著者
安江 雄一 濱部 奈穂 日生下 由紀 園田 俊二 香河 清和 谷上 博信
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.142-147, 2013-01-06
参考文献数
5

当院では2010年12月,業務中に突然の停電を経験した.自家発電設備は問題なく機能したが,停電発生後約1時間,原因特定や復旧のめどがまったく立たない状態であった.その間,患者搬送のエレベーターが使用できず,術後患者の管理に問題となった.この経験から,復旧のめどを含めた情報収集が重要であり,自家発電装置の性能や備蓄燃料は病院ごとにばらばらで場合によっては停電中の業務に支障が出うること,各機器の電源種別を決めておかないと思わぬ機器が動かず困る可能性があること,自家発電に切り替わるときに数十秒の停電となるため再起動が必要となる機器があり,その際実際に適切に操作できること,これらを平時より確認し,手順化しておくことが重要と思われた.
著者
橋爪 圭司 渡邉 恵介 藤原 亜紀 佐々岡 紀之 古家 仁
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.141-149, 2011-01-14
参考文献数
12

  髄膜が破れて髄液が漏れると低髄液圧性頭痛が発症する.代表的なものに硬膜穿刺後頭痛がある.特発性低髄液圧性頭痛(特発性脳脊髄液減少症)は頚・胸椎からの特発性漏出が原因で,造影脳MRI,RI脳槽造影,CT脊髄造影などで診断される.自験ではCT脊髄造影での硬膜外貯留が最も確実であった.むちうち症が髄液漏出であるとの意見があり(外傷性脳脊髄液減少症),RI脳槽造影における腰椎集積が漏出と診断される.われわれはRI脳槽造影とCT脊髄造影を43症例で比較したが,腰椎集積はCT脊髄造影では正常神経根鞘であった.CT脊髄造影を診断根拠とした291症例では,1症例の外傷性脳脊髄液減少症も発見できなかった.
著者
早崎 史朗 三浦 実 有賀 友則
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.480-489, 2008-04-28
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

  エホバの証人は命を大切にしており, 命を長らえるために, 道理にかなった取り組みを積極的に行う. そのため, 良質の医療を求め, ほとんどの医療処置を受け入れる. しかし, 聖書に基づく宗教上の理由から, 同種血輸血は受け入れず, 無輸血で行われる代替療法を求めている. その立場が医学的な面からも法律的な面からも道理にかなったものと言える理由を考察する. 未成年者に対する医療が問題となるが, 判断能力のある未成年患者であればその意思を尊重すべきであり, 判断能力がないのであれば基本的には親権者の意思が尊重されるべきである.
著者
鈴木 昭広 寺尾 基
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.151-158, 2007-02-20
被引用文献数
15

著者版
著者
小西 敏郎
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.418-426, 2009-07-15

いま全国の多くの地域基幹病院やセンター病院などの急性期病院には手術患者が集中しつつあり, 麻酔体制や手術室の整備が必要とされている. しかし手術室数が限られたまま, 増員することの不可能な麻酔科や外科の医師, 手術室看護師の自己犠牲的な粉骨砕身の努力で, ようやく急増する手術をこなしているのが実情である. 医療安全の面からは, 手術室での安全性の確保はきわめて重要である. ミスが少なく安全に効率よく手術室を運営するには, 多職種の医療者が協力してチーム医療を推進することが重要であるが, そのためにも手術室においては麻酔科医が強力なリーダーシップを発揮することが必要であると外科医として実感している. そこでNTT東日本関東病院における手術室の運営の実際, 電子カルテやパスの普及による麻酔科医と外科医および手術室看護師とのチーム医療の展開の現況を紹介し, 安全で効率的な手術室運営を行うにあたっての麻酔科医の役割の重要性について, 外科医の立場から述べた.
著者
溝部 俊樹
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.362-373, 2006-07-14

