著者
鷺 真琴 永井 幹子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第54回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.210, 2005 (Released:2005-11-22)

【はじめに】 悪性腫瘍の臭気コントロールにおいて、現在までにいくつかの科学的・物理的方法で消臭効果が得られていることが分かっている。しかし頭頚部・膀胱の癌は再発・再燃を繰り返し、皮膚表面に露出するケースが少なくない。今回2つの事例で一時的に消臭効果はみられても、自壊しはじめた腫瘍と強くなる臭いに対して、薬剤やケアを試みた事例を紹介する。【目的】腫瘍臭における臭気コントロール【患者紹介】<事例1>患者 膀胱腫瘍 膀胱腫瘍浸潤に伴う膣・直腸瘻経過 腹部から腰部にかけての疼痛があったため、MSコンチン内服にて疼痛コントロールを行っていた。陰部(大陰唇)腫瘍から膿様滲出液と出血があった。膿様滲出液は便や帯下と混入することにより悪臭を伴った。<事例2>患者 左上顎腫瘍経過 平成12年より左上顎癌を発症し、左上顎洞開洞術・動注・放射線療法施行し、外来にてフォローしていた。しかし平成16年腫瘍への感染あり、左眼下部より膿汁流出、涙丘部より腫瘍が突出・増大し悪臭を伴った。看護問題事例1 腫瘍と排液の混入に伴う悪臭事例2 腫瘍増大・腐敗に伴う悪臭【看護の実際】病室に消臭剤設置腫瘍部にゲンタシン軟膏塗布事例1:対処療法 出血時硝酸銀焼灼 陰部洗浄・オムツ交換事例2:薬剤使用による対応とケア(1)ダラシンTゲル(2)フラジール軟膏+マクロゴール【実際と効果】 事例1では硝酸銀焼灼による止血によって血液の酸化臭が一時的に消失した。しかし、膿様滲出液や便・帯下が常時排泄されていたため、悪臭が消えることはなかった。 事例2においては(1)剤ではゲル状であったため、腫瘍部には不適切であった。(2)剤では臭気コントロールが行なえ一時退院が出来たが、再入院時には腫瘍の腐敗が進み消臭効果が減退していた。【考察】 腫瘍の増大に伴う腫瘍臭に対し対処的に関わったが、結果として長期的な効果が得られなかった。臭気についての分析が不十分であり、また患者自身も臭気に対して無頓着であったこと、腫瘍により臭覚が麻痺していたことで、快・不快が不明であった。今回は家族と看護師の臭覚で消臭効果を判断したが、臭気の程度については尺度を用いて評価すべきだった。【おわりに】 患者の最期を不快な感情を持たずに迎えるようにするには、臭気の分析と管理、適切な看護介入について見当が必要である。
著者
成田 沙織 北嶋 清子 三熊 敬子 太田 幸一 赤塚 悦子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第54回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.175, 2005 (Released:2005-11-22)

【はじめに】当科では、発熱患者に対し解熱方法としてまず手技の比較的簡単な腋窩クーリングを実施する事が多いが、意識障害で体動が激しい患者には無効なことが多い。今回医療廃棄物をリサイクルし腋窩クーリング用具を考案し、結果を得られたので報告する。【研究目的】1.医療廃棄物をリサイクルし、腋窩クーリング用具(以下クーリン君)を作成する。2.作成したクーリン君で、有効な腋窩クーリング効果が得られる。【研究方法】1.研究期間平成17年1月10日から平成17年4月25日 2.研究方法使用済み経管栄養点滴セット(以下点滴セット)を洗浄乾燥後、EOGガス滅菌にて滅菌処理し、その中にCMC製剤(パルプ剤)を注入。シーラーで4cm間隔と2cm間隔に閉塞し切断し、市販されているクーリング製品との冷却効果を比較検討。4cmと2cmの各集団とで冷却時間が長いほうを箱にいれ冷凍し作成。洗濯ネットにいれ患者の腋窩へ使用。使用後は洗濯ネットより取り出し洗浄し再度冷凍。ネットは洗濯、乾燥の後、再度使用する。【結果】クーリン君内容物の長さと市販用品との比較では、市販のクーリング剤は急激な温度変化に対しクーリン君では緩徐な温度変化であった。更に2cmの方が4cmより緩徐であった。体温と冷却効果については、市販製品の場合開始時温度は低いが冷却時間の持続性は図れず、クーリン君では120分後の場合でも冷却効果が期待できる。【考察】今回考案したクーリン君は医療廃棄物を利用しているが経管栄養用で血液汚染が無くEOG滅菌処理を加え、パルプ材のCMC製剤を使用している為人体に安全である。