著者
佐野 仁美 Hitomi SANO 聖隷クリストファー大学介護福祉専門学校 Seirei Christopher University College of Care Work
雑誌
聖隷クリストファー大学社会福祉学部紀要 = Bulletin of the School of Social Work Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
no.19, pp.89-93, 2021-03-31

資料福祉・介護福祉の科学的な根拠ある実践のためには、課題解決思考と支援技術が必要である。一つとして同じ支援場面はなく、専門性を修得するプロセスは個々の環境や経験の違いの影響を受けるものであることがわかる。先行研究のキーワードを軸にして、福祉・介護福祉の専門性の修得に関わる経験の整理を試みた。領域に共通する特徴(繰り返し実践、他者や利用者との関わりから得るものがある、自ら自分の経験や体験を振り返り言語化する、その過程が福祉専門職の実践である)等の整理ができたが、多様な人材で担われる福祉現場での専門性の確立に向けた実践や、世間一般の方の福祉・介護福祉の専門性の理解促進のためには、更なる"専門性の見える化"が必要である
著者
村上 武敏
雑誌
聖隷クリストファー大学社会福祉学部紀要 = Bulletin of the School of Social Work Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-21, 2020-03-31

特に1990 年代以降の医療制度改革により、MSW は必然的に退院援助業務に傾斜してきた。それは医療機関の組織的活動として位置づけられるようになり、MSW は政策的にも医療機関からも期待される活動を担いうる存在となったが、援助過程において効率性を求められるその業務にあって、しかも一貫した長期の援助を展開しにくい環境にあって、MSW の社会科学的な対象認識は希薄になりつつあるように感じられるのである。 本研究では、この1990 年代以降におけるMSW の対象認識の特徴を捉えるために、MSW による実践報告および調査報告、論文等について、1980 年から2014 年までの35 年間を分析した。 意思決定支援に対する関心が高く、さらに退院援助システムなど連携体制構築においても医療福祉固有の対象認識をうかがわせるような記述はなく、「患者一般」という対象像が垣間見える。MSWに求められてきた社会階層的な対象認識は希薄になり、生活問題を社会問題として捉えて解決に向かう実践の志向性は弱くなっている様子がうかがえた。医療福祉が社会科学的な対象認識を失うならば、医療福祉の社会的意義もまた失われることになる。時代に合わせて変化するMSW の存在形態とともに、変化を否定する医療福祉の本質部分を確認する作業となった。
著者
佐藤 順子 Junko SATO 聖隷クリストファー大学 Seirei Christopher University
雑誌
聖隷クリストファー大学社会福祉学部紀要 = Bulletin of the School of Social Work Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-10, 2021-03-31

論文地域福祉を外的に規定する自治制として、2000 年代のコミュニティ政策と、その中核をなす国や地方自治体をあげて促進されたコミュニティ制度化やそれを伴う自治体内分権を取り上げ、先行研究をもとにコミュニティ政策に対する評価と課題、及び2010 年代中盤におけるコミュニティ制度化とそれを伴う自治体内分権の実態について述べた。特にコミュニティ政策に対する評価として、それには両義性があり、行政によるコミュニティの包摂化、行政管理型の住民自治などになる懸念がある一方、住民が統治に参画する、自治やデモクラシーを促進する可能性も指摘されていることを示した。そして、前者=マイナス面を後者=プラス面に転化するための条件・課題として、コミュニティ組織設立のプロセスにおける地域住民との時間をかけた熟議、決定権限の委譲、協働(公共サービスの提供)機能より参加(公共的意思決定)機能≒協議機能を重視すること、政治的・財政的な自律性を担保すること、行政とは別の評価システム、コミュニティ自治の支援システムを構築すること、と整理した。 全国的な調査結果からは、今般のコミュニティ政策が住民自治促進には必ずしも直結するとはいえないことが明らかとなった。
著者
杉山 せつ子
雑誌
聖隷クリストファー大学社会福祉学部紀要 = Bulletin of the School of Social Work Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
vol.11, pp.65-77, 2013-03-31

1987年社会福祉及び介護福祉士法が制定されて25年が経過したが、いまだ介護福祉の概念は一般化されていない。 介護福祉の概念に関しての先行研究としては、「共同的な意味世界を共有」,「身辺の援助,世話」,「ADL(日常生活動作)と表裏一体の関係」,「社会で自立したその人らしい生活」,「社会福祉的な視点」,「自己実現をめざす実践」などの用語を用い議論がなされているが介護福祉の概念を介護過程の視点から論じているものはなかった。 そこで、本研究では、26年間の介護過程の研究・介護福祉教育の経験と介護福祉士の法制度をふまえて、介護福祉の概念を介護過程の視点から考察することを目的に研究を行った。結果、10項目を明らかにすることができた。
著者
横尾 惠美子
雑誌
聖隷クリストファー大学社会福祉学部紀要 = Bulletin of the School of Social Work Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-10, 2016-03-31

本研究では地域包括支援センターを研究対象機関とし、そこに勤務する介護支援専門員を対象に支援している要介護(要支援)高齢者の権利擁護の実態と介護支援専門員の成年後見制度や市民後見人の利用実態や制度活用に対する考え方を解析し、成年後見制度が地域包括ケアシステムの一翼を担うための課題と展望について提言することにある。 成年後見制度等の利用支援を積極的に行う職員もいる一方、制度利用に消極的な介護支援専門員がいることが判明した。その要因のひとつは忙し過ぎるということであるが、制度の理解が十分でないことや制度を利用する際の手続き等が難しいと感じていることと相関があり、忙しさと制度理解不足も関連していることが判明した。 市民後見の導入も急務であるが、同時に成年後見制度の利用につなげていく要である地域包括支援センターの職員の制度に関する理解の促進のための研修と支援につなげるための連携体制の整備もこれからの課題である。
著者
佐藤 順子
雑誌
聖隷クリストファー大学社会福祉学部紀要 = Bulletin of the School of Social Work Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
no.18, pp.23-31, 2020-03-31

研究ノート本稿は、社協による地区社協等づくりが果たしてきた歴史的役割を正しく評価することを目的に取り組んできた研究の第三報であり、社会福祉基礎構造改革以降2010 年代半ばまでの社会福祉政策、地域福祉政策と社会福祉協議会及び地区社協の位置づけについてまとめたものである。 2000 年代初頭に行われた社会福祉基礎構造改革により、社会保障の縮小が促進され、互助・共助の強化が公助を補完するものとして期待されるようになった。こうした中、あらためて社協の役割が内外で検討された結果、80 年代から90 年代にかけて軽視されてきた地区社協等が、地域におけるつながりづくりや住民主体のインフォーマルサービス開発などを実現するものとして再評価され、その推進が一層求められるようになった。もとより、社協の地区社協等づくりは政策側からの期待に応えるために取り組まれてきたわけではなく、社協創設以来、住民主体の地域福祉の実現のために取り組まれ、その結果生み出された諸活動がインフォーマルサービスとして地域の中で資源化してきたと考えるべきであり、2006 年、2008 年に提出された地域の福祉力や小地域福祉活動の活性化に関する調査報告で示された方針は、社協による地区社協等支援において基盤とすべきものとして重要である。 またこの間の社会福祉、地域福祉政策においては、コミュニティ政策の影響も認められ、地区社協以外の地域福祉推進基礎組織、社協以外の支援機関が出現するなど、この面でも多元化がみられる。そうした中、社協の専門性、相対的独自性を明らかにし、住民がイニシアティヴをもって活動を展開し、自治体統治に参画する、という側面を重視し、多様な地域福祉推進基礎組織に対して支援していくことがますます求められる。