケール、三つに分けたディミニッシュ・コードがビバップ・ジャズにおけるDNA だというとらえ方からスタートする。これはドミナント7thコードを捉える上でもっとも根源的かつシンプルな法則であり、1950 年代までのジャズ・サウンドを表現する上で欠かせない要素である。一方ダイアトニックコードはオープン・ヴォイシングで習得することで、ジャズ特有の響きやアプローチがしやすくなる。また、主要なコードを6th コードとして捉えることもバリー氏の特徴であり、ディミニッシュ・コードと組み合わせることにより、コードネームやスケールだけでは表現できない、味わい深い音の動きを作り出すことができる。ここでは主にピアノでの演奏を想定したコードに対する様々な音の動かし方を紹介する。The method of Barry Harris is based on the chromatic scale of the 12-note average scale, a wholetone scale that divides it into two, a method from the view that the three diminished chords are DNA in bebop jazz Start. This is the most fundamental and simple rule to capture the dominant 7th chord, which is an indispensable element in expressing the jazz sound until the 1950s. On the other hand, learning diatonic chord with open voicing makes it easier for jazz-specific sounds and approaches. It is also a feature of Mr. Barry to capture the main chord as the 6 th chord, and by combining it with the diminished chord, it is possible to create a tasteful sound movement that can not be expressed only by a chord name or a scale. Here, I will introduce the way to move various sounds mainly for the chord assuming performance at the piano.
著者
林 容子 Yoko HAYASHI 尚美学園大学芸術情報学部情報表現学科
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.57-79, 2004-12-24

2002年から2004年の夏にかけて、マンスフィールド財団、アジア財団、パシフィックフォーラムという3つの米国系財団の招聘で、日韓の諸問題を討議するリトリートに参加した。安全保障や外交の専門家に加え、NGO、文化、ジャーナリズムを専門とするそれぞれの国の代表が一同に招聘され、自由に討議した。それぞれの視点より、日韓関係を述べることになったとき、筆者のカウンタパートである韓国の美術史家より、「日本は、日帝期時代に多くの朝鮮墳墓を発掘し、朝鮮美術品を不当に日本に持ち帰り、返還していない。日本には、多くの逸品を含む30万点に上る朝鮮文化財があり、韓国の研究者は、自国の文化財なのに、わざわざ日本まで見に行かなければならないし、なかなか見ることができない。」と開口一番に指摘された。文化分野を代表していたものの、私の専門はアートマネージメントであり、朝鮮美術の専門家ではない。これまで、特に朝鮮美術はおろか、日韓関係についても特別の関心は持ってこなかった。彼女が指摘したのは、いわゆる略奪文化財の問題であるが、略奪文化財といえば、それまで私の脳裏に浮かぶのは、大英博物館保有の古代ギリシアの大理石彫刻(別名:エルギンマーブル)やナチスが略奪して、散逸した美術品の数々であり、「日本が朝鮮から美術品を略奪した」といわれても"晴天の霹靂"といわざるをえなかった。その場では、残念ながら日本代表として弁護することも、謝罪することもできず、とにかく自分なりに事実関係を確認し、次に報告すると約束するのが精一杯だった。これが本稿の切掛けとなった。帰国後、このことを日本の様々な知人に話すと様々な反応が帰ってきた。しかし、この件について無知だったのは、私だけでなく、朝鮮美術や東洋美術の専門家の友人を除いて、多くにとって、このことは初耳のようだった。事情を話すと、一般の人は「それなら返還したらいいじゃない。」と別に人事のような反応だった。一方、日本の東洋美術の専門家の友人たちに話すと、「この件は、すでに決着がついているのに、何故いまさらそんな過去のことを調査するのか。日韓の文化交流はとてもよくなっているのに、あなたがしようとしていることは、全くの時間の無駄であり、それよりも何故、もっと前向きなことにエネルギーを使わないのか。」と大変な勢いで抗議された。本問題に関して、両国の国民の間の意識レベルに大きなギャップが存在する。この問題に対する双方の一般国民の意識の低さおよび事実関係の認識の欠如が他の日韓の歴史問題同様に感情論の問題にしてしまい、根本的な問題解決を妨げていることも否めない。その一方で、日本と韓国の交流は、日韓ワールドカップの共催を経て両者の政府の方針もあり急速に高まっている。韓国側でも政府主導の友好的な外交政策がとられ、少なくとも日本では韓国に対する国民感情が少しずつながら好意的なものになっている。結果として85年以降日本人コレクターによる韓国への文化財の恣意的な寄贈も増えている。今、日本は、国交正常化以来の韓国文化ブームに沸いている。また、韓国でも、日本の朝鮮半島占領政策がもたらした経済効果を数字で分析する経済学者1が現れるなど、単なる感情論を越えて、日本の植民地政策を分析しようという動きが出てきている。調査を進めるうち、本問題は、日本の朝鮮植民地政策、日韓条約などの歴史問題に深く関わることはいうまでもないが、さらに、現在の国際法上での略奪美術品の扱いの問題や日本における美術品に関する税制や公開の制度の未整備など、国内外のアートマネージメント上の問題が大きく関わっていることがわかった。そこで本稿では、大きく第一に、在日朝鮮文化財の歴史的経緯、第二に、国際的および日本の国内事情の抱えるアートマネージメント関連の問題の考察、つまり、多くの在日朝鮮美術品の返還と公開に関わる問題を取り上げる。最後に、これらを踏まえた上でのこの問題に対する改善試案を提案する。Few in Japan's public know that approximately 29000 pieces of Korean artifacts are found housed in Japan's public museums. This accounts for only 10% of all Korean artifacts in Japan including those held in private hands. Many of them were supposed to be taken to Japan from Korea illegally during the colonial period. In Korea, the issue of illegally taken artifacts is a well-known to public. The gap in the awareness between Korea and Japan on the historical issue creates tensions between the two countries. The unsolved issue of restitution goes back to the flawed Korea Japan Treaty. While it is not feasible to solve this problem from legal perspective, voluntary donations of Korean artifacts by Japanese private collectors has gradually increased as the relationship between the two countries became improved since 1985. The research on current status of those Korean artifacts in Japan revealed another problem, which is many of them are still hidden and not even available for public view. The domestic problems surrounding art collection in Japan such as lack of tax incentive for public display and donation of artworks constitute the major factors behind Korean artifacts staying in hidden Japanese private collections. In order to promote the public access to the Korean artifacts in Japanese private collections, tax reform is needed. Also, public and private initiatives should be created to begin joint research and scholarly exchange dedicated to increasing public awareness on this subject, which will contribute to improve relations between Japan and Korea as well as to flowering of cultural sharing in the region.
著者
江頭 満正
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.17-29, 2018-10

