著者
小谷 充
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学・人文・社会科学・自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.127-142, 2012-12-25

本研究は、映画を主とした映像表現に展開するタイポグラフィの構造分析を通して、文字の視覚的な意味伝達機能を明らかにすることを目的としている。本稿では、グラフィックデザイナー・�良多平吉(1947-)がタイトルデザインを担当した劇場用アニメーション『銀河鉄道の夜』(1985年、監督・杉井ギサブロー)を対象作品として、組版の再現実験をもとにタイポグラフィの特質とそのコンセプトを考察した。対象作品のタイトルデザインやクレジットに見られる以下の特質、①混植を前提とした和文組版、②複数の欧文書体による画面構成、③精緻で極端な詰め組調整、④従属欧文の排除、⑤拗促音の小字、⑥罫線および記号類の使用などの「視覚表現の文法」は、�良多平吉が装丁を担当したますむら・ひろし(1952-)の原案本においてすでに構築されていたことを明らかにした。さらに、原案本から映画、関連書籍へと拡張する媒体の視覚的同一性を、組版技法によって保持していたと結論づけた。
著者
松本 舞
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学・人文・社会科学・自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.55-63, 2014-12-25

前編では、まず、初期近代の英国詩人たちの表現を、錬金術の理論と照合させながら確認していった。錬金術によって取り出される第五元素の効果は、1650年代の錬金術復興運動の時期を経て変化していったこと、死からの復活を可能にするものとして錬金術が描かれていることに注目した。13; 本編では、トマス・ロッジの「錬金術の解剖」やエイブラハム・カウリーの「オード」の中で描かれる、錬金術師の表現をみていく。また、ベン・ジョンソンの戯曲『錬金術師』の中の錬金術の実験の行程や、錬金術をとりまく人々の描写を検証する。13; また、後編では、終末思想と錬金術の関係を明らかにしながら、ヘンリー・ヴォーンの詩の中の実践的錬金術の描写を清教徒の「新たなる光」('New Light')の概念に対する批判の視点から考察したいと考えている。
著者
松本 舞
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学・人文・社会科学・自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.81-88, 2013-12-25

本論では、まず、初期近代の英国詩人たちの表現を、錬金術の理論と照合させながら確認していく。錬金術には、卑金属を金に変える、実践的錬金術のほかに、不老不死の薬を得ようとする、精神的錬金術があり、両方の錬金術が文学作品の中で描かれている。錬金術師は一種の詐欺師であると、皮肉を込められて描かれることが多いが、錬金術によって取り出される第五元素の効果は、1650年代の錬金術復興運動の時期を経て、変化していく。さらに本論では、死からの復活を可能にするものとして錬金術が描かれていることに注目する。後編では、終末思想と錬金術の関係を明らかにしながら、ヘンリー・ヴォーンの詩の中の実践的錬金術の描写を清教徒の「新たなる光」('New Light') の概念に対する批判の視点から見ていく。
著者
淡野 将太 磯部 美良
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学・人文・社会科学・自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.39-42, 2014-12-25

This study examined the effect of a psychoeducational intervention on displaced aggression with a university student sample. We predicted that separating the activation of the aggressive network evoked by provocation from a trigger would decrease displaced aggression. We conducted diary study consisted of psychoeducation about empirical studies and the theoretical model regarding triggered displaced aggression, and the efficiency of separating the activation of the aggressive network and the trigger, and asked participants to engage in distraction when they experienced a provoking event. As expected, aggression decreased through psychoeducational intervention and this decrease was maintained at the same level one week later.
著者
河野 美江 西村 覚 荒川 長巳
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学・人文・社会科学・自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.41-45, 2009-12-25

