著者
上地 佑衣菜 植村 立
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2017年度日本地球化学会第64回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.219, 2017 (Released:2017-11-09)

近年、水のδ17Oの高精度測定が可能になり、δ18Oとδ17Oを組み合わせた指標である17O-excessが提案された。17O-excessは海洋上の蒸発における分子拡散により生じると考えられて、その変動メカニズムはd-excessと同様である。しかし、17O-excessはd-excessよりも降水過程による変質が少ないと考えられている。本研究では、アジアモンスーン地域における17O-excess変動を明らかにするために、沖縄島での降水の測定を行った。沖縄島の降水の17O-excessには季節変動があり、d-excessと強い相関関係を示した。この結果は沖縄島の降水の17O-excessが海洋での蒸発時の分子拡散の強度を反映している事を示唆している。
著者
植村 立 三嶋 悟 中村 光樹 浅海 竜司 加藤 大和 狩野 彰宏 Jin―Ping Chen Chuan―Chou Shen
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2021

<p>東アジア地域においては、最終退氷期の温暖化の開始タイミング及び気温変動の大きさについて統一的な見解は得られていない。石筍は正確な年代測定ができる点で重要な陸域の古気候アーカイブである。一方で、石筍の炭酸カルシムの酸素同位体比は、滴下水と温度の2つの要因に影響されるために定量的な解釈が困難である。本研究では、東アジア地域の最終退氷期における温暖化のタイミングと気候変動を定量的に復元するため、南大東島で採取された石筍の流体包有物の水の酸素・水素同位体比分析を行った。また、独立した手法により気温復元の妥当性を検証するため、炭酸カルシウムの二重置換同位体比を用いたClumped isotope の分析を行った。本発表では、Heinrich stadial 1 (H1)からBølling-Allerød(BA)期への温度変化とタイミングについて議論する。</p>
著者
上地 佑衣菜 植村 立
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.65, 2018

<p>降水の酸素の同位体比(δ<sup>18</sup>O)は、炭酸カルシウムやセルロースに保存されるために古気候のプロキシとして広く用いられている。しかし様々なプロキシの解釈は異なっており、それは各地域の降水の同位体比が複数の気候要素の影響を受けているからと考えられる。そこで本研究では、東アジアモンスーン地域における古気候のプロキシにおいて、降水の同位体比変動の解釈を明確にするために、沖縄島降水の同位体比変動を長期間測定し、気象データやENSO等の指標と比較した。過去7年間、沖縄島降水δ<sup>18</sup>Oに対するENSOの影響はみられなかったが、δ<sup>18</sup>Oの年平均は降水量と強い負の相関を示し、NAOと正の相関を示した。</p>
著者
植村 立 喜納 悠大 大嶺 加菜子
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.65, 2018

<p>石筍中に含まれる流体包有物中の水の酸素同位体比は、過去の気温変動を直接推定できる点で重要なプロキシである。近年、各地の鍾乳石からの測定例が報告され始めている。しかし、一部のデータは天水線からの乖離を示しており、二次的影響等が指摘されているそこで本研究では、開発した分析手法と実際の石筍試料を用いて、同位体交換平衡の影響を評価した。加熱実験では、同じ深度における流体包有物の水の酸素同位体比は約30時間までの間にわずかに上昇し、その後は一定値を示した。モデル計算の結果は、限られた量の流体包有物中の水が、周囲の炭酸カルシウムの酸素と再平衡に達していることを示唆している。この結果は、氷期サイクル程度の気温変動では、酸素同位体交換の影響は小さく、過去の気温の推定には、ほとんど影響しないことを示唆している。</p>
著者
服部 祥平 飯塚 芳徳 植村 立 鈴木 希実 鶴田 明日香 石野 咲子 藤田 耕史 的場 澄人 吉田 尚弘
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.65, 2018

<p>グリーンランドの氷床コアは北アメリカやヨーロッパ由来の大気が由来し、過去のエアロゾル動態を復元する貴重な環境媒体である。産業革命以降の人間活動の増大に伴い、大気中に放出される硫黄及び窒素酸化物の濃度が上昇し、1970年以降に北アメリカ、ヨーロッパで排出が抑制された。事実、氷床コア中の硫酸濃度の減少がSO2排出量の減少と対応していることが知られている。本研究では、グリーンランド南東ドーム(SE-Dome)で採取された約90 m、60年分のアイスコアを用い、時間解像度3~6年で硫酸の三酸素同位体組成を分析した。</p>
著者
上地 佑衣菜 植村 立
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2018年度日本地球化学会第65回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.89, 2018 (Released:2018-11-21)

