著者
芋川 浩 二松 沙耶菜 伊藤 みゆき
雑誌
福岡県立大学看護学研究紀要 (ISSN:13488104)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.25-34, 2018-03-31

ハチミツは近年甘味料としてだけなく、健康食品や医薬品としても利用されている上、ハチミツには高い抗菌効果があると言われている。そこで、本研究では、その純粋ハチミツの抗菌効果に注目して解析を行なった。そこで、安価な(中国産)純粋ハチミツ2種に加え、高価な(国産)純粋ハチミツ、および近年注目されているマヌカハチミツの4種類を用い、その濃度別抗菌効果の解析を行った。その結果、中国産および国産の両純粋ハチミツには全く阻止円が形成されなかったのに対し、マヌカハチミツでは抗生物質のカナマイシンよりも大きな阻止円が形成された。このことから、純粋ハチミツに必ずしも高い抗菌効果があるわけではなく、マヌカハチミツなど一部のハチミツにのみ高い抗菌効果があることが明らかとなった。この結果は、マヌカハチミツが抗生物質の代わりとしての民間医療や代替医療として使用できることを示している。また、純粋ハチミツだからといって、必ずしも抗菌効果があるわけではないことも明らかとなった。次に、マヌカハチミツをどのようにして看護や医療技術に応用できるかという研究を進めていきたい。
著者
芋川 浩 藤野 真璃花
出版者
福岡県立大学看護学部
雑誌
福岡県立大学看護学研究紀要 (ISSN:13488104)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-11, 2021-03-31

【緒言】日本は台風や地震など自然災害が多い。このような緊急災害時に、一般家庭にあるものを利用した応急処置法を検討開発するため、味噌の殺菌・抗菌効果に注目した。【方法】味噌は合わせ味噌を使用した。細菌は大腸菌と表皮ブドウ球菌を用いた。殺菌・抗菌効果の解析は、ディスク拡散法で行った。細菌培養は37℃、15~18時間で行い、阻止円の大きさを測定した。【結果】大腸菌に対して、味噌と2倍希釈味噌で42.5㎜、30㎜の阻止円が形成された。表皮ブドウ球菌では、味噌と2倍希釈味噌で17㎜、5.5㎜の阻止円が形成された。味噌と同濃度のNaCl溶液では阻止円は形成されなかった。【考察】味噌と2倍希釈味噌は、大腸菌や表皮ブドウ球菌に対して、阻止円を形成することから、明らかな殺菌・抗菌効果があった。しかし、阻止円の中に若干の細菌が観察されることもあることから、味噌の効果は抗菌・静菌効果と考えられる。また、本抗菌・静菌効果はNaClによるものではなかった。
著者
芋川 浩 上鶴 紗也
出版者
福岡県立大学看護学部
雑誌
福岡県立大学看護学研究紀要 (ISSN:13488104)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-8, 2023-03-31

【緒言】レモンには高い殺菌・抗菌効果がある。そこで、濃縮還元レモンであるポッカレモンとレモン果汁の効果について比較解析した。【方法】ポッカレモン、レモンはスーパーで購入した。細菌は表皮ブドウ球菌と大腸菌を使用した。殺菌抗菌効果判定には、ディスク拡散法(阻止円形成法)を利用した。【結果】表皮ブドウ球菌に対して、ポッカレモンでは15.8±2.59㎜、レモン果汁では13.3±2.05㎜の阻止円が形成された。大腸菌において、ポッカレモンでは12.3±2.86㎜、レモン果汁では11.3±2.49㎜の阻止円が形成された。【考察】表皮ブドウ球菌に対する阻止円形成では、ポッカレモンはレモン果汁の1.19倍、抗生物質の1.26倍の殺菌・抗菌効果を示した。大腸菌に対しては、ポッカレモンはレモン果汁の1.09倍の殺菌・抗菌効果を示した。これらの結果より、ポッカレモンは表皮ブドウ球菌および大腸菌に対し高い殺菌・抗菌効果を示し、災害時の簡易的な医療処置として使用できると期待できる。
著者
芋川 浩 今浪 愛里
雑誌
福岡県立大学看護学研究紀要 (ISSN:13488104)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.63-70, 2014-03-31