高校生がもっている麻酔科医像はテレビや漫画などの メディアによってつくられ, われわれ専門家の言葉は残念ながら彼らにはほとんど届いていない. <br>  『白い巨塔』が書かれた時代 (1963年) には, 麻酔科医は物語に登場することさえなかったが, 徐々に麻酔科医が メディアに登場することが増えて, 仕事の内容はともかく知名度は向上している. しかし, メディアが麻酔事故のみを医療過誤として報道する時代が長く続いたため, 麻酔科医は常に麻酔事故とセットになって描かれ, ネガティブなイメージが広まってしまった. しかし, 今では麻酔科医の仕事が高校生にも理解され始め, メディアにおいて正確で客観的な描写もみられるようになり, 高校生が麻酔科医を正しく理解する基盤が整いつつある.
著者
米井 昭智
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.427-432, 2009-07-15

術前診察と術後回診を効率的に行うことは麻酔科医の過重労働を軽減するために必要と考えられる. われわれは麻酔説明用のアニメーションビデオを業者と共同開発した. 2008年10月より, 手術予定の患者・家族に麻酔科外来にて医師の診察が始まる直前にビデオを鑑賞してもらうことを開始した. これにより医師の説明時間が短縮し, 患者・家族の理解が促進されたと考えられる. 一方, 術後回診の効率化はいまだ課題として残っている.
著者
鈴木 昭広 平井 裕康 岩波 悦勝 川向 みさき 佐野 克敏 舘岡 一芳 朝井 裕一 木村 仁美 國澤 卓之 横田 啓 岩崎 寛
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.57-65, 2006-01-13
参考文献数
7
被引用文献数
2 1

&nbsp; 定期手術患者445名の手術室入室時に, 前投薬の有無, 術前点滴の有無, 入室時の服装, 入室方法 (歩行, 車椅子, ベッド) を自由に選択させる試みを多施設で行った. 前投薬は全体の40%が希望した. 前投薬を施行しない場合, 入室時の不安度を示すVASは有意に増加した. 血圧はどの群でも入室時に増加した. 歩行入室の場合, 心拍数も有意に増加したが臨床的に重要な変化とはいえなかった. 点滴の有無は脈拍数に影響しなかった. 今回の試みに対する満足感を示すVASは89±16mmと高値であった. 患者の希望を最大限尊重し, 叶えられない事項については十分に説明を行うことで患者の満足感を向上させることができ, 安全な入室が行えると考えられた.
著者
川島 信吾 植田 広 佐藤 恒久 鈴木 興太 鈴木 祐二 山口 裕充 内崎 紗貴子 鈴木 明
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.816-819, 2010-09-15

麻酔科関連の学会では一つの目玉になる企画として,学術機器展示がある.機器展示場は最新機器の特徴や情報を得る絶好の場であるが,研修医や若手医師のなかにはそれぞれの企業とのやり取りが苦手で有効に活用できていない場合がみられる.ベテランの医師でも効率よく回れないブースの配置もある.そこで,日本臨床麻酔学会第29回大会では,初の機器展示場のラウンドツアーを企画・実行した.担当のモデュレータが,各企業ブースへ案内をするツアーである.参加者には高評価をいただき,今後も継続してよい企画であると考え,反省点も含めて紹介する.
著者
三木 保
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.483-492, 2013-05-15
参考文献数
12

&nbsp;&nbsp;「東京医大病院 細管誤挿入で脳死状態 50代主婦 胸腔に点滴液たまる」.2003年11月11日の産経新聞の社会面のトップ記事は,東京医科大学病院の全職員を震撼させた.また,これが一連のマスコミを騒がす東京医科大学の医療安全体制の不備の露呈の始まりで,2004年の心臓外科の手術の医療事故(心臓手術で同一医師による4例の死亡例)から主任教授辞任,2005年の特定機能病院指定取り消しと,負のスパイラルへのプロローグになろうとは誰も想像はできなかった.当初これはごく一部の単なる医療事故のように見えた.しかしその本質は組織の単純なミス,油断ではなく,組織全体の虚構の医療安全体制の露呈であった.失った信頼を取り戻すためには,長い時間と多くの努力を要した.今回の東京医科大学病院でのわが国初のCVラインセンターの設置プロジェクトは,まさに真の医療安全文化構築への挑戦であった.
著者
中村 達雄
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.507-512, 2013-07-13
参考文献数
14

