著者
小野 尚美
出版者
岡山大学大学院文化科学研究科
雑誌
岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要 (ISSN:18811671)
巻号頁・発行日
no.23, pp.86-72, 2007-03

学校給食は児童・生徒を対象に教育の一環として実施されるようになり50年近くが経過した。現在、小学校では対象児童の99.4%にあたる718万人が、中学校では対象生徒の82.5%にあたる309万人が学校給食を受けており、学校給食が子どもたちの食生活の一部として定着した感がある。その一方で、埼玉県北葛飾郡鷲宮町議会では、「戦後60年を経た現在、学校給食はこの間十分その役割を果たし、見直しの時期に来ているものと判断する」(決議文より)として2005(平成17)年9月、「学校給食に弁当の日を設けることについて」という決議案が出され、それに対して反発した保護者たちが約7,000人の反対署名を議会と町教育委員会に提出したものの、賛成10、反対8で否決され、2006(平成18)年4月より「弁当の日」が設けられ、実施されるに至った。学校給食法が公布された時代とは食環境が大きく様変わりした現在において、学校給食が持つ使命を果たすために、「学校給食実施基準」第2条「学校給食は、当該学校に在学するすべての児童又は生徒に対し実施されるものとする」の見直しが必要であるのかどうか、検討する。
著者
Nakajima Minako Tanaka Tomoko
出版者
岡山大学大学院文化科学研究科
雑誌
岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要 (ISSN:18811671)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.45-59, 2008-11-28

This study investigated what kind of social skills international students staying in Japan learn anduse throughout their stay which are significant fur funning relationships with Japanese. Informants were international students who have been staying in Japan for at least two years. Semi-structured interviews were carried out on 12 students from various countries. These interview responses were analyzed by using the KJ method and contenr analysis. The analysis revealed three major categories ofspecific Japanese skills: politeness, especially toward their proffessors; keeping harmony instead of insisting their opinions all the time; and steps for closeness, which means to take time to be close to others. We also found that they switched behaviors when selecting the appropriate acquired social skill and changed levels of using social skills depending on the context and people with whom theyinteracted.本研究では、日本に滞在する留学生が、日本人との対人関係においてどのようなソーシャルスキルを学び、実行しているかを調査した。2年以上に渡る比較的長期間、日本に滞在する留学生12名を対象に半構造面接を行った。留学生が用いるスキルについてKJ法と内容分析を用いて分析を行った結果、教師に対しての礼儀正しさ、自分の意見を主張するのではなく和を保つ、そして親密になるのに時間をかけるという3つのカテゴリーを日本文化特有のスキルとして獲得していることが分かった。また獲得されたソーシャルスキルを文脈や相手に応じて選択したり、水準を変えたりする行動のスイッチングも見られた。
著者
同免木 利加
出版者
岡山大学大学院文化科学研究科
雑誌
岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.17-29, 2007-03

『枕草子』二六一段「うれしきもの」に、次のような一節がある。もののをり、もしは人と言ひかはしたる歌の、聞えて、打聞などに書きいれらるる。みづからの上にはまだ知らぬことなれど、なほ思やるよ。『枕草子』が、己の願望を充たすために清少納言によって書かれた「自作自演の歌語り」であるということは既に言われている通りであろう。しかし。これも既に言われていることであるが、『伊勢物語』や『大和物語』に見られる形式に則った「歌語り」は残されていない。おそらく彼女が志向したのは、彼女が権力闘争や愛憎劇に巻き込まれる生々しい物語ではなく、言葉でのみ関係性が保たれる物語であった。拙論では、『枕草子』の特徴としておそらく最も有名であろう「清少納言自賛」から、定子と清少納言の在り方、特に、前期章段と後期章段における両者の在り方の変化について見てゆく。
著者
町田 余理子
出版者
岡山大学大学院文化科学研究科
雑誌
岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.17-30, 2007-03

動産売買先取特権に基づく物上代位の目的債権が譲渡され、その債権譲渡に対抗要件が整えられた後であっても、動産売買先取特権者はその物上代位を行使できるのか。動産売買先取特権に基づく物上代位は、昭和50年代頃から、信用売買における売主の売買代金債権の回収の実務において頻繁に利用されるようになった。それを反映して、最一小判昭和59年2月2日(民集38巻3号431頁。以下、「昭和59年最判」という)、最二小判昭和60年7月19日(民集39巻5号1326頁。以下、「昭和60年最判」という)、最一小判昭和62年4月2日(判例時報1248号61頁)、最三小判平成5年3月30日(民集47巻4号3300頁)、および、最三小判平成17年2月22日(民集59巻2号314頁。以下、「平成17年最判という)、の5つの最高裁判例がある。