著者
福田 典子 藤原 綾子 Fukuda Noriko Fujiwara Ayako
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践研究指導センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:13425951)
巻号頁・発行日
no.3, pp.47-58, 1995-11

ショートパンツ教材の基礎的資料を得るために,家庭科での教材の取り扱いの現状を型紙を中心に分析した。次に,中学生女子の腰部の計測値より,その大きさや形態を把握した。これらの資料を参考に女子向きショートパンツ教材の型紙についての考察を行った。その結果,以下のことが明らかとなった。1.基本製図の基本寸法や型紙サイズの参考寸法の範囲やピッチは,教科書によりやや異なっていた。2.中学生女子の腰部の計測では,ヒップ囲に比べ,腹囲に個人差が大きかった。股上寸法はヒップ囲に比べると個人差がかなり少なく,平均値24.95cmであった。臀部の垂れ下がりが少なく臂溝が比較的高い位置にあるものが全体の12.3%であった。3.製図型紙のフィット性を高めるには,特に股上のくり部設計が重要であり,前後パンツ股上曲線の検討が必要であることがわかった。製図をしないで決められた型紙から各人の体に合った型紙を選択するには,ヒップ囲および股上寸法を組み合わせたサイズと身長から割り出す股下寸法サイズからそれぞれを選択する方法を考えた。In order to obtain fundamental teaching materials for shorts, the currently-used instructional patterns in homemaking education at junior high schools were investigated. To specify the size and shape of the shool girls' lumbar region, the due measurements were taken in this study. Furthermore, the proper instructional patterns for shorts design was discussed on the basis of the measurments. The results obtained were summarized as follows:1.The invariable measurement for the drafting individual pattern and the range and space of measurement in size chart for selecting commercial patterns varied with the school textbooks. 2.The difference in the abdominal extension circumference among individuals was greater than that of the hip circumference for junior high school girls. The individual difference in the crotch measurement was smaller than that of the hip circumference. The average of the crotch measurements was 24.95cm. The buttocks of 12.3 percent of the girls were shaping in an upper and thinner than those of others. 3.To draft the proper pattern, it was very important to design for the shape of a crotch curve. Both the measurment of the hip circumference combined with the crotch mwasurement and the inside leg measurment calculated in proportion to the individual maximum height were essentially needed to select proper pattern for shorts.
著者
伊志嶺 朝次 Ishimine Choji
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践研究指導センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:13425951)
巻号頁・発行日
no.1, pp.31-36, 1993-10

本稿は筆者が巻末に示した紀要論文などで展開した音楽療法的見地に基づく音楽教育理念について、教育実践の可能性を示唆したものである。歌唱教材として「こいのぼり」、「ぞうさん」、「とんび」の3曲を、また鑑賞教材として「ピーターと狼」をとりあげた。基本的には表現に対して鑑賞が現在の取扱いよりもつと重視されるべきとする観点から、聴取活動の場面を増やすための工夫を展開した。その観点から「こいのぼり」ではテンポを速めたり遅くしたりして風の吹き具合を連想させ、また同主短調では雨に濡れたこいのぼりとの繋がりをイメージできるだろうとした。「ぞうさん」では主としてピッチ(オクターブ)がものの大きさや重量感と関連する要素であることから、通常の歌唱のほかイメージごっことして高いオクターブでは小さい象のイメージとなり、低いオクターブでは大きい象、あるいはお父さん象などといった授業展開の可能性を示した。
著者
平良 勉 音野 敬子 Taira Tsutomu Otono Keiko
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践研究指導センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:13425951)
巻号頁・発行日
no.7, pp.67-82, 1999-12