CMC製剤は熱伝導に優れ、また点滴セットを細かくすることで密着性・変形性から冷却時間が長く多少の体動にもずれにくい利点がある。クーリン君は0℃以上を保つことからそのまま使用でき、市販のものと同等の作用時間があり、凍傷の徴候もみられなかったことに繋がったと考えられる。【結論】1.医療廃棄物をリサイクルし腋窩クーリングを考案した。2.点滴セットにCMC製剤を入れて2cmの方が冷却時間が長かった。3.内容物を2cmにすることで用意に形が変形し腋窩の深部に固定できた。4.クーリン君はそのまま使用でき市販のクーリング製品と同等の作用時間があった。5.クーリン君の程よい冷却効果は、リラクゼーション効果にもなる。
著者
堀木 裕司
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第54回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.132, 2005 (Released:2005-11-22)

JA三重厚生連では、従来紙によりヒヤリ・ハット情報を収集してきた。その後、表計算ソフトを利用して集計を行ってきたが、病院全体で情報を収集し、データを利用するにはかなりな手間を要し、分析も出来ていなかった。厚生労働省より特定医療機関に対し、リスク情報の提出が義務付けられ、提出様式やコードについての定義付けがなされた。当会においても、将来この報告書様式に対応するためと、病院内で収集されたデータを分析するため、Webシステムを用いてリスク管理システムを作成することになった。 Webシステムを用いることにより、入力が容易になり、データを収集しやすくなった。またこれらのデータがデータベース化されるため、後利用が可能になったので、その事例を紹介する。平成16夏、病院見学にてリスクレポートシステムが有効に運用されているのを知り、当会にても構築をしていく必要にせまられた。メーカからもリスク管理システムは販売されているが、当会7病院に導入するにはかなり高額になること、当会の求めるものとは方向を異にすることより、自前での開発を行なうことになった。構築には、当会にて構想を練り、プロトタイプを作成し、各病院に試験的に配布し、その後3か月程度の試用期間を経て、平成17年4月より本格運用を開始している。導入当初は、サーバの設定より入力途中のデータが消えてしまう等のトラブルもあったが、一つ一つ問題を解決し、看護師からのクレームも殆ど出なくなった。運用としては、看護師長が入力するようになっているが、いずれ発見者が自由に入力する形となっている。緊急性を要する情報に関しては、メールシステムを利用して、安全管理室や院長等に情報が飛ぶようになっている。内容の評価については、入力された情報を、上長や部長が閲覧し、評価や対策のコメントを記入出来るようになっている。分析に関しては、各項目にて分析したり、Excelに出力することが可能となっている。その他、セキュリティに関しては、IDとパスワードにて他部門の閲覧を出来ないようにしている。またIPアドレスにてアクセス制限を行っている。このように、安全管理システムにSEが積極的に関わることにより、使いやすいシステムを構築できるとともに、比較的安価にシステムを導入できた。今後は、このシステムの不備な点を随時改良し、リスクの要因を排除していくことに努めていきたい。
著者
永美 大志 西垣 良夫 矢島 伸樹 浅沼 信治 臼田 誠 広澤 三和子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第54回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.2, 2005 (Released:2005-11-22)

<はじめに> 農薬中毒(障害)において、パラコート剤による中毒は、死亡率、死亡数の高さから重要な位置を占める。演者らは、本学会の農薬中毒臨床例特別研究班として、1998-2003年度の調査を担当し、調査の概要を報告してきた(西垣ら 2002、2005)。ここでは、自殺企図によるパラコート中毒について考察する。<方法> 本学会が行なってきた農薬中毒(障害)臨床例調査の1998-2003年度分の中で、自殺企図でパラコート製剤を服毒した症例71例について、製剤、性、年令階級、服毒量などと転帰との関係について検討した。<結果>1.