精油のリラクゼーション効果については数多くの研究がなされている。それに対し、精油における抗菌効果については、数少ない研究のみしかなされていないのが現状である。そこで、抗菌効果があるという「精油」に注目して、その抗菌効果について検討をおこなった。リラクゼーションや抗菌効果の両方をもつ精油を見つけることは医療技術の改善や向上などに役立つものと考え、その抗菌効果について解析してみた。その結果、検討した精油の中でティートリーとラベンダーに高い抗菌効果があることがわかった。特にティートリーは、大腸菌・表皮ブドウ球菌に対して抗菌効果を示した。それに対し、ラベンダーの抗菌効果は、ブドウ球菌に対しては、ティートリーと同程度の抗菌効果を持つが、大腸菌に対しては抗菌効果がないという細菌種特異性のあることも明らかとなった。このことから、精油を組み合わせることで、特定の細菌種に対して効率的な抗菌効果を上げることができるのではないかと期待している。
著者
櫟 直美 尾形 由起子 小野 順子 中村 美穂子 大場 美緒 吉田 麻美 猪狩 崇 平塚 淳子 田中 美樹 吉川 未桜 山下 清香
出版者
福岡県立大学看護学部
雑誌
福岡県立大学看護学研究紀要 (ISSN:13488104)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.13-23, 2022-03-31

「目的」本研究の目的はA県の3年間にわたる訪問看護ステーション連携強化の取組について意義と課題の整理を行い、今後の訪問看護ステーション連携について検討することを目的とした。「方法」A県の同意の得られたすべての訪問看護ステーション419か所に所属する訪問看護師3,750名を対象として無記名自記式質問紙調査を実施し、統計学的解析を行った。「結果」936名から回答を得た(有効回答率:25.0%)。交流会に参加して他のステーションと連携がしやすくなったのは37.1%だった。今後の必要性について、交流会を必要とする肯定群は936人中641人(68.5%)で、同行訪問研修を必要とする肯定群は936人中562人(60.0%)だった。しかし同行訪問研修の実際の参加率は16.8%にとどまり、参加の困難さがあった。医療介護福祉の連携意識は、年代と職位に有意な差があった。また交流会および同行訪問研修の必要性と連携意識に有意な差があった。在宅医との連携では、最も必要であると感じているが、連携の取りやすさでは困難さを感じていた。「考察」本研究結果では訪問看護ステーション間での連携の深まりを明らかにすることはできなかった。しかし交流会や同行訪問研修の必要性を感じている割合が高かったことから継続する意義はあると考えた。その意義として具体的には、連携上の課題が共有でき、医療的ケアの知識や技術が学べることや運営方法を知る機会となることである。また在宅医療推進のために在宅医との調整の積み重ねの必要性があり、コミュニケーションスキルを磨き、連携力を獲得していくための場への積極的参加の啓発と参加しやすい仕組みづくりが必要である。
著者
惠良 友彦 松枝 美智子 江上 千代美 増滿 誠
雑誌
福岡県立大学看護学研究紀要 (ISSN:13488104)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.5-15, 2020-03-31

