著者
森本 康裕 佐伯 仁 牧野 朝子 松本 聡 岡 英男 宮内 善豊
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.135-139, 1999-03-15

各種の医療用エアゾル剤を用いて,麻酔ガスモニター測定値への影響について検討した.フロンガスを含むメプチン<sup>®</sup>エアーでは,ブリューエルケアー1304で,エタノールを含むニトロール<sup>®</sup>スプレーでは,オメダ5250で測定値が影響を受けた.ミオコール<sup>®</sup>スプレーには,代替フロンHFC134aとエタノールが含まれており,オメダ5250とブリューエルケアー1304ともに影響を受けた.アルティマMM206は今回検討したエアゾル剤に関して最も影響を受けにくいモニターであった.麻酔ガスモニター使用中にエアゾル剤を使用する際は,エアゾル剤中に含まれる噴射剤の成分とモニターの測定原理に注意する必要がある.
著者
田畑 正久
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.325-334, 2009-05-15

医療と仏教は「生・老・病・死」の四苦を共通の課題とする. 医療は元気でいきいきした「生」を目指している. そのために「老病死」の現実を受容する視点に欠けていた. 治療の概念からいうと老い, 病み, そして死ぬことは敗北, 不幸の完成である. 四苦に対応するために, 最終ゴールは不幸の完成でよいのか.「老」とは「老成」「長老」の言葉が示すように本来, 成熟することへの敬称である. 成熟は仏教の智慧と深い関係があり, 仏教で成熟した人格者は「人間に生まれてよかった. 生きてきてよかった. 死んでいくこともお任せです」と鷹揚に生きていかれる. 医師の「師」が意味するものは人生全体を見渡して, 生きていることの喜びと老病死を受容し, 四苦を超える道への素養をもつ人格者であることが期待されていることと考える.
著者
山田 卓生
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.303-308, 2006-05-15
被引用文献数
5 2

宗教上の理由で輸血を拒否する患者に対し, いかに対処するべきかは, この30年の間医療関係者を悩ませてきた. とりわけ外科手術における輸血の必要性は言うまでもないが, 他方でインフォームドコンセントの考え方によれば, 明白な意思に反する輸血をするわけにはいかない. 当初は輸血拒否に当惑したが, 徐々に患者の意思を尊重するようになってきた. 意思を無視して輸血をすれば, たとえ快方に向かっても損害賠償の義務があるとする最高裁判決も出た. 子供についてどうするか, とくに, 親が自己の信仰に基づき子供への輸血を拒否することを認めるべきかが争われている.