製剤別の転帰 パラコート製剤は、1960年代に販売され始めたが、その中毒による死亡の多さに鑑み、1986年に24%製剤(主な商品名;グラモキソン、以下「高濃度製剤」)の販売が自粛され、5%パラコート+7%ジクワット製剤(主な商品名;プリグロックスL、マイゼット、以下「低濃度製剤」)が販売されるようになった。高濃度製剤の販売自粛から10年以上経過した、1998-2003年の調査でも高濃度製剤を用いた自殺症例はあり、8例全てが死亡した。一方、低濃度製剤による症例は48例あり39例(81%)が死亡した。また、尿定性、血中濃度の測定などからパラコートの服毒であることは明らかであるが製剤名が不明であった15症例も全て死亡した。2.性別の転帰 性別では、症例数で、男31例、女39例であり、死亡数(率)は、男25例(81%)、女36例(92%)であった。3.年令階級別の転帰 症例を、20-49才、50-69才、70-89才の3群に分類したところ、死亡数/症例数(死亡率)はそれぞれ、17/21(81%)、23/27(85%)、22/23(96%)であり、比較的若い群でも死亡率が高かった。4.服毒量と転帰 高濃度製剤、製剤名不明の症例については、上記のとおり死亡例のみである。低濃度製剤については、20mL以下、50mL以下、50mLを超える量を服毒した群に分類したところ、死亡数/症例数(死亡率)はそれぞれ、4/9(44%)、2/4(50%)、22/23(96%)であり、数十mLの服毒であっても、半数近くが死亡し、50mLを超える群ではほとんどが死亡した。5.尿定性と転帰 尿定性の判定結果を、陰性、陽性、強陽性に分類したところ、死亡数/症例数(死亡率)はそれぞれ、1/2、12/17、24/27であり、陽性で71%が、強陽性では89%が死亡した。6.血清中パラコート濃度 Proudfood(1979)が提案した、50%生存曲線との比較を行なったところ、おおむね、死亡例は曲線の上に、生存例は曲線の下に位置した。<まとめ> パラコート中毒の転帰を予測する因子としては、服毒量、服毒からの時間と血清中濃度などが考えられた。<謝辞> 本調査にご協力いただいた、全国の医療施設の方々に、深謝いたします。<文献>西垣良夫 他(2002).日農医誌 51:95-104 西垣良夫 他(2005).日農医誌 (投稿中) Proudfood AT et al.(1979) Lancet 1979;ii:330-332
著者
丹波 寛子 高橋 久美子 大倉 雅絵 佐藤 栄子 佐々木 司郎 伏見 悦子 竹内 雅治 高橋 俊明 関口 展代 林 雅人
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第54回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.68, 2005 (Released:2005-11-22)

[はじめに]たこつぼ型心筋障害(以下TAKO)は冠動脈攣縮やカテコラミン上昇など種々の原因が想定されているが、その詳細は不明であり、また経過中に心尖部肥大(以下APH)様を呈した報告は非常に稀である。我々は、TAKO経過中にAPH様を呈した2症例を経験したので報告する。[症例]〈症例1〉76歳女性。平成16年8月冷や汗を伴う胸痛が出現し前医を受診。心電図(以下ECG)のV3-4でST上昇、心エコー図(以下UCG)で心尖部領域に壁運動異常があり急性心筋梗塞(以下AMI)あるいはTAKOが疑われ、当院へ救急搬送された。緊急冠動脈造影(以下CAG)で有意病変は認められなかったが、左室造影(以下LVG)では心尖部がakinesisであることからTAKOと診断された。胸部X-pで心拡大、肺うっ血像、胸水は認められなかった。peak CK 279IU/l、CK-MB 9.9ng/ml。UCG所見として初診時は、乳頭筋レベルの前壁中隔から心尖部でakinesis 、壁の菲薄化と内腔拡大があった。また左室基部が過収縮なため、左室流出路では60mmHg程の圧較差が認められ、左室全体の収縮能としてはEF20-30%に低下していた。血圧低下があり少量のβ遮断薬が使用された。第16病日、内腔が縮小、EF87%と改善され、左室流出路の圧較差も消失していた。しかし、心尖部短軸断面では急性期のakinesis部に一致して壁が肥厚し、拡張期の内腔狭小化と拡張障害の所見があり、心尖部肥大型心筋症様の形態を呈していた。6か月後のUCGでは肥厚はみられず、収縮拡張ともに良好に改善されていた。ECG変化として、初診時はV2-6の軽度ST上昇のみで、第16病日にはI,II,III,aVL,aVF,胸部誘導に陰性T波、特にV3-5は巨大陰性T波を示したが6か月後には消失していた。