降水の酸素の同位体比(δ18O)は、炭酸カルシウムやセルロースに保存されるために古気候のプロキシとして広く用いられている。しかし様々なプロキシの解釈は異なっており、それは各地域の降水の同位体比が複数の気候要素の影響を受けているからと考えられる。そこで本研究では、東アジアモンスーン地域における古気候のプロキシにおいて、降水の同位体比変動の解釈を明確にするために、沖縄島降水の同位体比変動を長期間測定し、気象データやENSO等の指標と比較した。過去7年間、沖縄島降水δ18Oに対するENSOの影響はみられなかったが、δ18Oの年平均は降水量と強い負の相関を示し、NAOと正の相関を示した。
著者
植村 立 喜納 悠大 大嶺 加菜子
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2018年度日本地球化学会第65回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.25, 2018 (Released:2018-11-21)

石筍中に含まれる流体包有物中の水の酸素同位体比は、過去の気温変動を直接推定できる点で重要なプロキシである。近年、各地の鍾乳石からの測定例が報告され始めている。しかし、一部のデータは天水線からの乖離を示しており、二次的影響等が指摘されているそこで本研究では、開発した分析手法と実際の石筍試料を用いて、同位体交換平衡の影響を評価した。加熱実験では、同じ深度における流体包有物の水の酸素同位体比は約30時間までの間にわずかに上昇し、その後は一定値を示した。モデル計算の結果は、限られた量の流体包有物中の水が、周囲の炭酸カルシウムの酸素と再平衡に達していることを示唆している。この結果は、氷期サイクル程度の気温変動では、酸素同位体交換の影響は小さく、過去の気温の推定には、ほとんど影響しないことを示唆している。
著者
大嶺 佳菜子 植村 立 眞坂 昂佑 浅海 竜司 Chuan―Chou Shen
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p> 日本においてはウラン濃度の低さからU/Th年代を適用できる石筍試料は少なく、完新世を含む石筍のデータには数百年の年代誤差がある (Sone et al., 2013)。そこで、本研究ではU/Th年代法によって絶対年代を決定することができると予測される沖縄県南大東島の石筍 (HSN1、全長246 mm) の年代測定と炭酸カルシウム、流体包有物の同位体比測定を行い、降水同位体比変動の復元を行った。試料のU/Th年代は、国立台湾大学で18点測定した。HSN1はウラン濃度が高く、<sup>232</sup>Th濃度が低いためにU/Th年代が高精度に決定できた。年代は6000±62から7362±44年であり、年代モデルは全長にわたって±60年の精度で決定することができた。成長速度は比較的早く(180μm/yr)、連続的に成長していた。</p>
著者
野呂 和嗣 服部 祥平 植村 立 福井 幸太郎 平林 幹啓 川村 賢二 本山 秀明 吉田 尚弘 竹中 規訓
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>アイスコアに保存された硝酸の濃度及び安定同位体組成(d<sub>15</sub>N)は、古気候解析において有力な情報であると考えられる。しかし、硝酸は積雪として沈着した後、揮散もしくは紫外線による光分解反応によって消失することが知られており、このときに同位体分別を伴うことから、残留した硝酸には<sub>15</sub>Nが濃縮し大気中硝酸のd<sub>15</sub>N値比べて極めて高いd<sub>15</sub>N値が観測される。この沈着後の硝酸分解過程は清浄な南極大気において貴重な窒素酸化物生成源であり、南極における大気化学反応場(= 大気酸化剤の相対寄与)を変化させる重要な要因でもある。このように、南極における硝酸の積雪後の変化を解明するため、本研究では東南極ドローニングモードランドの沿岸部から内陸部にかけて採取された雪中の硝酸のd<sub>15</sub>N値を分析し、積雪中の硝酸光分解反応の地域間差異を推定した。</p>
著者
鶴田 明日香 服部 祥平 飯塚 芳徳 藤田 耕史 植村 立 的場 澄人 吉田 尚弘
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p> 大気中に放出された窒素酸化物(NOx = NO、NO2)は大気酸化剤との反応によって硝酸(NO3-)に変換される。産業革命以降の人間活動の増大に伴い大気中に放出されるNOx濃度は上昇したが、1970年以降に北米やヨーロッパでNOxの排出は抑制され、大気NOxの濃度は減少した。しかし、アイスコア中のNO3-濃度の変動とNOx放出量の増減は必ずしも一致していない。 NO3-の安定同位体組成はNOxの窒素起源情報を保存しているため、過去のNOx動態の復元に有効であると期待されてきた。しかし、NO3-は紫外線による光分解の影響を受けやすいため、涵養量の低い地点では沈着後に光分解に伴う同位体分別によってその同位体組成が変化してしまうことが指摘されている。そこで本研究では、涵養量の高いグリーンランド南東ドームにおいて掘削されたアイスコア試料を用い、沈着後の光分解の影響を受けていないNO3-の窒素同位体組成を分析し、過去60年間のNOx動態の復元を試みた。</p>
著者
上地 佑衣菜 植村 立
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>近年、水のδ<sup>17</sup>Oの高精度測定が可能になり、δ<sup>18</sup>Oとδ<sup>17</sup>Oを組み合わせた指標である<sup>17</sup>O-excessが提案された。<sup>17</sup>O-excessは海洋上の蒸発における分子拡散により生じると考えられて、その変動メカニズムはd-excessと同様である。しかし、<sup>17</sup>O-excessはd-excessよりも降水過程による変質が少ないと考えられている。本研究では、アジアモンスーン地域における<sup>17</sup>O-excess変動を明らかにするために、沖縄島での降水の測定を行った。沖縄島の降水の<sup>17</sup>O-excessには季節変動があり、d-excessと強い相関関係を示した。この結果は沖縄島の降水の<sup>17</sup>O-excessが海洋での蒸発時の分子拡散の強度を反映している事を示唆している。</p>
著者
古川 崚仁 植村 立 藤田 耕史 Jesper Sjolte 芳村 圭 的場 澄人 飯塚 芳徳
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>アイスコアから過去の環境変化を研究するためには、正確な年代を与えることが不可欠である。一般的には、グリーンランドアイスコアの高精度年代は年層を数えることで正確に求めることができる。しかし、年層同定に用いられる酸素同位体(δ<sup>18</sup>O)や化学成分の濃度は不規則な変動を示すことがあり、1年以下(数か月レベル)での年代決定は困難であった。本研究では、アイスコア記録と気候モデルによってシミュレートされたδ<sup>18</sup>Oの変動をパターンの対比に基づいて高精度年代決定を試みた。年代推定法は、グリーンランド南東部のドームから得られた新しいアイスコア(SE-Domeコア)に適用した。SE-Domeにおけるアイスコアのδ18O変動パターンと同位体大気大循環モデルの降雪のδ<sup>18</sup>O変動パターンの間には、過去54年間に渡って高い相関があった。不規則な数か月レベルの変動にも特徴的な一致が見られたため、±数ヶ月の精度で年代を決定することができた。</p>
著者
上地 佑衣菜 植村 立
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2016年度日本地球化学会第63回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.203, 2016 (Released:2016-11-09)