本稿では、FUJI ROCK FESTIVAL 2015の経済的影響について考察した。現在、日本の音楽業界は大きな変化を遂げている。CDの販売量は減少しているが、音楽祭は250カ所以上で開催されている。音楽祭は盛んになり、音楽業界だけでなく地域の発展のためにも重要な位置を占めるようになった。フジロック2015の会場で、来訪者の居住地域と来訪者の購買行動について調査アンケート調査を実施し、221の有効回答を得た。経済波及効果金額は、主催者消費および、交通費、宿泊費などの来訪者消費から算出し、フジロック2015の経済波及効果は約150億円であった。これらの結果から、フジロック投資利益率は高く投資効率の良いイベントであること、来訪者消費行動に関しては初心者の訪問者よりも多額の消費傾向があることが明らかになった。また、ロックフェスティバルの構成要素を分析し、フジロックの優れた部分を明らかにした。今後、観光学の枠組みで、ロックフェスティバルを研究する必要があり、さらなる成長の為には地方自治体の関与が重要となるだろう。
著者
霧生 トシ子 Toshiko KIRYU 尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.33-44, 2004-09-30

チャーリー・パーカーをめぐって1940年代初頭には、ビバップの最盛期を迎えた。そこから多くのジャズの巨人達が生まれた。彼らがその後、いかなる状況のもとで、どのような方向へ展開していったか、彼らの発展の源となったものは何であったかを見てみよう。It was towards the beginning of 1940s that Bebop was at its peak with many leading figures appearing, such as Charlie Parker as a uncleous. The following is a glimpse on their motives and subsequent activities under the surrounding conditions in those days.
著者
柿崎 景二
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of informatics for arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.27-41, 2020-03

これまでデジタル音楽作品の音量レベルは、DAWなどで波形を表示し、それをもとに推察するしかなかった。しかしそれは波形表示の縮尺により、見え方が変わってしまう。ここでは、オーディオデータの新しい解析・表現方法として、音の大きさの出現頻度をグラフ化したものを提案する。これによって楽曲の音量レベルが一目でわかるようになった。またこの表現方法を用い、同一楽曲で各年代にマスタリングされた音源を解析することにより、CDが発売された80年代以降の年代ごとの音量レベルについて考察する。
著者
林 邦彦
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of informatics for arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.32, pp.55-74, 2020-03

