著者
小池 義和 森野 博章 栗原 邦彰 糸井 成夫 河上 達 清水 悦郎
出版者
Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology
雑誌
JAMSTEC Report of Research and Development (ISSN:18801153)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.49-58, 2014
被引用文献数
3

近年,深海探査の要求は高まっており,低コストで簡易な深海探査システムの実現が望まれている.江戸っ子1号プロジェクトは,東京下町の中小企業,大学,研究機関,金融機関,企業有志がフリーフォール型の簡易深海探査システム実現を目的として集まって実施したプロジェクトである.プロジェクトでは,深海7800 mでの3Dビデオ撮影に成功している.このプロジェクトに参加した筆者らは,江戸っ子1号プロジェクトで使用したフリーフォール型深海探査システムのガラス球内部に温度センサと気圧センサを設置し,深海の温度プロファイル,着底,離底の検知ができないかを検討した.その結果,センサ出力から得られる体積変化分から着底,離底の検出が可能となることを確認した.
著者
菅 寿美 坂井 三郎 豊福 高志 大河内 直彦
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
JAMSTEC Report of Research and Development (ISSN:18801153)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.23-33, 2013 (Released:2013-11-30)
参考文献数
21
被引用文献数
3

近年,生物石灰化機構を調べる研究において,生物の殻と生育している環境水中の炭酸系とのつながりが注目されるようになり,炭酸系を継続的に分析する必要性が高まってきた.試水中の炭酸系を把握するためには,pHとアルカリ度とを分析するのがもっとも簡便である.これは飼育実験のように採水量がごく少量に限られる試水に適用するにも都合が良い.本報告では,海洋化学の分野で用いられているアルカリ度の一点法をもとに,試水量を1 mLにまで減らした分析手法を提案する.重量測定により量り取り量を補正すると,アルカリ度の繰り返し精度は相対標準偏差で0.1~0.2%となった.重量補正なしでは相対標準偏差で0.1~1.0%となった.参照海水を常に試水間に挟み分析することにより,日々の値の系統誤差は補正できることがわかった.この手法を用いれば,pHメータのみを用いて,微量な試水中の炭酸系を生物石灰化メカニズムの解明に十分な精度で継続的に知ることができる.
著者
齋藤 秀亮 荻堂 盛誉 長谷 英昭 田中 克彦 北山 智暁 伊禮 一宏 嘉陽 牧乃 仲村 亮 園田 朗 華房 康憲 丸山 正
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
JAMSTEC Report of Research and Development (ISSN:18801153)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.73-80, 2014 (Released:2014-11-18)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球情報研究センターでは,JAMSTECが保有する潜水調査船や無人探査機で取得された膨大な深海の映像や静止画像を管理し,インターネットに公開している.国際海洋環境情報センター(GODAC)にて2011年から稼働を開始しているデータベースシステム「深海映像・画像アーカイブス(J-EDI)」は,配信している深海映像や画像の撮影環境の多様さやその量において他に類を見ない.潜航調査で撮影されたオリジナルの映像や画像は公開用にフォーマット変換やサイズ変更され,公開用の映像や画像にはGODACスタッフによって被写体に応じたアノテーションが付与されている.J-EDIの稼働によりアノテーションが付与された公開映像の数は飛躍的に増加した.一方,映像利用のためには適切なフォーマットでの公開が必要であるが,オリジナル映像のフォーマットが多様化することで,公開用フォーマットへの変換処理が煩雑になる課題がある.さらに,アノテーションは,膨大な量の深海映像や画像から目的のものを探すために有効であるが,記録された物体の詳細な同定には専門的な知識が必須である.現在のJ-EDIにおけるアノテーションの多くは大まかな分類情報しか示していないため,専門家と協働したアノテーション付与体制を構築することが必要である.
著者
坪井 誠司 園田 朗 華房 康憲 石川 洋一 長谷 英昭 齋藤 秀亮 佐藤 孝子 福田 和代 田中 克彦 五十嵐 弘道 丸山 正 今脇 資郎
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
JAMSTEC Report of Research and Development (ISSN:18801153)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.43-51, 2014 (Released:2014-11-18)
参考文献数
13
被引用文献数
1

2009年の海洋研究開発機構第2期中期計画開始に伴って新設された地球情報研究センター(DrC)は,海洋研究開発機構の研究調査船等で取得された様々な海洋地球観測データおよび生物や岩石試料等のサンプルの公開・流通を実施してきた.これらのデータ・サンプルについては,2007年に制定された「データ・サンプルの取り扱いに関する基本方針」が,その取り扱いの基本となっている.本稿では,データ・サンプルの公開状況を概観し,第2期中期計画期間に構築されてきた,これらのデータ・サンプルを管理・公開するためのDrCのデータベースシステムの中から,JAMSTEC航海・潜航データ探索システム,深海映像・画像アーカイブス,および海洋生物多様性情報システム(BISMaL)を紹介する.さらに,教育・社会経済分野等のニーズに対応するための取り組みについて解説する.