著者
平田 美紀 流郷 千幸 鈴木 美佐 古株 ひろみ 松倉 とよみ ヒラタ ミキ リュウゴ チユキ スズキ ミサ コカブ ヒロミ マツクラ トヨミ Hirata Miki Ryugo Chiyuki Suzuki Misa Kokabu Hiromi Matsukura Toyomi
雑誌
聖泉看護学研究 = Seisen journal of nursing studies
巻号頁・発行日
vol.2, pp.51-57, 2013-04

背景 子どもの権利条約において親からの分離の禁止"が謳われているが,子どもの採血場面では親が付き添う施設は少ない現状である.採血場面に親が付き添い親の助けを受けた子どもは,安心を得ることができ,親の支援を受けながら自分なりの方法で採血に立ち向かうことができる.しかし,これらはほとんどが幼児後期の子どもが対象であり,親の存在の意義が大きい幼児前期の子どもを対象とした研究は少ない.目的 幼児前期の子どもの採血場面に,母親が付き添った場合の子どもの対処行動を明らかにすることを目的とする.方法 幼児前期の子どもに,母親が付き添った場合の行動をビデオ撮影し,採血終了後,母親へ半構成的面接を行った.結果 採血前は【緊張を高める】,【周囲を確認する】,【抵抗する】,【誘導に従う】,【安心を求める】,【覚悟する】の6カテゴリーと10サブカテゴリー,採血中は【緊張の持続】,【苦痛を表現する】,【誘導に従う】,【終了を予測する】,【安心を求める】,【進行を確認する】の6カテゴリーと11サブカテゴリー,採血後は【終了を確認する】,【緊張がとける】,【満足感を得る】の3カテゴリーと7サブカテゴリーが抽出された.結論 母親が付き添った場合の幼児前期の子どもの対処行動は,採血の経過をイメージすることができないため,母親が主体的に身体的接触を持ち,具体的な対処行動を示すことで見通しを得ることができる.また母親からの賞賛は,子どもの採血に対する緊張感を早期に解くことができる.
著者
原田 小夜 宮脇 宏司
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉看護学研究 = Seisen journal of nursing studies (ISSN:21871981)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.9-17, 2013

背景 施設職員のストレスが高いことが指摘されている.高齢者介護施設では,認知症ケア施設のユニット化,障害者自立支援法の施行による障害者支援施設職員の勤務環境が変化した.高齢者介護施設の介護職のストレスに関する報告はあるものの,障害者支援施設職員を対象とした研究や施設職員全体のストレス,抑うつに関する報告は見られない.目的 障害者支援施設,特別養護老人ホーム,認知症ユニットケア施設職員の異なった施設環境にある施設職員を対象とし,抑うつ・ストレス状態と関連要因を明らかにすることである.方法 特別養護老人ホーム,認知症ユニットケア施設職員,障害者支援施設,272人を対象として,Zungの自己評価式抑うつ尺度(Self-rating depression scale 以下SDS)を用いた.本調査の信頼性係数(α係数)は0.82であった.また,職場のストレス判定には,原谷(1998)のNOIOSH(National Institute for Occupational Safety and Health)職業性ストレス簡易調査票を用いた. 調査項目毎のSDS平均値の差にはWelchのt検定,一元配置分散分析を実施し,多重比較分析は,Tukey-kramer検定を実施した.SDSは40点をカットオフポイントとし,40点未満を健康群,40 ~ 49点を軽度抑うつ,50点以上を中等度以上の抑うつと判定した.抑うつと関連要因の比較においては,健康,軽度抑うつ,中等度以上の3群に分け,カイ二乗検定を行った.職業性ストレス簡易調査票は,リスクA,B,Tを職場別,職種別に算出し,比較した.結果 回収数は,184人(回収率74.8%)で,SDS及び職業性ストレス簡易調査票のデータに欠損の無かった169人(有効回答率62.1%)を分析対象とした.SDSの平均値は,42.1(SD=9.1)で,軽度抑うつ以上が,55.0%と抑うつの割合が高かった.抑うつ状態には,年齢,職種,仕事の満足度,相談者の有無が関連していた.職業性ストレス評価の総合健康リスク値では,従来型特別養護老人ホームが129,障害者支援施設が124で高く,職種別では介護職,役職者が高かった.考察 介護施設は他の事業場よりも抑うつ傾向にあることが推察された.また,施設によって,職業性ストレスに違いが見られ,各施設の環境に合わせたラインケアの体制づくりが必要である.若い介護職と役職者の抑うつやストレスが高い傾向にあり,ハイリスク群であると考えられ,相談支援体制を強化する必要がある.結語 施設に合わせた相談支援システムとハイリスク群への介入の必要性が示唆された.
著者
桶河 華代 田村 恵 上野 範子 オエガワ カヨ タムラ メグミ ウエノ ノリコ Okegawa Kayo Tamura Megumi Ueno Noriko
雑誌
聖泉看護学研究 = Seisen journal of nursing studies
巻号頁・発行日
vol.1, pp.53-61, 2012-04

