著者
橋本 麻由里
出版者
岐阜県立看護大学
雑誌
岐阜県立看護大学紀要 (ISSN:13462520)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.39-50, 2018-03

本研究の目的は、看護実践の経験において、大卒新任者がどのように考えて看護実践に取り組み、看護について何を得たのかという視点で、大卒新任者の看護実践経験をもとにした学びを明らかにすることである。そして、看護実践経験をもとに学び続ける看護専門職となるために、学士課程において何を学ぶとよいのかを考察する。 方法は、学士課程卒業後2 ~ 3 年目の看護師6 名を対象に、自分の成長や学びにつながったと思う看護実践経験について2 回の半構成的面接を実施し、その内容から看護実践経験において取り組んだこと、看護について得たことを質的帰納的に分析した。 結果、6 名の大卒新任者は、2 回の面接を通して3 ~ 6 つの看護実践経験を語った。その内容は、受け持ち患者へのかかわりや新たに担う役割に関する看護実践経験が多かった。6 名の大卒新任者の看護実践経験をもとにした学びは〔実践における確かさが持ちにくい中で自立を目指す〕〔対象者の思いに焦点を合わせたかかわりを模索する〕〔看護師としての責任や使命感を意識して取り組む〕〔他者と協働して実践を進めていく〕〔実践をもとに、今後の看護に向けて自分を進めていく〕〔自分の成長や実践力を向上する〕の取り組みにより、《対象者への深い理解》《患者・家族の思いに直接かかわる看護の役割》《命を守る看護師の責任の重さ》《患者の問題解決に対する受け持ち看護師の責任》《チームで実践に取り組むこと》《確実に看護を実施するための準備方法》《自分の成長のための目標や機会・方法》《看護に対する"できる"という手応え》を得たことであった。 以上のことから、看護実践経験をもとに学び続ける看護専門職となるために、学士課程では対象者の思いに焦点を合わせ、その人を人として理解し尊重する基礎的態度、看護専門職として自分を育てていく責任と方法、他者と一緒に考え問題解決していく意義や方法を学ぶことが重要であると考える。
著者
木村 正子
出版者
岐阜県立看護大学
雑誌
岐阜県立看護大学紀要 (ISSN:13462520)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.65-73, 2017-03

本稿はフロレンス・ナイチンゲールの自伝的エッセイ「カサンドラ」(1852)をフェミニズムの視座から読み解き、彼女が提示する「女性救済者」と「瀕死の女性」の二つのヴィジョンが意味するものを読み解くものである。 研究方法としては、まず「カサンドラ」における女性の苦境とその原因、そこからの救済の希求について考察し、次に彼女と同時代の作家、エリザベス・ギャスケルおよびジョージ・エリオットの作品に見られる女性の救済(者)のモデルを傍証として検証する。最後に、「女性救済者」および「瀕死の女性」のヴィジョンのゆくえを探るため、ナイチンゲールの「クリミア」以後の作品『看護覚え書』(1860)の中に「カサンドラ」の主張からの影響を吟味する。これによって、「カサンドラ」でのヴィジョンは本作品単体で完結するものではなく、以後の作品の布石となっている点が明らかになる。 『看護覚え書』でのナイチンゲールが精力的かつ能動的な姿勢を示すのに対し、「カサンドラ」での彼女は悲観的であり受身的な姿勢に甘んじている。彼女はヴィクトリア朝の社会慣習に縛られる女性たちの内なる叫びを代弁し、女性が「情熱、知性、道徳的行動」という資質を持ちながらもそれを活かせる場がないこと、そして女性を男性の支配下におく当時の社会システムを批判しつつも、他者による救済(女性救済者の登場)を希求している。だがその願いもむなしく、「カサンドラ」は唐突に「瀕死の女性」のヴィジョンを提示して作品を終えてしまう。<死>のヴィジョンの導入は救済の放棄を意味するのか、あるいはこの<死>は救済に結びつくのかという疑問が生じるが、彼女は明確な答えを示していない。そこでギャスケルとエリオットの作品から女性の救済(者)モデルを傍証として、ナイチンゲールのヴィジョンを考察すると、<死による救済>という解釈によって前述の二つのヴィジョンが繋がることがわかる。そして「カサンドラ」と『看護覚え書』との間テクスト性から、「カサンドラ」の<死>は、ナイチンゲールのクリミアでの活動の布石となるべきもの、すなわち因習に縛られた過去の自己の崩壊を表象するとも考えられ、後に彼女は『看護覚え書』に見られるような力強いボイスを得たといえる。
著者
古川 直美
出版者
岐阜県立看護大学
雑誌
岐阜県立看護大学紀要 (ISSN:13462520)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.99-110, 2019-03