&nbsp;&nbsp;人工神経管(PGA-C tube)を用いた再生医学の臨床応用が2002年より始まっている.この再生医療を支えるのが<I>in situ</I> Tissue Engineering(生体内再生)の概念である.<I>in situ</I> Tissue Engineeringは欠損した組織を生体内のその部位(<I>in situ</I>)で再生させる手法で世界に先駆けて本邦で提唱された.末梢神経は再生能力を有するが,人工神経PGA-C tubeは神経再生の「場」をPGAチューブの内腔に有する医療器具である.これまでに再建した末梢神経は合計300本を超え,また神経因性疼痛に対しても効果があることが判明し,新たな治療法として期待が高まっている.
著者
酒井 一介 澄川 耕二
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.470-473, 2008-04-28
参考文献数
10

&nbsp; 脊髄小脳変性症患者の気管喉頭分離術の麻酔を経験した. 既往歴として声帯の外転障害による上気道の閉塞があり, 気道管理に配慮を要した. 喉頭展開時に観察された声門に異常は明らかでなかったが, 細径の気管チューブでなければ気管挿管は困難であった. 脊髄小脳変性症など多系統萎縮症では, 後輪状披裂筋の麻痺のため上気道の閉塞が起こることがある. 全身麻酔を行う場合には, 声門部の狭窄に注意し, 細径の気管チューブを準備するとともに, 経皮的気管穿刺や気管切開などの準備が必要である.
著者
内藤 慶史 藤田 和子
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.796-800, 2008-08-10
参考文献数
6
被引用文献数
1

&nbsp;深部静脈血栓症を伴った胸郭出口症候群の麻酔管理を経験した. 患者は22歳, 男性で以前より左上肢の腫脹を認め, 精査の結果, 左鎖骨下静脈の血栓を指摘され, 胸郭出口症候群と診断された. 血栓溶解療法・血栓除去術を施行し, 抗凝固薬の内服で経過をみたが, 血栓の再発を認めたため根治を目的として第一肋骨摘出術を施行した. 周術期における静脈血栓塞栓症の2次予防に苦慮したが, 患者は合併症を認めることなく退院した. 静脈血栓症の2次予防に関しては患者個々人の病態, 病状を加味したうえで各科との綿密な連携が必要である. また, 現行の肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症予防ガイドラインでは, 血栓症の既往のある患者の2次予防に関しては言及されておらず, 今後この点についての検討が必要と思われる.
著者
辻本 三郎
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.359-373, 2008-04-28
参考文献数
16
被引用文献数
4 4

&nbsp; Difficult airway management (DAM) についての知識と技術を習得することは, 気道管理のエキスパートである麻酔科医の使命である. ASAの 「Difficult Airway患者の管理のための実践ガイドライン」 はDAMの系統的な戦略を示したもので, DAMを実践するための指針となっている. このASAガイドラインとDifficult Airway Society (DAS) のDifficult Airway Society guidelines for management of the unanticipated difficult intubationをもとに, 麻酔導入時の気道管理, 特に成人患者の麻酔導入時の気道管理戦略について解説した. 日本で開発されたエアウェイスコープ<sup>&reg;</sup> (AWS) をはじめ, CCDカメラ搭載の喉頭鏡が気道管理に新たな展開をもたらしてきている. このAWSを含めて種々の気道管理器具を紹介するとともに, 代表的な気道管理方法についても概説した.
著者
坂口 嘉郎 冨永 昌宗 高橋 成輔
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 = The Journal of Japan Society for Clinical Anesthesia (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.322-326, 2004-09-15
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

九州大学医学部では1995年から高機能患者シミュレータを導入し, 医学生に対する麻酔科蘇生科のベッドサイド実習で利用している. 患者を対象とする臨床実習の前後に, 学生グループが自ら立てた計画に基づき, 麻酔シミュレーションを実践する. 酸素投与や換気補助をしないまま麻酔導入したりすることも少なくない. 疑似医行為の結果を目の当たりにすることで, 医学生らは自らの臨床能力の程度を自覚し, また医行為のもつ危険性も身をもって理解する. 高機能患者シミュレーションは, 患者に負荷を一切かけることなく, 医学生たちが, 主体的に修練する動機付けを得る意義があると考える. その効果的な運用についてはさらなる検討が望まれる.