【目的】抑うつ状態に対するアロマセラピーを用いた介入研究の現状を明らかにし、今後の研究課題を考察することを目的とした。【方法】研究デザインはマトリックス法を用いた文献研究である。医学中央雑誌Web版Ver.5を使用し、「原著論文」and「アロマ」and「抑うつ」or「うつ病」のキーワードで検索し、31件を対象とした。マトリックスの横軸には、研究デザイン、研究目的、抑うつ状態の評価尺度、施術者、施術方法など14項目を設定した。【結果】研究デザインは、実験研究が9%と少なく、研究目的は生理的・心理的効果の検討が全体の38%で最も多かった。抑うつ状態の評価尺度は、POMSまたはPOMS短縮版が全体の59%で最も多かった。研究対象者自身が施術者となりセルフケアを行った研究は13%と少なく、その場合の施術方法は一定していなかった。【考察】抑うつ状態の軽減を目的に、抑うつ状態の評価に特化した尺度を用いたシングルケースデザインやランダム化比較試験等エビデンスレベルの高い研究の必要性が示唆された。また、うつ病の発症や再発予防を視野に入れた、アロマセラピーによるセルフケア方法の確立が必要だと考える。
著者
山口 のり子 福岡 洋子 中村 美穂子 猪狩 崇 尾形 由起子
出版者
福岡県立大学看護学部
雑誌
福岡県立大学看護学研究紀要 (ISSN:13488104)
巻号頁・発行日
no.18, pp.21-26, 2021-03-31

在宅医療推進のための官民学協働を基盤とした多職種連携・協働で取り組んだ、『ケア・カフェ』の効果を明確にした。 研究協力者は、ケア・カフェの企画及び実践を行っている地域の保健・福祉・医療関係者の多職種(薬剤師、理学療法士、管理栄養士、主任介護支援専門員、看護師、保健師)とした。方法は、半構造化面接(FGI)を行い、質的に分析した。 結果は、官民学の多職種連携・協働による「ケア・カフェ」の効果として、[ケア・カフェによる多職種連携の士気の高まり][官民学の役割認識の高まり][多職種の主体性の高まり][住民に寄り添う各種専門職の専門性の向上][多職種が「死生観」を培う][地域への発信力向上の必要性の認知]の7つのカテゴリーが抽出された。 多職種連携を推進するためには、地域の中でカフェのようなリラックスした雰囲気で多くの職種との対話ができる場の確保や、多職種と行政・大学等が協働し活動基盤を築くこと、多職種で「死生観」について考える機会を持つこと、住民参加を進めること、多職種連携の現状を地域へ発信する力を高めることに効果があることが示唆された。
著者
芋川 浩
雑誌
福岡県立大学看護学研究紀要 (ISSN:13488104)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.34-39, 2010-03-31

近年高齢化社会を迎えつつある日本において,医療施設や介護施設以外での医療や介護を必要とすることは多くなりつつあるように思われる.その際,医療・介護施設での専門従事者が行う場合とは異なり,医療・介護と全く関係のない職種経験者が自宅などで自分自身もしくは家族により医療行為が行われることが必要となってくると思われる.特に,高度な医療技術が必要とされる場合のみ病院など専門施設での医療行為が行われ,比較的簡単なものは自宅などで専門職以外の人が簡易医療行為を行うというようなすみ分け的な分担もなされつつある.たとえば,簡易な血統測定やそれに伴う注射穿刺と前処理としてのエタノール綿による消毒(disinfection)などがその一例として挙げられよう。しかし,高齢者は免疫機能が衰えているため,通常では問題にならない細菌などに対しても十分な注意が必要な場合も多く,簡単な注射穿刺や怪我に対しても適切な消毒を施すことが必要である.現在,簡易の消毒として,70%エタノール綿がよく用いられているが,エタノールに過敏な方やアトピー性皮膚炎の患者のようにエタノールなど有機溶媒の使用に注意が必要な人も多く存在する.そこで,本研究では,高齢者でも比較的容易に手に入れられ,抵抗なく利用できる消毒剤の候補の検討をおこなった.その際,高齢者が自宅でも容易に行えることも重要な検討条件とし,本研究では,70%エタノール綿に代わるものとして,これまでに殺菌効果(microbiocidal efficacy)があると言われている「食酢」を検討することとした.各濃度の酢を準備し,各濃度での「食酢綿」の消毒効果(disinfectant efficacy)を70%エタノール綿の消毒効果と比較しながら検討した.その結果,「100%原液食酢綿」でも70%エタノール綿(98.9%)と同程度の消毒効果があることがわかった.食酢は食べることもできるものであり,スーパーなどでも簡単に手に入るうえ,薬などの使用に抵抗を示す高齢者にも受け入れやすいものであるため,在宅での日常および緊急の消毒に簡易に使われうる有用なものであると思われる.
著者
芋川 浩 今浪 愛里
雑誌
福岡県立大学看護学研究紀要 (ISSN:13488104)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.63-70, 2014-03-31

