著者
馮 良珍
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育人間科学部紀要. II, 人文科学 (ISSN:1344462X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.65-78, 2005-02-28

二十一世紀の漢字文化圏の分岐問題とそれを解決する方策を考えるうえで、漢字の構造の特徴と簡略化の歴史を振り返り、それぞれの国と地域の漢字改革の源流と現状を分析する必要がある。本論では主として漢字文化圏における漢字の形体の分岐を形成するにいたった歴史的原因や現代における分岐の問題点について、中国と日本の漢字改革を比較・分析することを中心として論述する。また漢字の簡略化におけるいくつかの方法とその優れた点と劣っている (問題のある) 点を明らかにすることで、中国大陸の簡体字を主とする簡化字に存在している不合理な部分および繁体字との間での漢字の変換の時に発生する問題について分析し、それらの問題を解決するための道筋についても触れてみたい。
著者
宮崎 隆
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育人間科学部紀要. II, 人文科学 (ISSN:1344462X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.34-20, 2009-02

ベルクソンは『物質と記憶』第三章において、「私の現在 mon présent 」について分析した後、断面の描かれていない倒立円錐図形を掲げつつ、一つの課題を示す。「われわれは長い迂回路を経て、こうして出発点に戻る」(MM,167(1))。「われわれは記憶力の二形態 deux formes de la mémoire を深く区別しつつも、その絆を提示せずにおいた」。「初めに分離しておいたこの二項」は、「この新たな観点」から「内奥において intimement ひとつに接合される、ことになる」(MM,168)と。記憶力の「二形態」とは「過去の記憶力」と「身体の記憶力」のことである(MM,169)。では、「この新たな観点」とは何であり、いかにして「記憶力の二形態」は「接合」されるのか。小論は『物質と記憶』第三章を中心に、「過去の記憶力」のほうに焦点を絞り、この問題に対する答えを概括的に探る試みである。「(2)私の現在」の分析がベルクソンの論述の転回点となっていることだろう。