著者
川久保 槙人 菊地 昌弥 北林 真帆 久野 竜之介 松山 玲美
出版者
東京農業大学農業経済学会
雑誌
農村研究 = Journal of rural community studies (ISSN:03888533)
巻号頁・発行日
no.130, pp.25-37, 2020-03

本研究は,農林水産物・食品の輸出において特に苦戦している重点品目の「コメ・コメ加工品」のうち,主要品目となっている日本酒を対象に,第2位の輸出先国・地域である韓国向けの輸出拡大に寄与する清酒製造企業の企業行動を初めて具体的に解明した。課題の解明にあたり,本研究では市場構造と企業行動の枠組みからケーススタディを行なった。統計資料の分析の結果,対象とした韓国市場では低価格戦略が機能する構造にあった。ゆえに,本稿では規模の経済性の観点に主に焦点を当て,企業行動に関する調査および考察を行なった。その結果,規模の不経済を回避するための方策と原料費を低位に安定させるための企業行動(方策)を講じており,これらは低価格化や値下げ等の低価格戦略を成立させるための要素となっていた。なお,本研究は国・地域別の輸出戦略を検討する際に不可欠な市場構造の分析に関する新たな視座を提示した点にも意義を有している。
著者
岩本 博幸
出版者
東京農業大学農業経済学会
雑誌
農村研究 = Journal of rural community studies (ISSN:03888533)
巻号頁・発行日
no.121, pp.1-12, 2015-09

本稿の課題は,フェアトレード認証紅茶を事例として,フェアトレード認証表示に対する消費者評価を定量的に明らかにし,回答者属性が消費者評価に与える影響を明らかにすることである。主たる分析結果は以下の点である。第1に,フェアトレード認証紅茶に対して支払意志がある回答者の消費者評価額は平均WTPで44円(12.6%)増の394円となった。第2に,紅茶専門店で茶葉の種類を明記した紅茶を購入する回答者,フェアトレード商品購入経験者,ボランティア活動に積極的な回答者,震災復興支援目的の購買経験者のWTPが高くなる傾向がある。第3に,FLOが定める基準のうち,「学校や病院建設など社会発展への貢献」「児童労働の禁止など労働環境の改善」「農薬使用,水質・土壌保全など生産地の環境保全」について,AHP評価ウェイトを求めた結果,「児童労働の禁止など労働環境の改善」の重要度が最も高いことが示された。
著者
堀部 篤
出版者
東京農業大学農業経済学会
雑誌
農村研究 = Journal of rural community studies (ISSN:03888533)
巻号頁・発行日
no.118, pp.16-28, 2014-03

本稿では,2009年の農地法改正後における農業参入法人等と地域との役割分担について,全国農業会議所「解除条件付き農業参入法人等の農地利用に関する調査結果」(2012年3月)における自由記述回答を対象に,テキストマイニングを行った。その結果,農業参入法人等と地域との役割分担を定める協定等の内容は,農林水産事務次官通知で例示された文言を準用している農業委員会が多かった一方で,協定等の内容に独自の工夫もみられた。そこでは,第一に,「役割分担」だけでなく,農地の利用方法を定めていた,第二に地域農業マネジメントの視点から営農支援について定めていた,第三に農地と参入法人との地理的関係においては,県外に本社がある参入企業等に対しては,本社が県内にある場合と比較して「雇用」が期待されていた。なお,参入後の参入企業等と地域との関係については,調査時点においてはおおむね良好な関係が築かれていた。