著者
平良 勉 音野 敬子 Taira Tsutomu Otono Keiko
出版者
琉球大学教育学部附属教育実践研究指導センター
雑誌
琉球大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:13425951)
巻号頁・発行日
no.7, pp.67-82, 1999-12

The purpose of the current study was to examine the relationship between ratings of perceived exertion (RPE) and physiological responses during wheelchair running. Thirteen adult subjects with paraplegia performed fixed wheelchair ergometer tests to exhaustion. Oxygen uptake and heart rate were determined using electronic gas analyzer and heart rate monitor. RPE were determined by pointing out RPE scale during wheelchair running.The findings were as follows:1)There was high correlation between RPE and physiological responses in the laboratory tests.2)RPE during marathon running were correlated heart rate, and were the same as those of the laboratory tests.3)The OBLA level corresponded to RPE13, which is appropriate exercise intensity level for improving cardio-vascular functions.本研究では,Borgによって開発,作成されたRPEが,肢体不自由者のHR,VO_2,客観的運動強度と相関があり,全身持久力を向上させるための有効な指標となりうるか,その妥当性について検討することを第1の目的とした。また,この指標は健常者用であるため,障害者にも適用できるのかを調べ,その有用性を明らかにし今後の障害者スポーツの運動処方に関する基礎資料を得ることを第2の目的とした。被験者は,車椅子マラソンチーム(チーム名:タートルズ)の男性12名(健常者1名を含む),女性1名のポリオ,脊髄損傷,頸椎損傷等の障害を持つ肢体不自由者であった。トレーニング用車椅子エルゴメーター走行における漸増運動負荷テストを行い,RPE,生理学的応答について測定した。OBLA時のRPEを推定し,それをもとに運動処方を行い,トレーニング効果の有無を検討した。また,フル・ハーフマラソン走行時のHR,RPEを調べ,漸増運動時の値と比較と比較し,対応性があるかどうか調査を行った。本研究の結果,以下のことが明らかとなった。1)RPEは,肢体不自由者の生理学的応答間と高い相関がみられた。2)フル・ハーフマラソン走行時のRPEに対するHRは,漸増運動時のRPE,HRの関係と同様な結果となった。3)個人差はあるもののOBLA時のRPE(平均RPE13)を基に運動処方を行った結果,被験者6名の持久力が向上し,1名が現状維持,1名が低下の傾向がみられた。この持久力の低下した被験者は,トレーニングの望ましい頻度条件を満たしておらず,そのため持久力の向上が見られなかったと考えられる。4)本研究の肢体不自由者のVO_2maxは,他の研究報告と同様な非常に優れた値を示した。本研究の結果より,健常者用RPEは,肢体不自由者(ポリオ・脊髄損傷者)がトレーニングを行う際の有効な指標として使用できることが示唆された。このことによって,肢体不自由者がトレーニングの効果を容易に認識することが可能になったということは,大変意義あるものであると考えられる。しかし,全身持久力向上のための健常者に望ましいRPEが肢体不自由者にも当てはまるかどうかについては今後さらにデータの蓄積を行い,検討していく必要があると考えられる。また,他の障害者におけるRPEの妥当性についても今後の研究課題としたい。本研究を踏まえ,スポーツや運動に親しみ持久力を向上させることによって,障害者のあらゆる可能性をひろげ,生活習慣病の予防,健康の維持増進に寄与でき,より一層の障害者スポーツの普及とその発展に貴重な資料が得られたものと考える。本論文は1998年度琉球大学教育学研究科修士論文の一部である。
著者
平良 勉 金城 文雄 濱元 盛正 大城 喜一郎 伊野波 盛一 古堅 瑛子 Taira Tsutomu Kinjo Fumio Hamamoto Morimasa Oshiro Kiichiro Inoha Seiichi Furugen Eiko
出版者
琉球大学教育学部
雑誌
琉球大学教育学部紀要 (ISSN:13453319)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.169-175, 2001-03

健康の維持増進を目的とする中高年ジョガー8名を対象に、最大酸素摂取量とマラソン走行時の消費エネルギーと運動強度を測定、またアンケートによる日常のトレーニングの実態を調査、以下のような結果を得た。1.最大酸素摂取量は相対値で平均39.4ml/min・kg(±8.90)で、健康維持のための目標値を1例を除きほぼクリアしていた。2.日常のトレーニング処方は、強度、頻度、時間ともにアメリカ大学スポーツ医学協会が示す基準の範囲内であり、適切であった。3.マラソン走行時の消費エネルギーは、全被験者の平均,168.8kcal(±721.8)であり、競技を目的とするエリートランナーの消費エネルギーより高い値であった。このことは、マラソン走行時間は平均4hr41minでエリートランナーに比べ長時間であることによるものと推定された。4.最高心拍数を基準とする平均運動強度は90.2% of HRmax,85.6% of HRmaxRであり、また、最大酸素摂取量を基準とする平均強度は87.4% of Vo2maxで他の報告に比べやや高い強度であった。5.分時消費エネルギーは平均11.1kcal(±2.29)でVery heavyで、完走のみを目的とする市民マラソンであってもかなり高い強度であった。
著者
平良 勉 金城 昇 Taira Tsutomu Kinjo Noboru
出版者
琉球大学教育学部
雑誌
琉球大学教育学部紀要 第一部・第二部 (ISSN:03865738)
巻号頁・発行日
no.48, pp.293-301, 1996-03