アーサー王伝説に題材を取ったアイスランド語による文学作品としては、アーサー王妃との不倫などのエピソードで知られる騎士ランスロット(ランスロ)を主人公とした作品は少なくとも現存はしない。一方、アイスランドで独自に物語が作られたと考えられ、複数のアイスランド語作品におけるアーサー王の名前の表記と同じアルトゥース(Artus)という名のイングランド王が登場する『美丈夫サムソンのサガ』と呼ばれる作品は、ランスロットを主人公とした大陸の作品との間で複数のモチーフの共通が指摘されているが、一般にはアイスランド独自のアーサー王文学作品とは認識されない傾向にあり、本作を扱った先行研究も少ない。そこで、本稿では『美丈夫サムソンのサガ』について、先行研究で指摘されているアーサー王物語のモチーフの大半が位置する作品前半部に焦点を当て、本作前半部の物語全体としての構造とその特徴について考察し、本作をアイスランドで独自に著されたアーサー王文学作品として位置づけることを試みたい。Erec et Enide, Yvain, and Perceval, all of which are Arthurian works by Chrétien de Troyes, who is also the author of Lancelot, are said to have been translated into Norwegian, but are now preserved exclusively in the Icelandic manuscripts, but any Northern European reduction of the so-called Lancelot romance is handed down till this day. On the other hand, the work called Samsons saga fagra, whose protagonist Samson is the son of the king "Artus" of England, is usually not regarded as an Icelandic original Arthurian romance in spite of many motifs, whose close relationship with a continental Lancelot romance is pointed out, and the work has not yet been well investigated. In this article, after glancing over the synopsis of the work Samsons saga fagra and mentioning the motifs in the saga whose Arthurian origins have been pointed out, the structure of the first half of the plot will be investigated, then this article attempts to position the saga as an Icelandic original Arthurian romance in the history of the Arthurian literature.
著者
河内 純 Jun KAWACHI 尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.49-62, 2004-12-31

フランツ・リストは現代にまで名が残っている作曲家はもとより、すでに忘れ去られた数多の作曲家の作品をピアノ用に編曲している。リストがさまざまなジャンルにわたる膨大な数の作品を編曲した目的は、ヨーロッパ中で活発に行っていた演奏会のプログラム・レパートリーとすることと原曲を広く紹介すること。及び、それらの原曲からさまざまな作曲技法を学び取り、それをオリジナルの作品に反映させることだったと考えられる。本稿ではシューベルト歌曲のピアノ編曲を取り上げ、リストが歌とピアノによる演奏効果をいかに1台のピアノに置き換えたのか考察した。その結果、リストが原曲を詳細に研究してシューベルトの音楽を深く理解していたことが導き出された。Franz Liszt has left numerous solo piano arrangements based on many other composers' non-piano works, not only well known ones but also presently remain unknown ones. Covering wide variety of original instrumentation, Liszt's intension of composing such works can be considered to be to discover various new repertoire for the programs of the concerts that he was actively performing all over European countries at that period of time, to introduce them to the public, and finally to learn different styles of compositional technique that could be utilized in his own works. In this paper, I have particularly investigated Liszt's works for solo piano arrangement of Schubert's songs in order to prove how he effectively turned the songs with piano accompaniment to solo piano pieces. As a result, I have reached the conclusion that Liszt had observed the original scores in detail and understood Schubert's music to the deepest level.
著者
大木 裕子
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.18, pp.65-81, 2010-11

ストラディヴァリの生誕地でもある北イタリアのクレモナは、長年に渡る空白の時代を経たのち、20 世紀になって再び世界のヴァイオリン産地として復活した。産業クラスターを構成するクレモナのヴァイオリン製作者にとって、クレモナで製作する最も大きなメリットは、製作者同士のピアレビューと知識の交換にある。海外から製作者たちが集り国際的コミュニティとなったクレモナでは、現代のトップ・マエストロたちが中心的存在となってヴァイオリン製作者たちの技術を牽引している。クレモナのヴァイオリン製作者たちは、クレモナを一つの大きなヴァイオリン工房として捉えており、この協働意識が国際的な競争優位性をもたらすと共に、クレモナをヴァイオリン製作の世界的メッカする原動力となっている。クレモナのブランド戦略は、プロでも初心者でもない中間層ユーザーを狙ったもので、その市場は製作者たちの出身国に広がり、産業クラスターとして見事に成功した。
著者
千葉 精一
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.10, pp.11-32, 2006-11

