著者
日下部 正志 池上 隆仁 御園生 淳
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2018年度日本地球化学会第65回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.236, 2018 (Released:2018-11-21)

日本近海の3つの海域—発電所海域(青森、宮城、福島、茨城県沖)、核燃料サイクル施設海域、対照海域(襟裳冲、大和堆、四国冲)—において2006年より海水中のヨウ素-129濃度を測定した。対照海域では、濃度の平均値は15-33 nBq/Lの範囲にあり、時系列的な変動は+/_10%を大きく超えることはなかった。一方、核燃料サイクル施設海域では、2006年から行われたアクティブ試験の影響により濃度は上昇し、2008年に約260 nBq/Lに達したが、翌年には20-30 nBq/Lのレベルまで戻った。原発事故の影響は特に同観測海域南側で大きく最大約400 nBq/Lまで上昇した。それ以後は減少し、事故前のレベルにほぼ戻っている。発電所海域においてはアクティブ試験の影響も見られたが、2011年原発事故の際には福島海域で最大約320 nBq/Lに達し、翌年には茨城海域で約700 nBq/Lに達した。
著者
多田 雄哉 丸本 幸治
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2018年度日本地球化学会第65回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.275, 2018 (Released:2018-11-21)

本研究では、海洋植物プランクトンによるメチル水銀 (MeHg) の取込み速度および蓄積量を定量的に明らかにするため、沿岸性および外洋性珪藻を用いたMeHg添加培養実験を実施した。沿岸性および外洋性の珪藻株を、MeHgを添加した培地中で14日間培養し、培養期間中、藻類細胞数を計数するとともに、溶存態および粒子態(藻類細胞画分)MeHg濃度をモニターした。実験の結果、両藻類細胞は培養3日目まで指数関数的に増加し、その後定常増殖期に入った。MeHg分析の結果、藻類細胞の増殖に伴って溶存態MeHg濃度は減少し、逆に粒子態MeHg濃度が増加した。また、培養1日目で、添加したMeHg量の80%以上が藻類細胞画分へ移行することが明らかとなった。これらの結果から、海水中で生成されたMeHgの80%以上は、少なくとも1日以内に植物プランクトン細胞に取り込まれ、海洋食物網に移行していく可能性が示された。
著者
土岐 知弘
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2018年度日本地球化学会第65回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.170, 2018 (Released:2018-11-21)

沖縄周辺には,数多くの非火山性温泉があり,唯一の火山性温泉の可能性がある竹富海底温泉の学術的な研究は,非常に多くなされているが,非火山性温泉のデータはほとんどない。それらの研究は,本島南部の水溶性ガス田の分布調査によって推進されてきた経緯がある。新たに竹富島掘削試料が得られたことから,今後竹富海底温泉の噴出メカニズムが明らかにされることが期待される。
著者
上地 佑衣菜 植村 立
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2018年度日本地球化学会第65回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.89, 2018 (Released:2018-11-21)

降水の酸素の同位体比(δ18O)は、炭酸カルシウムやセルロースに保存されるために古気候のプロキシとして広く用いられている。しかし様々なプロキシの解釈は異なっており、それは各地域の降水の同位体比が複数の気候要素の影響を受けているからと考えられる。そこで本研究では、東アジアモンスーン地域における古気候のプロキシにおいて、降水の同位体比変動の解釈を明確にするために、沖縄島降水の同位体比変動を長期間測定し、気象データやENSO等の指標と比較した。過去7年間、沖縄島降水δ18Oに対するENSOの影響はみられなかったが、δ18Oの年平均は降水量と強い負の相関を示し、NAOと正の相関を示した。
著者
植村 立 喜納 悠大 大嶺 加菜子
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2018年度日本地球化学会第65回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.25, 2018 (Released:2018-11-21)

石筍中に含まれる流体包有物中の水の酸素同位体比は、過去の気温変動を直接推定できる点で重要なプロキシである。近年、各地の鍾乳石からの測定例が報告され始めている。しかし、一部のデータは天水線からの乖離を示しており、二次的影響等が指摘されているそこで本研究では、開発した分析手法と実際の石筍試料を用いて、同位体交換平衡の影響を評価した。加熱実験では、同じ深度における流体包有物の水の酸素同位体比は約30時間までの間にわずかに上昇し、その後は一定値を示した。モデル計算の結果は、限られた量の流体包有物中の水が、周囲の炭酸カルシウムの酸素と再平衡に達していることを示唆している。この結果は、氷期サイクル程度の気温変動では、酸素同位体交換の影響は小さく、過去の気温の推定には、ほとんど影響しないことを示唆している。