The purpose of the present study was to estimate exercise intensity and energy expenditure in marathon running.The subjects were seven male and six female students of physical education major. Heart rate were recorded by heart rate monitor. Exercise intensity and energy expenditure were estimated by HR-V^^・o2 method during marathon running. The blood lactate accumulation were analyzed to determine anaerobic threshold (OBLA:4mmol).The results were as follows:1) Mean maximum oxygen uptake of male was 43.9ml/kg・min and that of female was 48.0ml/kg・min.All subjects exceeded the desirable fitness level.2) Oxygen uptake in the race was corresponded to 73.6% of V^^・o2max for male and 67.7% of V^^・o2max for female. Heart rate was also corresponded to 77.4% of HRmax for male and 78.0% of HRmax for female.3) Heart rate and oxygen uptake during the race were within the OBLA level.4) Marathon performance was estimated to cost male subjects 3632.4kcal and female subject's 2759.0kcal.市民マラソンの運動強度とエネルギーの消費を検討するため、13名の被験者について実験室のall-out実験からHR-V^^・o2関係式を作成、マラソン走行中の心拍記録を代入して酸素摂取量を推定、消費エネルギーを算出した。all-out実験で同時に血中乳酸濃度を分析、OBLAを測定、マラソンの運動強度を推定した。結果は以下の通りである。1)最大酸素摂取量(相対値:ml/kg・min)は男子平均43.9ml/kg・minで一般日本人成人の"Average"、女子の平均は48.02ml/kg・minで"Very good"の判定であった。女子の日常の身体活動水準が部活動などで高くなったことが原因と思われた。2)レース中の心拍数は男子平均151.1beats/min,77% of V^^・o2max,女子の平均は155.2beats/min,76.0% of HRmaxであった。酸素摂取量については男子平均32.2ml/kg・min,67.7% of V^^・o2maxの成績であった。いずれも競技選手と比較すると低い強度であり、記録にこだわらず、制限時間内の完走を目指したためと考えられた。3)OBLAレベルでの心拍数は男子平均155.8beats/min,78.7% of HRmax、女子平均は166.4beats/min,83.5% of HRmaxであった。酸素摂取量については男子平均は36.0ml/kg・min,81.2% of V^^・o2max、女子平均は36.9ml/kg・min,76.0% of V^^・o2maxであった。走行中の心拍数、酸素摂取水準を越えず、無酸素性作業閾値以下であり、時間内完走のためには良好なペース水準であった。4)男子は平均3632.4kcalを消費、女子の平均は2759.0kcalであった。競技選手の消費エネルギーを比較すると高い傾向を示したが、これはレースにかかった時間が長いことが原因と考えられた。本報告の一部は日本民族衛生学会第23回沖縄地方会で発表した。
著者
平良 勉 金城 文雄 真栄城 勉 金城 昇
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

明治10年代より急激に学校設置されていくが、それは民衆の教化・統合と日本資主義経済の発展に伴う学力及び軍事力の養成ということが内外情勢のうちに支配層をして緊急の課題として強く意識されていた。明治12年清国政府が廃藩置県につき日本政府に抗議するという事態は、そのことを一層推進していく必要にかりたてた。御真影や教育勅語下賜記念運動会,日清・日露の戦勝奉祝運動会は、天皇制教化の一翼を担わされていたと考えられる。だが、そのことがその地域独自の生活や文化と何んの矛盾もなく浸透していったとは考えにくい。少なくとも就学率の状況はその現われとみることができる。さらにまた,沖縄に存在してきた独自の運動文化の盛衰は朝鮮や台湾などの調査研究とともに改めて検討されなければならない。大正期から満州事変頃まで“スポ-ツの黄金時代"ともいえる様相を呈する。野球や庭球など近代スポ-ツの種目の大会も開催され、新聞社や青年会主催の競技会なども盛んになってくる。青年会やスポ-ツ組織の設立もこの時期には際立った特徴となっている。それは、同時に大正5年内務・文部省訓令にみられるように、青年会をはじめとして社会教育団体の統合支配の再編過程でもあったと考えられる。しかしまた,民衆における一定の学力・教養の高まりは、内に自覚的主体の形成の可能性も孕む。自由民権運動や大正デモクラシ-,労働運動の高揚は,結社・表現の自由に基礎づけられ,スポ-ツ・芸術の本質が逆にその基礎に働きかえしていく過程の吹き返しの可能性を一定の規制を伴いながらももつ。野球部廃止をめぐる男子師範生のスト(大8)や宮古の運動会官僚統制に対する論争(昭3)などはこの時期の一端を示している。しかしこの時期以降、日中戦争,国家総動員法,翼賛県支部結成へと展開していくなかで,スポ-ツは自由主義,合理主義の温床であるとして一転して変質・排除され,あるいは実用的に国防競技化する。