近年、音楽用CDの世界ではポップス・ロック系ジャンルを中心に音量感(ラウドネス:LOUDNESS)を上げるためのレベル競争が激しくなってきている。それらの中には音量感を上げるための処理に行き過ぎと思われるものも見受けられ、音量感は上がったものの音質劣化や楽器バランスの変化が起きているのではないかとの疑問を持つに至り、その状況を検証し適正なCD収録レベルは如何にあるべきかについて考察を試みた。また、DVD-Videoは発売当初、映画が市場の大半を占めていたが最近ではライブやプロモーション映像を収録したミュージックDVDも多くのタイトルがリリースされてきている。これらの中にCDとDVD-Videoがひとつのパッケージに同梱された商品形態があり、一部には収録音声レベルにかなり差のある商品も存在することが判明した。音声レベルにばらつきがあることはユーザーにとって「その都度ボリュームを調整せざるを得ない」という不便さを招き、また同一メディアでありながら音量にバラつきがあること自体も問題であり、実態の検証と原因、改善策などについて考察してみた。
著者
江頭 満正
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of informatics for arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.30, pp.1-16, 2019-03

ミュージックフェスティバルへの参加は、多くの社会の人々にとって重要かつますます一般的な経験となっているが、出席の結果として訪問者が得る利益の種類についてはほとんど知られてない。本研究は、日本の新潟県で開催されるフジロックフェスティバルに参加した人々の特徴と、反応を調べることによって前者の側面に焦点を当て、消費者マーケティングの考察への洞察を提供することを目的としている。音楽フェスティバルへの参加、消費行動、および満足度に影響を与える動機付けの調査を実施した。 調査結果に基づいて、参加者の芸術的、音楽的、社会的および心理的なニーズによりよく応えるために、フェスティバルのデザインを改善し、それによって体験のインパクトと深みを増すために、音楽フェスティバルマネジメントを提案した。
著者
田村 和紀夫
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.10, pp.69-87, 2006-11

1955年はロックンロール元年の年ともいわれる。ビル・ヘイリーの《ロック・アラウンド・ザ・クロック》が大ヒットし、ロックンロール旋風が吹き荒れることになったからである。ヘイリーは1951年からの一連のレコーディングで、カントリーとリズム・アンド・ブルースの融合を目指していた。《ロック・アラウンド・ザ・クロック》は1954年にリリースされたが、この時はほとんど注目を浴びることもなかった。だが翌年、映画『暴力教室』で使われ、空前のヒットとなったのである。どうしてこのようなことが起きたのだろうか。その理由は、音楽それ自体に内在するというよりは、時代にあったといえよう。50年代前半のアメリカは戦後の好景気に沸き、マッカーシズムの「赤狩り」が猛威をふるった時代だった。ハイスクールは保守的なイデオロギーに封印され、ティーンエイジャーは高度に発展した資本主義経済がもたらした消費社会に投げ込まれた。こうした軋轢のなかで、《ロック・アラウンド・ザ・クロック》は世代の徴となり、その産声となったのだった。
著者
八木 良太 大塚 寛樹
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.22, pp.29-45, 2013-03

ライヴエンタテインメントビジネスほど不確実性の高いビジネスはない。なぜなら、このビジネスは、成否が人の嗜好という非科学的な要素に大きく左右され、常に自然災害や突発的事故などの予測不能なリスクにさらされているからである。本稿は、このリスクの塊のようなライヴエンタテインメントビジネスのリスクマネジメントについて考究する。具体的には、ライヴエンタテインメントビジネスのリスクを特定するとともに、リスクファイナンスの観点からコンサートプロモーター(コンサート企画運営会社)のリスク対応について分析と考察を行う。本稿から、コンサートプロデューサーによる戦略的な保険選択の実践が、コンサートプロモーターのリスクファイナンスの成功の鍵を握ることが明らかになる。
著者
林 伸二
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.39-50, 2017-03-31

