著者
岩佐 光啓 中村 絵理 丸山 真澄 山下 伸夫
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第55回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.15, 2003 (Released:2003-08-01)

駆虫剤イベルメクチンは,牛の内部寄生線虫の駆虫とノサシバエなどの外部寄生虫の駆除に効果があるとされているが,牛糞に残留するため,放牧地において糞虫や糞食性ハエ類などの糞分解性昆虫の発育や繁殖を抑制して糞の分解消失を遅らせることが海外で報告されている.日本で広く使用されているイベルメクチンをポアオン法で5頭の牛に処理し,それらの糞を用いて糞食性ハエ類と糞虫類の発育,発生,羽化等に及ぼす影響及び牛糞の有機物消失に及ぼす影響を調べた.マエカドコエンマコガネは,野外で処理区の糞に誘引されやすく,育児球をより多く形成したが,羽化率は低下した.キタミドリイエバエとノサシバエの幼虫は,処理区では投与後1,3,7,14日目の糞ですべて死亡し,21日目まで影響が現れた.野外に7日間放置した牛糞から発生したツヤホソバエ科,ハヤトビバエ科などの糞食性ハエ類の個体数は,処理区で著しく減少した.野外に7日間放置した牛糞の有機物残存率は,対照区より処理区で高くなった.
著者
佐々木 均 竹田 洋介
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第55回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.45, 2003 (Released:2003-08-01)

吸血性アブ類が,ソバの授粉昆虫として果たす役割を知る目的で,2002年8月,北海道幌加内町内2ヶ所でNZIトラップを用いた吸血性アブ類の捕獲調査を行い,得られた個体の体表に付着した花粉をグリセリンジェリー法で採取し,酢酸カーミンで染色した後検鏡し,ソバの花粉か否かを調べた. その結果,ソバ畑隣接地で,アカウシアブを優占種とする4属8種合計77個体,ソバ畑から離れた湿性草地で,ゴマフアブを優占種とする5属9種164個体の吸血性アブ類が得られた.ソバ畑隣接地で得られた吸血性アブ類の74%が,ソバ畑から離れた湿性草地で得られた個体でも57%がソバ花粉を体表に付着させていて,他殖植物であるソバの受精に吸血性アブ類が関与していることが示唆された.
著者
岡澤 孝雄 奥土 晴夫 當間 孝子 比嘉 由紀子 宮城 一郎
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第55回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.34, 2003 (Released:2003-08-01)

カニアナヤブカの幼虫の主要な生息場所はアナジャコの穴であるが,成虫の重要な活動である交尾,吸血等は穴の外で行われると考えられる.八重山群島,西表島,古見でカニアナヤブカ成虫のアナジャコの穴への出入りの日周期変化を調べた.マングローブ林の周縁のアナジャコの穴約50個を選び,半分は穴から出る蚊の数を調べるために穴の上に常時ケージを設置した.残りの半分の穴は入ってくる蚊を調べるために調査時のみにケージを置いて,中の成虫蚊を細棒を使いケージの中に追い出し,定時的に蚊数を数えた.雄成虫も雌成虫も日暮から夜の0時までに穴を出て,夜明け頃から穴に入り始める.穴に戻る行動は日中も継続的に観察された.雄成虫のスワームは夜明け直後から1時間弱の間, 穴の上に見られ,そこに飛来した雌との交尾行動も観察された.