本研究の目的は、看護基礎教育における職種間連携・協働に関する教育内容の示唆を得るために、職種間連携・協働の実践事例から、看護の専門性に立脚した職種間連携・協働を推進する要素を明確化することである。 対象は、病院(病棟、退院調整部門、外来部門)、福祉施設(特別養護老人ホーム)、市町村保健センター、訪問看護ステーションにおいて、中心的役割を果たしている看護職6 名である。職種間連携・協働が円滑に展開できた事例、円滑に展開できなかった事例について、聞き取り調査を実施した。逐語録から、職種間連携・協働に関わる部分を抽出・解釈し、職種間連携・協働を推進する要素として分類した。 職種間連携・協働を推進する要素は、【原動力となる信念・動機がある】、【利用者に提供される医療・介護サービスの中や、他職種との関係の中で、看護の業務・責務を位置づける】、【必要なケアの判断及びケアの実施に向けてネットワークを拡げる】、【医療チーム・ケアチームでの活動が成立するよう働きかける】、【他職種の方針・判断を把握し、看護の判断・見解を踏まえて調整を図る】、【他職種・他部門・他機関で助け合い、補い合う】、【主体である利用者の参加を支援する】、【取り組みの結果を確認し、学びを得る】、【利用者・他職種・他部門・他機関に看護の役割・機能の理解を促す】、【他部門・他機関と繋がるための基盤を作る】、【ケアの充実に取り組む職場の風土がある】の11 に分類された。 先行研究における職種間連携・協働で重視されていること等の検討から、見いだされた11 の要素は、職種間連携・協働の推進に必要な要素と捉えられた。教育内容としては、原動力となる信念・動機をもつことやチーム活動の展開等に関わる内容が考えられたが、実践現場における継続教育が適することもあるため、看護基礎教育で何をどう教育するか検討が必要である。
著者
竹村 民千佳 服部 律子
出版者
岐阜県立看護大学
雑誌
岐阜県立看護大学紀要 (ISSN:13462520)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.3-14, 2018-03

本研究の目的は、妊娠糖尿病妊産婦(以下、妊産婦とする)がセルフケア行動を習得することを目的とした支援マニュアルを考案し、助産師が多職種の支援を活かした実践を通して、助産師の支援のあり方を検討することである。 支援の現状把握を目的に、医療スタッフへ質問紙調査及び褥婦へ聞き取り調査を実施した。さらに現状調査の結果を踏まえ、多職種による学習会を開催し、支援マニュアル(以下、マニュアル)を作成した。最終的に、筆頭筆者が中心となり、妊産婦に対してマニュアルを活用した支援を行い、取り組み後の評価として医療スタッフへの質問紙調査及び褥婦への聞き取り調査を実施した。 医療スタッフ(44 名)への現状調査から、支援で困難であった経験は【多職種連携】という意見があり、褥婦(4 名)への聞き取り調査から【児に与える影響への不安】という発言を得た。不安を抱えた妊婦に対して、助産師が多職種の支援を活かした実践を行うために、妊娠期から産褥期における支援の目標や手順を示したマニュアルを作成した。マニュアルを活用した支援を、妊産婦(7 名)に実施した。5 名は経腟分娩、2 名は帝王切開で出産した。7 名全員、母児共に周産期合併症はみられず、出生体重2500g 以上の正期産児であった。医療スタッフ(36 名)の評価として、マニュアルの内容で良かった点は【時期別の保健指導内容が明確】等の意見があった。褥婦(7 名)からの評価として"助産師さんにいろいろ聞けたのと、話ができて良かった"等の発言を得た。 セルフケア行動の習得を目的としたマニュアルを用いた支援は、周産期合併症を予防し、産後も継続できるセルフケア行動を習得するために有効であったといえる。助産師は、多職種と妊産婦をつなぐ役割を持ち、妊娠と血糖コントロールを関連づけた支援を行うことが重要と考える。
著者
原田 めぐみ 奥村 美奈子
出版者
岐阜県立看護大学
雑誌
岐阜県立看護大学紀要 (ISSN:13462520)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.41-52, 2019-03

本研究の目的は、第1 段階で作成した回復期リハビリテーション病棟における脳血管障害患者の生活の再構築過程を支える[援助方針と援助体制]を用いて援助を実践し、その実践を評価することで回復期病棟における脳血管障害患者の生活の再構築を支える看護のあり方を検討することである。 対象者はA 回復期リハビリテーション病棟の看護職12 名、介護職7名、脳血管疾患患者3 名であった。本研究の第2段階として看護職と介護職がノートを用いて情報共有し、[援助方針]を用いてケースカンファレンスを行う体制で患者に援助を実践した。患者には退院前に半構成的面接を行った。看護職と介護職には質問紙調査を行い、実践の評価と今後の課題を検討した。 回復期リハビリテーション病棟における脳血管障害患者の生活の再構築過程を支える[援助方針]は、1) 患者・家族とともに今後の方向性を考える、2) 精神的な回復を支える、3) 患者の意欲を支える、4) 退院後も患者の支えになれるように家族を支援するに、援助の実践を通して5) 高次脳機能障害のある生活を支える、6) 身体機能を整える、7) 活動を促す、8) 社会参加や役割遂行を支えるが新たに追加された。[援助体制]には、介護職との協働に加えてリハビリ職との協働体制を整える必要性が明らかになった。 身体・心理状態が不安定な中でリハビリが始まる回復期病棟では、高次脳機能障害による生活への影響を考え、患者が主体的に生活を再構築するために患者の心身の基盤を整え意欲を高めながら活動を支え、ADL が自立した後も社会参加や役割遂行の援助を継続し、患者がどのような自分でありたいか、そのために何が必要かなど今後長期的に自分で生活を営むための気持ちや姿勢の基盤づくりを支える看護が重要であると考えられた。[援助方針]の各項目を同時に、かつ病棟全体で統一して実施するために、看護職は他職種ともお互いの意見を伝えやすい環境づくりに努める役割がある。
著者
会田 敬志
出版者
岐阜県立看護大学
雑誌
岐阜県立看護大学紀要 (ISSN:13462520)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-2, 2006-10