精油のリラクゼーション効果については数多くの研究がなされている。それに対し、精油における抗菌効果については、数少ない研究のみしかなされていないのが現状である。そこで、抗菌効果があるという「精油」に注目して、その抗菌効果について検討をおこなった。リラクゼーションや抗菌効果の両方をもつ精油を見つけることは医療技術の改善や向上などに役立つものと考え、その抗菌効果について解析してみた。その結果、検討した精油の中でティートリーとラベンダーに高い抗菌効果があることがわかった。特にティートリーは、大腸菌・表皮ブドウ球菌に対して抗菌効果を示した。それに対し、ラベンダーの抗菌効果は、ブドウ球菌に対しては、ティートリーと同程度の抗菌効果を持つが、大腸菌に対しては抗菌効果がないという細菌種特異性のあることも明らかとなった。このことから、精油を組み合わせることで、特定の細菌種に対して効率的な抗菌効果を上げることができるのではないかと期待している。
著者
清原 智佳子 梶原 由紀子 尾形 由起子 小野 順子 田中 美樹 石村 美由紀 江上 千代美
雑誌
福岡県立大学看護学研究紀要 (ISSN:13488104)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.47--53, 2018-03-31

目的:効果的な子育て技術を習得することを目的に発達障がいの子どもをもつ12名の親を対象にステッピングストーンズトリプルPの介入を行い親のストレスの変化、子育て技術の役立ち頻度、終了後の受講者満足度について調査を行った。方法:受講前後のDASS、25の子育て技術の質問紙、受講者満足度の質問紙の調査を行った。DASSはWilcoxon符号順位検定を行った。結果:対象者12名のDASSの受講前後の評価の結果はDASS総点において改善をみとめた(P<.05)。技術総点(6.47±.08)であり、すべての技術を使用していた。満足度は総点(5.82±1.0)であり、満足感があったと推測できる。考察:トリプルP受講前と比較し、トリプルP受講後は子育て技術の知識が増え、技術を使って子育てを行ったことで、親の抑うつ状態は軽減した。
著者
中本 亮 石田 智恵美
雑誌
福岡県立大学看護学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.13, pp.67-74, 2016-03-31

本研究の目的は,自己調整学習を導入した授業を経験した学生の授業前後の自己効力感の変化と自由記述との関連に着目し,自己効力感の違いによる特徴について質的データを量的に探索することである.A 看護専門学校の2年生43名を対象として,授業前後に実施した自己効力感への回答と授業後の自由記述(学習への取り組み方)との関連性を分析した.授業前後の自己効力感の平均値の変化は,『下降群』,『微増群』,『上昇群』の3群に分類され,『下降群』は13名(34.2%),『微増群』は14名(36.8%),『上昇群』は11名(28.9%)であった.自己効力感の変化と自由記述との関係を見るために,自由記述をテキストマイニングし,抽出語をコレスポンデンス分析した.プロット図では,『下降群』周囲に【反省】・【達成】・【取り組み】・【話し合う】などが布置され,前後の文脈から自己の学習態度や取り組みの反省を行い,次の学習行動をどうすべきかを考えている傾向が伺えた.また,『微増群』の周囲には【今】・【教科書】・【話し合い】などが布置されたが,文脈による特徴は見出せなかった.一方,『上昇群』の周囲には,【深める】・【多い】・【出す】・【考える】などが布置され,文脈から「できた」という遂行行動の達成を感じている傾向が伺えた.自己効力感はその時点での個人の主観的な感情であるため,学習状況について経時的に見ていくことが必要であり,自己効力感の下降した学生には周囲とのコミュニケーションや学習課題の関連付けに支援が必要である.