著者
當間 孝子 宮城 一郎 比嘉 由紀子 岡沢 孝雄 佐々木 均
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.65-71, 2005-06-15 (Released:2016-08-07)
被引用文献数
20 29

2004年6月12-18日に, 琉球列島の西表島の森林地帯の2ヵ所で, 蛙の声をCDプレイヤーで鳴らし, 直ぐ近くにCDCライトトラップを設置し蚊類を採集した.第一地点で合計777個体, 2地点で257個体のハエ目の昆虫が採集された.それらのうち, 次の4種の吸血性昆虫(雌)が両地点で目立って多く採集された.マックファレンチビカは第一地点で580個体(74.6%), 第二地点で193 (75.1), ヤエヤマカニアナチビカ19(2.4)と27 (10.5), ヤマトケヨソイカ106 (13.6)と20(7.8), また, ルソンコブハシカが第一地点のみで39個体(5.0%)が採集された.これらの蚊にケージ内でヌマガエルを暴露すると, 吸血行動が見られ, 多くの個体が吸血した.このことからこれらの蚊は自然界でカエルの鳴き声に誘引され, 吸血していると思われる.
著者
當間 孝子 宮城 一郎 比嘉 由紀子 岡沢 孝雄 佐々木 均
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.65-71, 2005
参考文献数
22
被引用文献数
2 29

2004年6月12-18日に, 琉球列島の西表島の森林地帯の2ヵ所で, 蛙の声をCDプレイヤーで鳴らし, 直ぐ近くにCDCライトトラップを設置し蚊類を採集した.第一地点で合計777個体, 2地点で257個体のハエ目の昆虫が採集された.それらのうち, 次の4種の吸血性昆虫(雌)が両地点で目立って多く採集された.マックファレンチビカは第一地点で580個体(74.6%), 第二地点で193 (75.1), ヤエヤマカニアナチビカ19(2.4)と27 (10.5), ヤマトケヨソイカ106 (13.6)と20(7.8), また, ルソンコブハシカが第一地点のみで39個体(5.0%)が採集された.これらの蚊にケージ内でヌマガエルを暴露すると, 吸血行動が見られ, 多くの個体が吸血した.このことからこれらの蚊は自然界でカエルの鳴き声に誘引され, 吸血していると思われる.
著者
當間 孝子 宮城 一郎 比嘉 由紀子
出版者
琉球大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

蚊は人・哺乳動物の血を吸い病原体を媒介する。哺乳類の吸血行動に関しては多くの研究があり、動物が排出する二酸化炭素や体温を感知し、動物に接近することはよく知られている。最近、我々は冷血動物(蛙)の鳴き声に刺激され、吸血行動を開始する蚊がいることを報告した。本研究では、どんな蚊種がどんな種の蛙の鳴き声に誘引されるのか、それらの音に特徴があるのか、また、誘引された蚊の室内での累代飼育を試み、生態を明らかにすると共に、野外で採集した吸血蚊の吸血源動物を明らかにすることを目的として行った。これらの研究は昆虫媒介性人畜の病原のサイクルの解明、人畜への感染予防対策に役立つと考える。研究の結果、チビカの仲間の蚊、特にUr. macfarlaneiが蛙の鳴き声に多数誘引され、西表島に生息する8種の蛙の声、いずれにも、個体数の違いはあるが誘引されることが明らかになった。本工学部の音声の専門家である高良教授の協力を得て、蛙の鳴き声を分析し、人工音を作成、野外実験を試みたが、蚊を誘引する人工音は特定されてなく、引き続き調査中である。蛙の鳴き声に誘引された西表島産Ur. macfarlaneiは実験室内累代飼育に成功した。1雌が平均61卵粒からなる卵塊を水面に産み、幼虫期間は9-15日、蛹の期間は2-3日で、羽化率は74%であった。羽化成虫は大ケージで自然条件化で交尾し、吸血源として蛙をケージ内に入れると約15%の雌が吸血した。今後本種の実験室内での音に対する反応など生態を明らかにする。本種吸血雌の胃内血液のDNA解析の結果、野外ではサキシマヌマガエル、ヒメアマガエル、アイフィンーガエルを吸血していることも明らかになった。
著者
比嘉 由紀子 津田 良夫 都野 展子 高木 正洋
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.205-209, 2000
被引用文献数
4 16

1998年9月, 長崎大学熱帯医学研究所敷地内で家屋周辺の茂み及び裸地においてヒトスジシマカの24時間採集を行い, 周辺環境の異なる採集場所における吸血活動性と密度のちがいを調べた。ヒトスジシマカの密度は茂みで高く, 屋内や裸地で低かった。吸血活動は薄明薄暮に高まり, 夜も高かった。最も活動性が高い薄暮には, 統計的な有意差はみられないが, 昼間や夜間に比べて屋内や裸地で採集される雌個体の割合が高かった。以上の結果からヒトスジシマカの生態における夜間の吸血活動の重要性と薄明薄暮には茂み以外に裸地や屋内などでも吸血される機会が増加することが示唆された。
著者
岡澤 孝雄 奥土 晴夫 當間 孝子 比嘉 由紀子 宮城 一郎
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第55回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.34, 2003 (Released:2003-08-01)

