著者
鯵坂 学 上野 淳子 堤 圭史郎 丸山 真央
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.1-78, 2013-05

日本の大都市では,1990年代後半から都心部の人口が減少から増加に転じる「都心回帰」現象が起きている。本研究では,2つの方向から人口の都心回帰が大都市の都心コミュニティにもたらす変化を探った。(1)既存研究が少ない札幌市,福岡市,名古屋市を対象として,自治体等へのイン タビュー調査と行政資料の分析を行った。その結果,3都市ともに都心回帰を経験しているが都心回帰の担い手や都心を取り巻く状況は異なることが明らかになった。都市自治体の対応は都市計画分野に限定されており,都心コミュニティの再編に直接対応する制度がないため,地域住民組織は対応に苦慮している。(2)札幌市と福岡市に絞った都心マンション住民へのアンケート調査からは,東京や大阪における都心回帰の担い手と相違点が示された。また,マンション内外の付き合い方は住居の所有形態,世帯構成,年齢による違いが大きいとともに,都心による違いがあることが分かった。
著者
鯵坂 学 アジサカ マナブ Ajisaka Manabu
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.101, pp.85-135, 2012-06-15

資料(Material)日本の近代化の中で明治以降、農山漁村や地方小都市から都市への大量の移住が生じ、その多くの移住者は大都市圏や太平洋ベルト地帯の都市、最寄りの地方大都市に移り住んだ。戦前期には、これら都市に移住した人々は、移住した都市における就労や住居の確保、生活面での情報や援助を得るために家族や親族のネットワークを利用するとともに、同郷的な「つて」を頼って、厳しい都市での生活を生き抜いていった。戦後も、農山漁村からの多くの移住者は都市に定住していったが、都市での就業や住居の確保、配偶者の紹介、厳しい都市生活の中での安らぎや親睦、アイデンティティを得るために、同郷であることを契機として様々な同郷団体・同郷会を形成していった。本稿では、筆者が1995年~1997年に全国の市区町村の役場・役所に対しておこなった全国市区町村調査により析出された1,890の「同郷団体」について公表し、都市-農村関係におけるその歴史的な普遍性を明らかにすることを目的とする。In the process of Japan's urbanization caused by industrialization and modernization since the 1880's, large amounts of the population moved from rural areas to the cities. Focal points of migration are the three metropolitan areas of Tokyo, Keihanshin (Kyoto, Osaka, Kobe) and Nagoya, as well as local prefectural capitals. People from the lower middle class and the lower class, especially people from villages created communities of people from the same hometown (Hometown- Based Associations, called "Dokyo-Kai" in Japanese) that helped and supported one another. I found 1890 hometown-based associations at the end of 20 century in my research. The majority of those were connected to rural areas such as Hokkaido, Tohoku, Hokuriku, Sannin, South-Shikoku , South-Kyushu and Okinawa.
著者
山村 りつ
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.81-96, 2010-09

論文(Article)障害者自立支援法や障害者雇用率への算定など、精神障害者の就労と就労支援を取り巻く環境が大きく変化している。これらの制度上の改革は、多くの課題をもつ一方で、精神障害者の就労支援実践におけるさまざまな変化や活発化の一つのきっかけとなっている。それでは実際の精神障害者の就労・雇用の状況には、どのような変化が起きているのであろうか、実際に精神障害者の就労は増えているのか。本稿ではそれを明らかにするために政府統計を中心とした統計データの検討と考察を行っている。Employment of parson with psychiatric disabilities and its environment have changed recently, for example, the enforcement of "Services and Supports for Persons with Disabilities Act" or the start of applying the employment rate rule to person with psychiatric disabilities. Those changes have some problems, however, it trigger to gather attention for job support for person with disabilities, and to lead the changes and activation in that field. And then, what kinds of changes have been occurred in actual status of employment of person with psychiatric disabilities? As the most direct interest, have the number of employment of them increased? This question is the background of this study, and this article describes that investigation and consideration of government statistics about employment of parson with disabilities.