著者
石田 哲朗
出版者
山梨大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1985

1.InGaPおよびInGaAsP 状態図の計算と実験結果の比較750,700℃のIn GaP液相線を、全固相組成xの範囲で実験的に求めた。さらに、GaAs(111)B基板上に液相エピタキシアル(LPE)成長させたときの、液相組成と固相組成の関係を明らかにした。それによれば、750℃の溶液では、溶液中のP濃度が0.014〜0.018原子比でx=0.56〜0.50の結晶が成長し、700℃では、P濃度が0.008〜0.010原子比でx=0.53〜0.48の結晶が得られた。これらの結果は、成長層の歪エネルギーを考慮した状態図の計算とよく一致している。四元系のInGaAsPについては、GaAs(100)基板上に格子整合する状態図(800℃)を実験的に明らかにし、計算値と比較した。液相線については、計算値と比較的よく一致するが、固相線については、よくは一致しなかった。これは、相互作用パラメータ等の値がまだ十分明らかになっていないためである。2.In Ga AsPのLPE成長成長温度800℃で、GaAs(100)上に平衡P蒸気圧印加温度差法でLPE成長させた。成長層のホトルミネセンス(PL)ピークエネルギー(77K)が1.9eV以上または1.75eV以下の結晶では、表面は鏡面状である。PL半値幅および(400)X線回折スペクトルの半値半幅も、それぞれ20meV以下および0.05度以下と狭く、結晶性は良い。一方、1.85〜1.9eVのPLピークエネルギーをもつ結晶の表面は曇っており、基板のメルトバックも観察され、界面も平坦ではない。PL半値幅も40meVに急増し、X線回折半値半幅も約0.13度に増加する。さらに、成長層からのX線回折強度は極めて弱くなる。1.7〜1.85eVの結晶は、800℃では成長しなかった。これらの成長層の結晶性をInGaAsP状態図上で考察すると、バイノーダル曲線内の結晶は、非混和性のために得られにくいと結論される。
著者
武藤 芳雄
出版者
東北大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1985

本研究の目的は、東北大金研の深瀬・藤森・武藤、九大理間瀬及び東大物性研石川が、各自のグループの教官・技官及び大学院学生とともに、重いフェルミ粒子をもつ新超電導体、磁性超伝導物質などを含む新しい金属間化合物超伝導体を創造し、超伝導特性を中心にした諸物性を解明し、基礎的研究をベースにしながらも、機に応じて新しい応用を含む開発研究も行なうことにある。本研究費により、これまで間歇化学気相蒸着法、低温高速スパッタ法(間瀬)、2元スパッタ蒸着法(藤森)、高圧RF・EB溶解法(既設・深瀬)、RF真空炉法(石川)などの新物質作製装置が、本年度までに完成した。超伝導特定測定には、現有設備及び金研超伝導材料開発施設の諸設備(武藤)を用いるが、SQUID磁束計(深瀬)及び高精度帯磁率測定装置(石川)を購入しすでに実験に使用している。来年度はホール効果測定装置(藤森)を加える予定である。なお来年度の研究費は主として極めて高価な遷移金属元素及び稀土類金属元素の購入にあてられる。これまでにA15型超伝導体のマルテシサイト及びその前駆現象(深瀬)bct(RE)【Rh_4】【B_4】化合物の超伝導と磁性の相関(武藤)、Ce【Cu_2】【Si_2】の超伝導性の組成との関係(石川)、Nb/Ti;Nb/Ag多層膜の超電導性(藤森)、【Nb_3】Geの結晶成長の超伝導特性への影響(間瀬)などについて研究成果をあげ、60年度成果報告会(日米新超伝導物質研究会)で報告した。また武藤・深瀬のグループより3名、米国Amesで60年5月に行なわれた関連国際会議また石川は f電子系に関する日ソセミナーなどで発表した。61年度には、阪大基礎工朝山、広島大理藤田、阪府大奥田の3氏を協力者に加え、最終年度の総括を行なう予定である。なおこれらの成果は、1987年(昭62)夏に 京都で行なわれる第18回低温物理国際会議及び引き続き仙台で行なわれる高度に相関のあるフェルミ粒子系の超伝導国際会議に集大成される予定である。