カニアナヤブカの幼虫の主要な生息場所はアナジャコの穴であるが,成虫の重要な活動である交尾,吸血等は穴の外で行われると考えられる.八重山群島,西表島,古見でカニアナヤブカ成虫のアナジャコの穴への出入りの日周期変化を調べた.マングローブ林の周縁のアナジャコの穴約50個を選び,半分は穴から出る蚊の数を調べるために穴の上に常時ケージを設置した.残りの半分の穴は入ってくる蚊を調べるために調査時のみにケージを置いて,中の成虫蚊を細棒を使いケージの中に追い出し,定時的に蚊数を数えた.雄成虫も雌成虫も日暮から夜の0時までに穴を出て,夜明け頃から穴に入り始める.穴に戻る行動は日中も継続的に観察された.雄成虫のスワームは夜明け直後から1時間弱の間, 穴の上に見られ,そこに飛来した雌との交尾行動も観察された.
著者
比嘉 由紀子 Arlene Garcia-Bertuso 徳久 晃弘 永田 典子 沢辺 京子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
巻号頁・発行日
vol.64, pp.48, 2012

デング熱は20世紀以降,流行が世界中で報告され,2億 5千万人以上が感染リスクを負っており,特に熱帯アジアでの流行が大きく,この地域に限っていえばマラリアを凌ぐ最も深刻な蚊媒介性ウイルス感染症となっている.フィリピンは東南アジアの中でも特にデング熱感染者数,死亡者数が多い国であるが,媒介蚊に関してはマニラを含む首都圏の情報が断片的にあるのみである.そこで,本研究では, 2010年 1月にルソン島において,古タイヤから発生するデング熱媒介蚊調査を行った.侵襲度を調べるとともに,野外にてピレスロイド系殺虫剤感受性簡易試験を行った. その結果,135地点から蚊の幼虫を採集した. 3,093個のタイヤのうち,775個のタイヤをチェックした. 有水,有蚊幼虫タイヤ数はそれぞれ 341(44.0%),127(16.4%)個だった. ネッタイシマカはルソン島に広く生息しており,ヒトスジシマカは北部と南部の一部にみられた.デング熱媒介蚊以外にネッタイイエカも採集された ネッタイシマカのほうがヒトスジシマカよりピレスロイド系殺虫剤に対する感受性が低下していることが示唆された.
著者
宮城 一郎 當間 孝子 比嘉 由紀子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.337-343, 2008-12-15 (Released:2016-08-06)
参考文献数
23

"Chisuikeyosoika" (hairy biting midges) is a new Japanese name given to the family Corethrellidae Edwards elevated from Chaoboridae Edwards. The features of the family including morphological and biological characteristics of adults and larvae are briefly mentioned. The taxonomic status of the Japanese species of the genus Corethrella: C. japonica (Komyo), C. towadensis Okada and Harada, C. nippon Miyagi and C. urumense Miyagi are also discussed. Corethrella is probably worldwide in distribution but has been overlooked in many areas. Medical entomologists in Japan are expected to pay more attention to the hairy biting midges.
著者
松本 令以 植田 美弥 村田 浩一 比嘉 由紀子 沢辺 京子 津田 良夫 小林 睦生 佐藤 雪太 増井 光子
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.79-86, 2010 (Released:2011-03-01)
参考文献数
52

蚊媒介性感染症のベクターとなる蚊の生息状況解明を目的として,2005年5月から5か月間,横浜市立よこはま動物園内においてドライアイストラップ,グラビッドトラップおよびスウィーピング法を用いた捕集調査を行った。その結果,アカイエカ種群蚊(Culex pipiens group),ヒトスジシマカ(Aedes albopictus),トラフカクイカ(Lutzia vorax)など計9属14種2,623個体が捕集された。アカイエカ種群蚊およびヒトスジシマカが捕集蚊全体の約85%を占め,これらの蚊が園内における優占種であると考えられた。神奈川県内で生息が確認されている蚊26種のうち53.8%にあたる種が捕集されたことから,本動物園およびその周辺地域は,各種蚊が選好する多様な環境で構成されていると考えられた。なお,捕集蚊の10.6%で吸血が認められ,動物園動物を吸血源としている可能性が示唆された。動物園動物の蚊媒介性感染症を制御し,希少種の生息域外保全を行うためには,蚊種の生態に応じた防除対策が必要である。
著者
宮城 一郎 當間 孝子 比嘉 由紀子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.337-343, 2008
参考文献数
23

"Chisuikeyosoika" (hairy biting midges) is a new Japanese name given to the family Corethrellidae Edwards elevated from Chaoboridae Edwards. The features of the family including morphological and biological characteristics of adults and larvae are briefly mentioned. The taxonomic status of the Japanese species of the genus Corethrella: C. japonica (Komyo), C. towadensis Okada and Harada, C. nippon Miyagi and C. urumense Miyagi are also discussed. Corethrella is probably worldwide in distribution but has been overlooked in many areas. Medical entomologists in Japan are expected to pay more attention to the hairy biting midges.
著者
比嘉 由紀子 星野 啓太 津田 良夫 小林 睦生
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.93-98, 2006
参考文献数
19
被引用文献数
1 9

北海道東部の6地域(網走の3湖,釧路,根室,厚岸)で2003年と2004年の8月にドライアイストラップと人囮法によって吸血のために飛来する蚊の採集を行った.その結果5属10種の蚊が採集され,なかでもアカイエカ群と亜寒帯生息性のヤブカ類が多くを占めていた.蚊相を地域間,植生の異なる採集場所間で比較した.蚊相は地域間で非常に大きく異なっていた.釧路の草原,茂み,針葉樹林に設置したトラップで得られたサンプルの種類構成を比較したところ,植生と蚊相の間にはっきりした関係が認められ,4種の優占種(アカイエカ群,エゾヤブカ,ヤマトハボシカ,アカエゾヤブカ)がそれぞれ種特異的な生息場所選択性を持つことが示唆された.これらの調査結果に基づいて,北海道東部におけるウエストナイルウイルスの潜在的媒介蚊について論じた.