背景 近年, 看護職において, 長く働き続けられる環境づくりを進めるために, ワーク・ライフ・バランスの実現に向けての取り組みが行なわれている. 目的 A県における訪問看護ステーションのオンコール体制の実態を明らかにし, ワーク・ライフ・バランスを検討するための基礎的資料とすることを目的とした. 方法 A県にある70か所の訪問看護ステーションの管理者宛てに, 無記名自記式質問紙調査を送付し, 39か所 (55.7%) から有効回答を得た. 結果 A県にある39か所のステーションにおける1事業所当たりの平均看護師数は6.0±5.6人であり, 全国平均の4.2人と比べると多く, 規模別においては, 中規模事業所が77%を占めていた. 24時間対応体制加算は, 34か所 (87%) が取られているが, オンコール体制に関する規約や手当がない事業所もあった. また, オンコール体制はほとんどが常勤職員で担っており, 管理者の待機日数は, 大規模事業所に比べて小規模および中規模事業所の方が多かった. 考察 オンコール体制が, 在宅看護の重要な機能として捉えている一方で, 訪問看護師の高い離職率や人材確保の難しさの一因となっていることが考えられた. 今後は, 法的根拠に基づいた規約の整備が望まれる. また, 管理者個人が意識化し, 個々のステーションでワーク・ライフ・バランスの取り組みが必要である. 結論 オンコール体制のあり方や職員への指導等を考える資料を得ることができたので, 待機手当のないステーションに手当を提案し, 継続した調査を行う.
著者
田原 育恵 堀内 美由紀 安田 千寿 筒井 裕子 太田 節子 タハラ イクエ ホリウチ ミユキ ヤスダ チズ ツツイ サチコ オオタ セツコ Tahara Ikue Horiuchi Miyuki Yasuda Chizu Tsutsui Sachiko Ota Setsuko
雑誌
聖泉看護学研究 = Seisen journal of nursing studies
巻号頁・発行日
vol.2, pp.59-67, 2013-04

背景 近年,要介護状態の後期高齢者は急増し,施設利用を自ら選択する意向もみられる.しかし 高齢者にとって施設入所による環境変化は,重大なリスクにつながる.目的 介護老人福祉施設入所による後期高齢者の生活環境変化に適応するための要因を明らかにする.方法 同意が得られた介護老人福祉施設に入所8カ月の94歳の対象Cさんに,インタビュー調査を行った.そして逐語録を作成した後,KJ法の手法を用いて質的に分析した.結果・考察 KJ法の結果66個のラベルが取り出され,ラベルは20個の島に分類された.またこれらの島から11個の表札を抽出した.これらの分析より,生活環境への適応状態には【生活の知恵や判断力に基づいて対処行動がとれる】【自分の居場所が決められる】【職員のケアが適切である】【静かで自然を感じる環境がある】【家族が支えになっている】の5つの要因が関連していることが明らかになった.結論 介護老人福祉施設入所による後期高齢者の生活環境への適応状態を質的に分析した結果, 5つの適応要因の関連が明らかになった.
著者
井上 美代江 太田 節子
出版者
聖泉大学
雑誌
聖泉看護学研究 = Seisen journal of nursing studies (ISSN:21871981)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.41-49, 2013

背景 看護基礎教育カリキュラムの改正が行われ,老年看護学では,学生が高齢者及びその生活機能を理解し,高齢者への看護実践能力を高める指導が求められている.そこで,学生が高齢者と関わる時間や生活援助の機会が多いと思われる生活の場としての「介護老人福祉施設」で,学生が高齢者と関わる過程を分析することで,実習指導の示唆を得たいと考えた.目的 介護老人福祉施設における老年看護学実習で,学生の要介護高齢者への援助過程における着眼点を明らかにする.方法 研究デザインは,質的帰納的研究である.対象は,研究に同意の得られた介護老人福祉施設で老年看護学実習を行った学生6(男子1)名である.データ収集は,高齢者に関わる学生を参加観察(観察者として)し,実習終了後に半構成質問紙による面接を行った.分析は,参加観察と面接および学生の実習記録を統合して行った.結果 得られたデータは,学生6名が高齢者8名に関わった38場面であった.実習経過では,初日の学生は,高齢者との関わりに戸惑い,その関わりを模索していた.3日目は,記録や教職員の助言等を参考に,高齢者の看護ニードを把握し援助した.最終日は,学生が主体的に高齢者の自立を支援した.これらの援助過程には,学生が高齢者への援助の関わりに着眼した視点があり,その類型を分類したところ,1)高齢者の残存機能に働きかける,2)高齢者との人間関係を重視する,3)高齢者の生活行動を重視する,4)高齢者の健康的な反応を引き出す,5)高齢者の感情を重視する,の5類型が抽出された.結論 学生が高齢者を援助する着眼点は,5類型が認められた.指導者は,抽出された学生の高齢者への援助の類型を活用して,教育的支援を行うことが重要と考える.Background Following revisions of the curricula for basic nursing education,students in geriatric nursing receive instruction on understanding elderly individuals and their daily functioning,and enhancing their nursing skills when working with them.And we sought to determine which suggestions are necessary for practicum instruction by analyzing the processes of students when interacting with elderly care recipients at a nursing home in geriatric nursing practicum. Purpose To explore the opinions of nursing of students interacting with elderly care recipients at a nursing home in a geriatric nursing practicum. Methods This study employed a qualitative and inductive study design.Participants were six students (one male) who consented to participate and who were completing their geriatric nursing practicum at a nursing home for the elderly. Data were collected through participatory observations of the students interacting with the elderly care recipients and semi-structured interviews after practicum completion.For analysis,we created transcripts by integrating materials from the observations,interviews,and practicum records. Results/Discussion We obtained data from 38 scenes where the six students interacted with eight care recipients.In terms of processes,on the first day they tended to be confused and struggled in their interactions with the individuals. On Day 3,they were likely to look at records and seek advice from their instructors,and attempted to understand the nursing needs of the care recipients and assist them.On the final day of their practicum,the students were actively supporting the independence of the care recipients.In the processes of assistance,we extracted five categories of particular perspectives the students had while assisting the care recipients :( 1) working on the care recipients' remaining functions,(2) emphasizing interpersonal relationships with them,(3) emphasizing their daily living behaviors,(4) eliciting healthy reactions from them,and (5) valuing their feelings. Conclusion There were five categories of the student opinions of nursing for elderly.We suggest that instructors utilize these categories in their provision of educational support.