The purpose of the current study was to examine the relationship between ratings of perceived exertion (RPE) and physiological responses during wheelchair running. Thirteen adult subjects with paraplegia performed fixed wheelchair ergometer tests to exhaustion. Oxygen uptake and heart rate were determined using electronic gas analyzer and heart rate monitor. RPE were determined by pointing out RPE scale during wheelchair running.The findings were as follows:1)There was high correlation between RPE and physiological responses in the laboratory tests.2)RPE during marathon running were correlated heart rate, and were the same as those of the laboratory tests.3)The OBLA level corresponded to RPE13, which is appropriate exercise intensity level for improving cardio-vascular functions.本研究では,Borgによって開発,作成されたRPEが,肢体不自由者のHR,VO_2,客観的運動強度と相関があり,全身持久力を向上させるための有効な指標となりうるか,その妥当性について検討することを第1の目的とした。また,この指標は健常者用であるため,障害者にも適用できるのかを調べ,その有用性を明らかにし今後の障害者スポーツの運動処方に関する基礎資料を得ることを第2の目的とした。被験者は,車椅子マラソンチーム(チーム名:タートルズ)の男性12名(健常者1名を含む),女性1名のポリオ,脊髄損傷,頸椎損傷等の障害を持つ肢体不自由者であった。トレーニング用車椅子エルゴメーター走行における漸増運動負荷テストを行い,RPE,生理学的応答について測定した。OBLA時のRPEを推定し,それをもとに運動処方を行い,トレーニング効果の有無を検討した。また,フル・ハーフマラソン走行時のHR,RPEを調べ,漸増運動時の値と比較と比較し,対応性があるかどうか調査を行った。本研究の結果,以下のことが明らかとなった。1)RPEは,肢体不自由者の生理学的応答間と高い相関がみられた。2)フル・ハーフマラソン走行時のRPEに対するHRは,漸増運動時のRPE,HRの関係と同様な結果となった。3)個人差はあるもののOBLA時のRPE(平均RPE13)を基に運動処方を行った結果,被験者6名の持久力が向上し,1名が現状維持,1名が低下の傾向がみられた。この持久力の低下した被験者は,トレーニングの望ましい頻度条件を満たしておらず,そのため持久力の向上が見られなかったと考えられる。4)本研究の肢体不自由者のVO_2maxは,他の研究報告と同様な非常に優れた値を示した。本研究の結果より,健常者用RPEは,肢体不自由者(ポリオ・脊髄損傷者)がトレーニングを行う際の有効な指標として使用できることが示唆された。このことによって,肢体不自由者がトレーニングの効果を容易に認識することが可能になったということは,大変意義あるものであると考えられる。しかし,全身持久力向上のための健常者に望ましいRPEが肢体不自由者にも当てはまるかどうかについては今後さらにデータの蓄積を行い,検討していく必要があると考えられる。また,他の障害者におけるRPEの妥当性についても今後の研究課題としたい。本研究を踏まえ,スポーツや運動に親しみ持久力を向上させることによって,障害者のあらゆる可能性をひろげ,生活習慣病の予防,健康の維持増進に寄与でき,より一層の障害者スポーツの普及とその発展に貴重な資料が得られたものと考える。本論文は1998年度琉球大学教育学研究科修士論文の一部である。
著者
藤原 幸男 Fujiwara Yukio
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践研究指導センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:13425951)
巻号頁・発行日
no.3, pp.59-69, 1995-11

沖縄は終戦後すぐにアメリカ占領統治下に置かれ,アメリカ的な教育の側面を織り込みながら,日本本土とは相対的に独自な歩みをしてきた。ところが1969年に日本復帰が決まり,1972年の日本復帰によって日本本土の教育と同じ歩みが要求された。財政的援助によって学校施設・設備は全国水準に近づいたが,他方で,これまで国費学生制度・米国留学生制度によって沖縄県内の選抜で大学進学できたのが,急に全国の学生と対等に競争することになった。そのため,学力の低さが自覚され,学力向上を希求する意識が高まり,そこから学力問題が浮上してきた。また県教育庁は文部省中央の指示・助言を受けて全国並みの教育施策の実現に力を注いだ。授業についていけない子どもは,旧来の沖縄のテーゲー(適当・いい加減)文化に加えて,急速な観光地化にともない,金銭恐喝・集団暴行などの問題行動に走った。その背後に教師の体罰があるとも言われ,校則・体罰・人権が大きく取り上げられた。以下で,第一期(1972年~1981年),第二期(1982年~1987年),第三期(1988年~現在)に時期区分して,日本復帰後23年の沖縄における学校教育の展開を概観する。
著者
米盛 徳市 玉那覇 清 Yonemori Tokuichi
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践研究指導センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:13425951)
巻号頁・発行日
no.1, pp.191-212, 1993-10

企業におけるOA化が進展するなか、商業高等学校の情報教育(商業教育)は、啓蒙・開発・試行の段階から本格的な実施段階に突入し、文部省は教育現場に新たな教育内容への転換を要求している。沖縄県の具志川商業高等学校が、実践的商業教育の新しい試みとして「事務実務」を平成2年4月に開設した。本科目で商業教育の集大成を図り、中途退学に歯止めを掛けることである。新たな模索は、生徒自身が実会社「具商デパート」を設立し、実運営することで、企業の機構や活動の厳しさを学ばせ、「理論から実践」、いわば「座学(机上)学習から本物志向の実践学習」への脱皮を図った。著者らが開発した「実践デパート・レジシステム」は「本物志向の実践学習」を支援するシステムで、実務面ではパソコン数台による取扱商品約1万品目、1日当り売上金額1千万円程度の多角的な会計処理、かつ教育面ではCAI技法、特にKR情報の音声出力、電光掲示板的な表示等を駆使した。公開授業(平成4年9月25日)やリサイクル祭&販売実習(平成4年11月29日)の実務実践で数多くの示唆を得ることができた。
著者
藤原 綾子 Fujiwara Ayako
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践研究指導センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:13425951)
巻号頁・発行日
no.5, pp.29-41, 1997-11

