著者
安部井 誠人 冨永 達郎 池田 和穂 丸山 常彦 小田 竜也 轟 健 正田 純一 松崎 靖司 田中 直見
出版者
Japan Biliary Association
雑誌
胆道 = Journal of Japan Biliary Association (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.73-78, 2002-03-25
参考文献数
20
被引用文献数
1

症例は85歳, 女性. 発熱と右悸肋部痛のため, 本院に緊急入院となった. 腹部超音波およびCT検査にて,胆嚢は15mmを越える大胆石6個以上の充満と胆嚢管への嵌頓が認められ,急性胆嚢炎と診断された.洞不全症候群,糖尿病,糖尿病性腎症,慢性気管支炎等,複数の重度合併症を持つ高齢者であり,手術には危険が予想されたこと,石灰化のないコレステロール石であること,PTGBDチューブが挿入され胆嚢炎が軽快したこと等の理由より,胆嚢結石の治療としてMTBEによる直接溶解療法を試みた.その結果,計28時間の治療により完全溶解が得られた.MTBE直接溶解療法は,手術リスクの高い急性胆嚢炎合併コレステロール石例に対して,PTGBDによる炎症改善後に考慮すべき治療法と考えられた.
著者
猪股 正秋 照井 虎彦 遠藤 昌樹
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 = Journal of Japan Biliary Association (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.448-457, 2005-10-31

内視鏡的十二指腸乳頭括約筋切開術(EST)における切開方向は11時から12時の間とする. 出力波形は原則的に切開波を選択する. 通電は断続的に行い, 切開線周囲の凝固層の幅をコントロールしながら切開するイメージを持つ. ハチマキ襞付近までは膵管口へのダメージの防止を優先し, 凝固層の範囲を最小限にとどめる. このためには, 比較的迅速な切開が必要である.ハチマキ襞より口側への切開では径の太い動脈枝の存在する可能性に配慮し, 十分な幅の凝固層を形成させつつゆっくりと切開する.切開の過程で最も注意すべきなのは「メスが走る」事態である.「メスが走る」のを避けるには, いつでも切開線の伸張を止められる態勢を整えておくことに加え, 切開が通電開始後可及的すみやかに始まることが重要である.切開線の伸張をいつでも止められるようにするには, 必要以上のブレードの張りや過度の押しつけは禁忌である.さらに, 連続的な通電・切開は行わないことが大切である.切開が通電開始後すみやかに始まるようにするには, (1)漏電を回避すること, (2)ブレードと組織の接触面積を極力小さくすること, (3)「Counter traction」を意識的に活用することの3点を意識することがポイントとなる.
著者
新本 修一 林 泰生 土山 智邦 小林 泰三 片山 寛次 広瀬 和郎 山口 明夫 中川原 儀三
出版者
Japan Biliary Association
雑誌
胆道 = Journal of Japan Biliary Association (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.245-252, 1996-07-25
参考文献数
13

悪性胆道閉塞26例にstentによる27回の内瘻化を施行した.使用stentは12Frのtube stentと,expandable metallic stentのうちZ-stent,Strecker stent,Wallstentである.Wallstentは肝内胆管から総胆管まで屈曲した走向でのstent,胆管と十二指腸の間のstent,Z-stent閉塞に対するstent in stentに使用した.stentの種類と留置場所により再閉塞や感染等の成績を比較した.24例(88.9%)で外瘻tubeを抜去でき,22例(91.7%)が退院できた.8例が1~24カ月間無黄疸で生存中で,9例が2~15カ月後に無黄疸で原病死した.再閉塞や感染は7例(29.2%)に認められ,胆管と消化管との間のstentに多く認められた.stentの種類別では,tube stentの50%とStreckerの33.3%に認めWallstentでは11.1%と有意に少なかった.悪性胆道閉塞の内瘻化に,屈曲した走向での留置や下部胆管閉塞の内瘻化にも適応でき再閉塞や感染が少ないWallstentは有用と思われた.