著者
三上 真葵 中妻 雅彦
出版者
国立大学法人愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 The journal of the Organization for the Creation and Development of Education (ISSN:21871531)
巻号頁・発行日
no.2, pp.37-45, 2012-03-31

歴史教育者協議会会員で、中学校社会科教師であった安井俊夫は、「スパルタクスの反乱」の一連の授業実践をとおして、生徒が、奴隷たちに共感でき、そのイメージを描くことができるようにするような教材や発問を提示することで、「自分の目」で歴史を学ぶことができ、それは暗記で終わらない「自分の知識」を残すことになると主張した。さらに「スパルタクスの反乱」の実践の反省をふまえ、「福島・喜多方事件」を題材にした授業では、自由民権運動の道を抑圧される者の立場からだけではなく、政府側からも考察できるような教材や発問を考案している。このような安井の主張を基にした実践は非常に意味のあるものとされたが、これらの実践は70年代、80年代に行われたものであり、現代の子どもたちの実態に合わせて改善する必要があるという見方もある。本稿では、安井実践の意義を安井俊夫へのインタビューによって再評価し、現代の子どもの実態にそくした社会科教育のあり方を考察する。
著者
中妻 雅彦
出版者
弘前大学大学院教育学研究科
雑誌
弘前大学大学院教育学研究科教職実践専攻(教職大学院)年報 (ISSN:24345628)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-8, 2019-03-20

実践者である小林朗iは,日本社会科教育学会・歴史教育者協議会などで,「原始人日記」「江戸時代の農民日記」「文明開化日記」(以下,「歴史日記」とする)を生徒に書かせ,議論する中学校の歴史教育実践を発表している。小林は,生徒の現実から,生徒同士が互いに意見を発表し,思ったことや考えたことを自由に言える環境を作り,授業を進めることを考えている。筆者が参観した「歴史日記」の授業分析を通して,「歴史日記」の授業が持つパターン化し,画一化していると言われる「主体的・対話的で深い授業」を越える可能性や生徒が中心となる中学校歴史学習の在り方について考察する。
著者
三上 真葵 中妻 雅彦
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 (ISSN:21860793)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.127-133, 2011-03-31

PISA調査や、全国学力状況調査では自分の考えや理由を述べることが苦手な生徒が多いという結果が出ている。これまでの社会科の授業では、知識の暗記に終始してきたことが一つの原因であると考えられる。千葉県歴教協会員で、中学校社会科教師であった安井俊夫は、「スパルタクスの反乱」の一連の授業実践をとおして、生徒が、奴隷たちに共感でき、そのイメージを描けるようにするような教材や発問を提示することで、「自分の目」で歴史を学ぶことができ、それは暗記で終わらない「自分の知識」を残すことになると主張した。この実践では、教師側の意図の範囲内のみでの教材選択がされていることや、歴史学という面からどのように折り合いをつけるかということが、問題点としてあげられている。本稿では、これらの評価や課題に学び、さらに改善できるような教材と発問を近代史の授業を例に提案する。