高等学校で理科系教育を受けてこなかった学生が音響クリエータなど、音響・音楽関連のキャリヤを志向するとき、音響信号処理の知識が必要となることに対応して、物理数学の高度の素養を要しない音響信号処理の授業の進め方を研究してきた。アナログ系とディジタル系での信号の扱いの違い、ディジタルフィルタの特徴、サンプリングの意味を直観的にイメージできることを念頭に、デルタ関数、遅延信号の重ね合わせを説明する。これをもとに、Z 変換を理解し、伝達関数の特性をスプレッドシートの利用を含む演習により体得する過程を易しい解釈により示す。
著者
江頭 満正
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of informatics for arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.29, pp.17-29, 2018-10

本稿では、FUJI ROCK FESTIVAL 2015の経済的影響について考察した。現在、日本の音楽業界は大きな変化を遂げている。CDの販売量は減少しているが、音楽祭は250カ所以上で開催されている。音楽祭は盛んになり、音楽業界だけでなく地域の発展のためにも重要な位置を占めるようになった。フジロック2015の会場で、来訪者の居住地域と来訪者の購買行動について調査アンケート調査を実施し、221の有効回答を得た。経済波及効果金額は、主催者消費および、交通費、宿泊費などの来訪者消費から算出し、フジロック2015の経済波及効果は約150億円であった。これらの結果から、フジロック投資利益率は高く投資効率の良いイベントであること、来訪者消費行動に関しては初心者の訪問者よりも多額の消費傾向があることが明らかになった。また、ロックフェスティバルの構成要素を分析し、フジロックの優れた部分を明らかにした。今後、観光学の枠組みで、ロックフェスティバルを研究する必要があり、さらなる成長の為には地方自治体の関与が重要となるだろう。
著者
鈴木 常恭 Tsuneyasu SUZUKI 尚美学園大学芸術情報学部
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.12, pp.37-55, 2007-11

テレビジョン番組は、ほとんどが先行する演劇、大衆演芸、歌劇などの実演形式、そして映画の表現形式を敷衍したものである。しかし、クイズ番組は放送メディア(テレビ、ラジオ)が、独自に開発した数少ない番組形式である。この番組形式は、テレビが登場して以来いまも多くの視聴者を獲得している。そして、この番組形式は、いま世界中のテレビジョン放送が共有する主要なジャンルとして位置づけられている。この研究ノートでは、テレビ番組研究の一貫として、はじめにテレビ番組におけるジャンルの生成と確立に言及し、これを踏まえクイズ番組の構成要素、出題と知、演出そして受容のされかたを番組の変遷を踏まえ考察する。
著者
後藤 文夫
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.4, pp.45-56, 2004-09

ヤナーチェクの《シンフォニエッタ》やストラヴィンスキーの《春の祭典》等、独奏的な活躍を見せるバス・トランペットであるが、最初に管弦楽にバス・トランペットが登場した作品はR.ワーグナーの楽劇《ニーベルングの指輪》であった。本研究では、バス・トランペットがワーグナーに注目されるに至るまでどのような発達を経てきたのかを探る。また、《指輪》においてワーグナーがバス・トランペットに対して描いた性格はどのようなものであったか、「人物」「物体」「出来事」「感情」の4つの概念を表わすライトモチーフを分類し、位置付けを明らかにした。その結果、「物体」を表わすモチーフを演奏する頻度が高いことがわかった。
著者
江頭 満正
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.32, pp.1-25, 2020-03

現在音楽業界で収益を生み出すには音楽フェスティバルが非常に重要です。しかし、音楽フェスティバルを成功させる要因に関する研究は極めて少ない。この研究の目的は、音楽フェスティバルのマーケティング戦略を検討することだ。この調査は、日本で最も成功している音楽フェスティバルの1つ、京都大作戦で観客を対象に、アンケート調査を実施した。その結果、アーティストパフォーマンス、チケットは毎年完売し、優れたビジネスモデルの3点が明らかになった。この調査結果は、競争が激化する音楽フェスティバルにおいて、運営サイドが重要視すべき点を示唆することが出来た。Nowadays, music festivals are very important for generating revenue streams in the music industry. However, there have been very few studies performed about factors to make music festivals successful. The purpose of this study is to examine marketing strategies. This study focuses on one of the most successful festivals in Japan, "Mission Impossible Kyoto". A questionnaire was utilized to survey the festival audience, and the investigation revealed three critical factors that could influence the success of the festival.•Artist Performance •Ticket Sales •Business Best Practices These findings are important for diversity of music festivals and choice of the audience, which may be at risk due to intensifying competition.