〈症例2〉65歳女性。前医にて平成14年12月くも膜下出血術後、約1か月後にV-Pシャント術を施行。術後よりECGのV3-6でST上昇があり、AMI疑いで当院へ救急搬送された。緊急CAGでは有意病変は認められなかったが、LVGでは心基部が過収縮で、中部から心尖部にかけてdyskinesisであった事より、TAKOと診断された。胸部X-pで心拡大、肺うっ血像、胸水は認められなかった。peak CK 276IU/l、CK-MB 29ng/ml。UCG所見として初診時、基部の収縮は良好だったが乳頭筋レベルから心尖部でakinesis、壁の菲薄化も認められた。第4病日、心尖部側は縮小していたが、心尖部短軸断面では肥厚があり、内腔の拡張期狭小化と収縮拡張能の低下があった。また乳頭筋レベルの前壁中隔も厚い印象をうけた。ECGは初診時、I,II,III,aVL,aVF,V2-6でST上昇があり、第4病日には同誘導は陰性T波へ、特にV2-4では巨大陰性T波と変化した。第10病日には前医へ転院し、5か月後のECGでは発症前にほぼ戻っていたが、その後、不慮の事故により他界されたため改善後のUCGのfollowはされていない。[考察]今回報告した症例は、一例はくも膜下出血術後、もう一例はβ遮断薬が奏功したことより内因性カテコラミンの過剰分泌状態であったことが示唆される。一方、心尖部肥大型心筋症においては、心尖部の交感神経受容体異常が知られ、その成因に内因性カテコラミンの関与が報告されている。以上より、今回の2症例が経過中にAPH様を呈したことにおいて、カテコラミンの過剰分泌の関与が強く疑われた。[結語]TAKO経過中にAPH様を呈する2症例経験したが、その原因は不明である。今後多数例の検討を重ね、その病態および原因を追究していく必要がある。
著者
萩尾 慎二 黒佐 義郎 小島 秀治 相澤 充 青山 広道 前原 秀二 三宅 諭彦 藤田 浩二 多川 理沙 佐藤 智哉
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第54回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.256, 2005 (Released:2005-11-22)

高齢の大腿骨頸部骨折患者が入院時に熱発を呈することをしばしば経験する。また大腿骨頸部骨折患者の主な合併症として肺炎や尿路感染症が挙げられる。今回、入院時に採取した尿の細菌培養を行ない熱発と尿路感染(腎盂腎炎)との関係を調査した。【方法】大腿骨頸部骨折患者を入院時熱発群(術前最高体温38.0以上)と非熱発群に分け年齢、性別、入院時血液検査(白血球数、CRP、好中球%)、尿沈渣による白血球数、尿培養結果、入院時胸部レントゲン像による肺炎の有無、術後最高体温との関連を調査した。【結果】調査数15症例(平均82歳、男性1例、女性14例)のうち術前38.0度以上の熱発が見られたのは4例(全て女性、平均78.8歳)だった。熱発群ではCRPが平均3.5と上昇していた(非熱発群は平均1.6)。血液検査の白血球数、尿沈渣による白血球数、胸部レントゲン写真による肺炎像の有無、術後最高体温については非熱発群との差を認めなかった。尿培養では熱発群2例(50%)、非熱発群4例(36.4%)で陽性であり計7例中大腸菌が3例で検出された。【考察】大腿骨頸部骨折患者は大多数が高齢者であり、複数の合併症を有することが多い。入院後患者が熱発したとき、その原因として(1)骨折自体による熱発 (2)肺炎 (3)腎盂腎炎などが考えられる。受傷後、臥位が続けば肺炎、腎盂腎炎を併発するリスクは高くなると予想されるが、今回の調査では入院時検査において発熱群と非発熱群との差を認めなかった。その理由として(1)感染症の併発の有無を問わず骨折自体による熱発が多くの症例でみられる (2)入院後早期に手術が施行(平均手術待機日数1.5日)され、その際に使用される抗生剤により感染症が治癒したと考えた。尿培養では一般的に言われているように大腸菌が検出されることが多かった。我々の施設では術後抗生剤としてセファメジンα(セファゾリンナトリウム:第一世代セフェム)を使用しているが、今回の調査中に培養で検出された6菌種のうちセファメジンに感受性がなかったのは1菌種のみであった。 熱発がないにも関わらず尿培養陽性だった例(無症候性細菌尿)が多くみられたことより、熱発時に細菌尿を認めたからといって熱源の探索を怠ると他の原因の見落としにつながる危険性が十分にあると思われた。