生活文化としての和服を理解させるため,「被服構成実習3」の授業を通して以下に示す実践を試みた。大学生男女を対象とした和服のイメージ調査,「被服構成実習3」の実習前後の和服に関する基礎知識の理解度,和服の製作,着用経験及び着用能力の調査,家庭科教育における和服製作に関する意識調査,実習後の感想等,更に近年相次いで出版されている浴衣(ゆかた)の入門書について分析し,授業用参考書としての考察を行った結果,以下のことが明らかとなった。1.大学生の和服に対するイメージは祝,祭,行事など特別な時の衣服であり,しとやか,優美・優雅,日本的な印象を感じている。又どちらかと言うと晴着であり,着装は困難で非活動的,非経済的,古典的というマイナスイメージを持っていることが明らかになった。2.和服に関する基礎的知識の理解では,実習前は低い正答率しか得られなかったが,実習後はるかに高い正答率が得られ,製作実習がその理解に役立っていることが明らかになった。3.家庭科教育における和服の製作をどういう教育段階に入れるべきかについては,40%の学生は高等学校家庭科で必要であると回答し,全体の半数(50%)の学生は大学教育に必要であると回答していた。4.実習後の学生の感想から,ミシン縫いを取り入れたため目標の日程(一週間)で仕上げることができた,和服はほどくと長方形の布地になりリフォームしやすく経済的であること,着つけを学ぶことができ将来役に立つこと等,和服の長所を実習から学んでいて,充分ではないものの和服理解の一端は得られたと考える。5.近年相次いで発行されているゆかたの入門書を検討した所,数冊の本では身長によるL,M,Sの三体型のでき上がり寸法表示があったものの,L,Mだけの本もみられた。製作手順についても従来からの方法もあれば,大幅に変化したものも見られた。肩当,居敷当はほとんどの本で省略されていた。製作方法は従来の手縫いのみからミシン縫いをとり入れた方法に移向し,時間の短縮化がはかられている。教員養成課程家政専攻の学生のための参考書としては一応使えるものの,肩当,居敷当のつけ方等は加える必要がある。
著者
前原 武子 Maehara Takeko
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践研究指導センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:13425951)
巻号頁・発行日
no.6, pp.55-60, 1998-12

ある人を取り巻く重要な他者(家族,友人,同僚,専門家など)から得られるさまざまな形の援助,すなわちソーシャル・サポート(social suport)が,その人の健康維持・増進に十分な役割を果たすことが注目されている(久田,1987)。児童・生徒が示す心理的ストレスもソーシャル・サポートによって軽減されることが,数少ないながら,実証されるようになった。Furman & Buhrmester(1985)やReid,Landesman,Treder,and Jaccarrd,(1989)は,小学生が,自分のサポートネットワークをどのようにとらえているか検討した。また,Dubouw and Tisak(1989)は,3-5年生を対象に,ストレス(転居,親の死亡,離婚など)が強いほど問題行動が多いこと,しかし,その関係は子ども自身が報告するサポートの多い群より少ない群で強いことを見出した。わが国では,森と堀野(1997)が,小学生を対象として,絶望感がサポートと負の相関関係にあることを報告している。また,岡安・嶋田・坂野(1993)は,中学生を対象に,各種学校ストレッサー(教師,友人,不活動,学業)による各種ストレス反応(不機嫌・怒り,抑うつ・不安,無力感,身体的反応)がサポートによって軽減されることを報告している。興味深いことに,それら両研究は,サポートの有効性がサポートの内容やサポート源によって異なるばかりでなく,サポートを受ける側の属性によっても異なることを見出した。森と堀野(1997)は,ソーシャルサポートが有効に働くための介在要因として達成動機の個人差に注目し,自己充実的達成動機が高い児童がサポートを有効に活用できること,競争的達成動機は介在要因として有効でないことを見出した。また岡安ら(1993)は,男子においては,女子ほど,サポートが有効にはたらかないことを見出し,サポート以外の要因について検討する必要性を指摘した。House(1981)も指摘するように,サポートが送り手と受け手の相互交渉であることを考えると,送り手はもちろん,受け手の属性に焦点を当てた研究が必要である。本研究は,受け手の属性,特に,パーソナリティ属性の1つである統制感を取り上げて検討する。Rotter(1966)は,統制の所在(locus of control)というパーソナリティ変数を定義した。すなわち,自分自身の行動が,ある成果や結果をもたらすという期待を内的統制と呼び,逆に,結果の生起に自分の行動以外の外的な力が左右するという期待を外的統制と呼び,その違いが行動を予測するという。類似した概念が,feelings of personal control, perceived control, sence of control, perception of control,などの用語で強調されてきた。まさに自分自身の力が結果を左右するという期待や,感情,知覚などを含めて,ここでは,便宜的に,統制感(perceived control)の用語を使用する。神田(1993)は,小・中学生対象の統制感尺度を作成し,統制感の高低と適応感・不適応感とに対応関係があることを見出した。この結果に基づくならば,統制感とストレスは負の相関関係にあることが予想される。では統制感とサポートではどちらが有効に作用するのだろうか。ストレス対処は,サポートさえあれば可能なのだろうか,あるいは,たとえサポートがなくても,個人の統制感によって可能なのだろうか。その疑問を解決することが本研究の主な目的である。特に,岡安ら(1993)が見出した無力感に対するサポート効果の性差に注目し,無力感に対するサポートと統制感の効果に関する性差を明らかにしたい。