近年、喫煙・飲酒・性行動は青少年の健康リスクといわれている。我々は今後の健康教育の手掛かりとするために、A大学1年生に対し精神健康度調査票12項目・日本版(GHQ)、喫煙・飲酒・性行動に関する質問紙調査を行った。質問紙の回収率は93.4%(499/534)、有効回答率は79.4%であった。対象の背景は、平均年齢18.5±0.5歳(18~19歳)で、男子49.7%(197/396,平均年齢18.6±0.5歳)、女子50.3%(199/396,平均年齢18.5±0.5歳)であった。13; 10代の1年生におけるGHQの平均値は2.5±2.9で、精神不健康率は38.9%(154/396)であった。喫煙率は3.0%(12/396)、飲酒率は49.0%(194/396)、性交経験率は19.7%(78/396)で、喫煙率は男子において有意に高かった(p<0.005)。精神不健康と喫煙、飲酒、性交経験について関連は認められなかった。喫煙・飲酒・性交経験の関連では、男子において飲酒と喫煙、性交経験と喫煙が、男女において性交経験と飲酒に関連を認めた(p<0.001,p<0.005,p<0.001)。以上より、大学内敷地内禁煙などの環境要因を整えるとともに、これらのリスク行動を防止するためにA大学の特性に対応した全員参加型の健康教育を検討・試行する必要性が示唆された。13;
著者
縄田 裕幸
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学・人文・社会科学・自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.7-16, 2011-02-25

The aim of this paper is to consider how theoretical linguistics can contribute to providing learners with metalinguistic knowledge and developing their grammatical awareness in the school curriculum, with special reference to the relation between generative grammar and English as a foreign language (EFL) in Japan. Back in 1970s, generative grammar and EFL were much more intimate than they are now, but along with the theoretical development of generative grammar in 1980s, English teachers came to give it the cold shoulder. Their divorce was inevitable because teachers in those days attempted to introduce technical details of generative grammar directly into the classroom. In light of the lessons in the past, I argue that it is important to distinguish the knowledge employed by learners to organize their interlanguage grammar and the knowledge necessary for teachers to arrange their teaching materials, and that the metalinguistic knowledge obtained from generative grammar primarily fall into the latter category. Specific areas of contribution from generative grammar to EFL include, among others, the awareness of constituent structure, the distinction between arguments and adjuncts, and the interaction between lexical information and grammatical rules.
著者
高旗 健次
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学・人文・社会科学・自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.67-77, 2006-12-22

ヴァイオリン演奏には、実にさまざまな技法がある。例えば、デターシェやスピッカート、ソーティエ、リコシェなどの右手の技法やトリル、フラジォレット、ピツィカート、グリッサンド、といった左手の技法などである。これらはどれもが技術的な技法として位置づけられる。ヴァイオリン演奏には技術的要素の習得が不可欠なのはもちろんであるが、芸術的な演奏を心がけようとするならば、最終的には、奏者がいかに各々の感情を音楽的に聴衆たちに伝えるか、ということが重要なウエイトを占めるようになってくる。ポルタメントはその「芸術的表現」を引き出す手段として、ヴィブラートと並んで、最も大切な左手の奏法のひとつであり、また奏者の感情が「音」として非常に現れやすい。13; しかしながら、もし奏者が誤った方法で、また個性を前面に押し出すがあまり非音楽的ともいえるポルタメントを使用すると、その演奏は奏者自身や楽曲から品格を取り去ることになってしまう。従って奏者はまず、どういったポルタメントを用いればその作品を、いかに正統的に個性的に表現できるか、常に緻密で繊細な精神力を持って考えなければならない。13; 本論文では、カール・フレッシュの論をもとにポルタメントの仕組みと種類を整理し、それらのポルタメントがどういった感情表現をもたらすのか明らかにした。13;13;Beim Geigenspielen gibt es viele verschiedene Techniken. Zum Beispiel die Bogen-Techniken (wie Detache, Spicccato, Sautille, Ricochet) oder die Linke-Hand-Techniken (wie Triller, Flageoletto, Pizzicato, Glissando). Diese werde alle als einfache Techniken betrachtet. 13;Beim Geigenspiel ist naturlich die Beherrschung der Techniken erforderlich, aber fur das kunstlerische Spiel ist es schlie lich am wichtigsten den Zuhorern den musikalischen Ausdruck zu vermitteln.13;Das Portamento ist, ahnlich wie das Vibrato, eine wichtige Technik der linken Hand, um den "kunstlerischen Ausdruck" mitzuteilen. Gleichzeitig gehort das Portamento zu der Technik mit der der Spieler Emotionen detailiert in "Tone"umwandeln kann.13;Jedoch wenn der Spieler das Portamento auf die falsche Art und Weise ubertrieben anwendet, geht die Essenz des Spiels verloren. Aus diesem Grund soll der Spieler das Portamento mit Genauigkeit und Gefuhl anwenden, damit das St¨uck originalgetreu sowie individuell zum Ausdruck gebracht werden kann. In dieser Abhandlung hat der Verfasser aufbauend auf den Arbeiten von Carl Flesch das Gefuge und die Art des Portamentos so geordnet und dargestellt, dass das Portamento Gef¨uhle ausdrucken lasst.13;
著者
西田 忠男
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学・人文・社会科学・自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.7-15, 2013-12-25