近年、水のδ17Oの高精度測定が可能になり、δ18Oとδ17Oを組み合わせた指標である17O-excessが提案された。しかし、水の17Oの測定にはH2OをO2に変換する必要がありランニングコストと労力が必要であった。そこで、本研究では、近年市販が開始されたキャビティーリングダウン式同位体分析計を用いて、水のδ17O値の高精度校正手法を検討し、沖縄の降水のδ17O測定を試みた。同位体比分析の結果、17O-excessの検出が可能な精度であることが確認できた。今後、VSMOWスケールへのデータ校正手法を詳細に検討し、沖縄の降水の測定を行う予定である。
著者
大嶺 佳菜子 植村 立 眞坂 昂佑 浅海 竜司 Chuan―Chou Shen Mahjoor Ahmad Lone
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2016年度日本地球化学会第63回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.54, 2016 (Released:2016-11-09)

石筍の炭酸カルシウムの酸素安定同位体比は降水変動を反映していると考えられているが、定量的な解釈は容易ではない。石筍に含まれる流体包有物の水の酸素・水素安定同位体比は、過去の降水の同位体比変動そのものを復元できる可能性が高い。本研究では、沖縄県南大東島の石筍の年代測定、各種安定同位体比測定を行い、完新世の降水同位体比変動と気温変動の復元を行った。試料は、沖縄県南大東島星野洞の石筍 (HSN1) を用いた。HSN1の年代は約6,000-8,000年であった。成長速度が早く、高時間分解能での気候復元が可能である。炭酸カルシウムの酸素安定同位体比の数百年スケールの変動は、太陽活動の指標である大気のδ14Cの変動パターンと類似していた。
著者
植村 立
出版者
国立極地研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本研究は、アイスコアの水同位体比を水蒸気から雪に至るまでの循環の視点で捉え、特にアイスコアの雪の起源(初期値)としての海洋上での水蒸気に注目して同位体比分析を行う。さらに、その結果を世界的にも数少ない極域深層アイスコアである南極ドームふじアイスコアのd-excess記録の解析に利用し、気候変動メカニズムに関する新たな知見を得ることを目的としている。本年度は、以下の研究を実施した。1)本計画で実施した水蒸気の水安定同位体比試料の解析南極海航海で採取した水蒸気試料について、得られたデータの解析を実施した。(本研究のために開発した少量試料の質量分析の改良については、昨年度に国際誌に論文として発表済み)。観測結果はd-excessが相対湿度、海面水温と有意な相関があることを示している。また、近年開発された同位体大気大循環モデルの結果との比較を行った結果、絶対値としてはモデルがやや過小評価であることがわかった。この結果は、国際誌に投稿済みである(査読中)。2)南極アイスコアの解析南極ドームふじ氷床コアについて、d-excessから復元した水蒸気起源変動を考慮した正確な気温復元を行った。大気のN2/02変動から決められた年代軸を用いて南極の気温と北半球日射量変動のタイミングと整合的であることを見出した(論文公表済み)。また、第二期ドームふじ氷床コアの水同位体比の測定を実施した。