著者
佐々木 秀美
出版者
広島文化学園大学看護学部
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.28-47, 2011-03

本論では,前稿における検証結果を踏まえて,精神的危機からと自立までのプロセスを通して,行為の源としてのナイチンゲールの思想をさらに探究した。神秘主義と科学主義の交差するイギリスの教育思想の影響を受けたナイチンゲールは,成長・発達段階において,神の存在と日常生活の様々な現象とが,神との一体感の中で生まれるものであると感じ,真実の目は真理の探究につながると考えた。その考えは,イギリス経験認識論日常生活における様々な現象を原因と結果の関係において解釈しようとする科学主義的要素と相まって,全て実際に起きている現象を科学的な目で観察・認識しようとした。その真実の目と真理の探究が彼女をして,批判のみならず一歩進んで,自身の取るべき行為を導きだした。彼女の主張は急進的であり,伝統的な社会規範を覆すものであった為に,家族との対立,精神的危機状況を作り出したが,その状態を克服したときにナイチンゲールは人間としての強さを獲得し,自立へのプロセスを踏んだ。彼女の思想の背景には人間存在の問題として人格と生存権の問題があった。
著者
森川 千鶴子 岩江 美津子
出版者
広島文化学園大学
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.59-66, 2003-12

この症例報告は,重度の認知障害により日常生活の基本動作ができない高齢者が,入院という環境の変化に適応していく過程をまとめたものである。本研究の目的は,看護者が実践する基本的な生活援助が,痴呆性高齢者の行動や感情に与えた効果について明らかにすることである。対象は老年期痴呆の80歳代女性Yさんである。生活援助特に食事の摂取状況とアクティビティ活動から分析した。その結果,彼女は食事を分割する介助方法によって,自力摂取することが可能となった。また,塗り絵にも積極的に関わるようになった。彼女は入院によって家族から分離させられ,分離不安を起こしていたが,看護(介護)の援助を通して,彼女は家族の代理として,看護師や他のスタッフと良い人間関係を保つことができるようになった。基本的な生活援助の継続は,痴呆性高齢者に残されている可能性を引き出し,痴呆症の経過の遅延に影響を与えることがこの事例から明らかになった。(英文抄録:Present study described the process of environmental adaptation during the entering a hospital in the patient with severe cognitive disorder who unable to daily action alone. The purpose of this study is to examine the effect of basic nursing care on the daily activities and psychological status in demented elderly. The object of this study is a woman in 80-year-old with senile dementia and assessed using rating scales of ADL (Ability of Daily Life) and activities. As the result, it became possible that she took a meal herself by assistance method for dividing the meal, and it would be also engaged in activities such as a line drawing for coloring. Her psychological status became high anxiety when separated from her family. However, she could keep good human relations by humanistic nursing intervention. This study suggested that the continuation of the fundamental life leads to increased ADL and activities in the demented elderly.)
著者
松原 みゆき 佐々木 秀美 山下 典子 松井 英俊 岩本 由美 田村 和恵 小柳 芙美子 河野 寿美代
出版者
広島文化学園大学
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.18-23, 2004-03-27

成人看護学講座においては,初年度より看護教育及び看護の実践の場で広く適用されている,看護過程を取り入れた臨地実習を行っている。そこでは看護過程と看護技術を結び付けて学習することが必要である。看護過程の思考方法は,デューイの思考過程を看護過程に取り入れられたことに始まると言われている。そこで,平成15・16年度成人看護学臨地実習Iでは,デューイの反省的思考を取り入れ臨地実習を行い,その実施過程の報告を行った。実習方法は,原則として,土・日曜日を除き,病院での臨地実習を5日間,学内での実習(オリエンテーションと反省会を含む)5日間の内,3日間反省的思考を行う時間に当てた。その流れは,グループ毎に臨地実習を進める中で,看護過程を通して重要であると考えた看護技術を取り上げ,振り返る作業を行った。グループ毎に,なぜその技術を取り上げたのか理由を明確にして,事例を挙げて看護過程に沿ったレジュメを作成した。発表は,1グループ30分間で,実技を伴う発表と発表後学生や教員と質疑応答を行った。反省的思考を成人看護学臨地実習Iに取り入れることは,佐々木がデューイの『思考の方法』を手がかりに看護教育において「一つ一つの問題を綿密に考えていくようにしていくことが思考の訓練であり,それが学習である」と仮定している。さらに「経験をし,分析する思考態度の育成が良質の看護を提供することにつながる」ことを明確にしたい。
著者
平岡 敬子 ヒラオカ ケイコ
出版者
呉大学看護学部
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.7-12, 2006-03

パキスタン北西辺境州,ペシャワールの南西約35kmに位置するシャムシャトー難民キャンプには,現在8万人のアフガニスタン難民が生活しているが,医療施設はおろか医療従事者も皆無である。広島市のNGOを中心に同地域へ医療援助を行う上で,最も有効な援助プログラムを具体化するため,難民たちの健康を脅かしている問題を明らかにするため健康調査を行った。その結果,難民たちの90%以上が過去1年間に何らかの疾患にかかっていた。その多くは感染による発熱,慢性的咳嗽,上気道感染,マラリア,コレラ,腸チフス,下痢症であった。下痢,マラリアは小児に多く,頭痛は成人,とりわけ女性に多かった。難民たちは病気になった場合,年長者の助言を聞きながら家庭内で対処しており,保健に関する情報源は皆無に等しかった。難民たちは,感染症と母子保健の問題を健康課題としてあげており,医療サービス・医療情報の欠如,貧困や飢餓,水の汚染やごみ処理等の環境問題が心身共に自分たちの健康障害に著しい影響を与えていることを認識していた。彼らは,適切かつ迅速な処置によって簡単に治癒できる疾患や,プライマリヘルスケアの充実により予防可能な疾患に苦しんでいることから,人間が生きていくために最低限必要な保健医療設備の供給と,将来にわたってこの地で保健活動に従事できる人材の育成が必要不可欠である。
著者
久世 基文
出版者
広島文化学園大学
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.74-76, 2004-03-27
著者
高田 法子 平岡 敬子
出版者
広島文化学園大学
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.1-8, 2001-03-26

看護におけるユニフィケーションとは,看護サービスと教育ならびに研究の責任を一つの管理組織に所属させることを意味する。看護教育の大学化に伴い,教育と実践が乖離してきたと言われる今日,ユニフィケーションは,それを回避するのに有効なモデルである。しかし,ユニフィケーションは,コストや人材確保等の様々な課題を抱えているため実現するための課題は多い。本稿は,アメリカや日本で取り組まれているユニフィケーションモデルを複数の文献より検討したものである。その結果,本大学のような付属の実習施設をもたない大学でどのような取り組みが必要かを検討し,次の6つの結果を導いた。(1)共同研究の促進,(2)実習施設と大学との調整,(3)臨地実習での役割の明確化,(4)臨床スタッフの継続教育,(5)臨床スタッフの供給,(6)施設間の情報共有,である。