本稿では、第三の教育改革とも呼ばれる、昭和50年代以降から今日に至るまでの学校や教師を取り巻く教育環境の変化を、おもに制度上の変化(改革)を手がかりとして考察した。一連の変化(改革)の基本的な方針は中曽根内閣(当時)において設置された臨時教育審議会で示された新自由主義の考え方に基づくものであった。具体的な改革の内容とそこから表面化してきた新たな課題として、①教員資格の規制緩和(多様化)や学校運営の合理化・効率化が教職の専門性や同僚性を低下させているという問題、②教職のサービス産業化と教員の多忙化が教育の質の低下を招いているという問題③教育の受益者負担という流れとそれが経済格差に繋がってきているという問題、④学校教育や教師への信頼回復ための「資質向上」策と、それに対し教職の現実と専門職としての教師の「資質」の中身を捉え直す必要性という問題、があることが明らかとなった。
著者
小川 巌
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学・人文・社会科学・自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.17-27, 2013-12-25

子どもを取り巻く諸環境との関連性で発達や障害をとらえる近年の概念・モデルの検討から、学校での学習と学外での生活・社会参加を結びつけるカリキュラム横断的な授業の重要性が示唆された。次に、知的障害児教育におけるカリキュラム横断的な学習形態である「領域と教科を合わせた指導」に適合する学習理論の条件について考察した。結果、従来の認知・学習理論にはない、実践的・社会-文化的文脈をとりいれた状況的学習論の適合性が高いことが明らかになった。さらに、知的障害児の領域・教科を合わせた指導における授業設計や評価のための要件について、状況的学習理論や活動理論の観点から検討した。
著者
別木 政彦 池田 絢也 塚田 真也
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学・人文・社会科学・自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.95-99, 2013-12-25

KF添加チタン酸バリウム(KxBa1-xTiO3-xFx : KF-BT/x)は鉛を含まない強誘電物質として利用できる可能性をもつ.KF-BT/xセラミックスを作製するときには,添加物であるKFの蒸発を防ぐために低温状態での粉末・セラミックス作製を行うように配慮しなければならない.しかし,セラミックス作製の最終プロセスであるアニール処理が添加元素の蒸発を招き,セラミックスの誘電性に複雑な影響を及ぼしている.その影響は①誘電率の最大値(ε´max)の減少,②相転移温度(TC)の上昇,③誘電率の周波数分散の出現である.なかでも誘電率の周波数分散は単結晶には見られず,セラミックスで新しく現れた現象である.我々はこれらの影響について構成元素の蒸発に着目して考察を加えた.
著者
栢野 彰秀 廣島 亨 森 健一郎
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学・人文・社会科学・自然科学 (ISSN:18808581)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.29-40, 2013-12-25

本研究の目的は、イメージマップを分析するためのデータ処理方法に工夫・改善を加えて、教師がこれから行う小学校理科授業の授業づくりにイメージマップの分析に基づいた形成的評価が活用できるようにするための第一次資料を得ることである。上述した目的を達成するために、まず最初に各小単元の学習終了後、子どもが書いたイメージマップと予め教師が書いたイメージマップを比較させた。次いで、それから得られたデータに、本研究において筆者らが新たに提案した簡潔な授業評価方法に基づいた授業評価を行った。13; その結果、本研究において筆者らが新たに提案した簡潔な授業評価方法は、次の2点の特徴を持つことが明らかになった。第一に、単元の学習内容に関する知識・理解に関する子どもの学習状況がモニターできるだけではなく、観察・実験時の技能やグラフの読み取りといった、単元の学習内容に関する技能・表現についての学習状況もモニターできる可能性がある。第二に、単元末テストにおいて測定される知識やスキルだけではなく、テストに出題されなかった単元の学習内容をより広くモニターできる可能性がある。13; これらのことから、本研究において筆者らの提案した文脈で、教師がこれから行う小学校理科授業の授業づくりにイメージマップが活用できる可能性が明らかになった。今後研究を進めて検討を加える価値があり、教師がこれから行う小学校理科授業の授業づくりにイメージマップを活用するための第一次資料が得られた。