著者
西條 辰義 大和 毅彦
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

公共財の存在する経済においては公共財の提供するサービスにただ乗りをする主体が発生するため,パレート効率な配分を達成するのは容易でない.ところが,1977年にグロブズとレッジャードは,彼らのデザインしたメカニズムにおけるナッシュ均衡配分がパレート効率になることを示した.この研究は経済学における70年代の最も輝かしい成果のひとつであった.この後,グロブズ=レッジャード・メカニズムよりも性能のよいメカニズムが数多く開発された.グロブズ=レッジャード以降の研究においては,各主体がメカニズムに参加することを暗黙のうちに仮定していた.しかし,たとえば地球温暖化防止京都議定書のように,議定書には署名はしても批准はしない(メカニズムそのものは認めてもそれには参加しない),という国々が出現している.この問題は地球温暖化防止や平和という国際公共財供給などの国際条約における共通の問題である.我々は,上述のメカニズムに参加するかどうかも戦略変数にとりいれ,理論モデルの構築を行ってきた.残念ながら,すべての主体が参加するようなメカニズムをデザインすることは不可能であるという基本的な不可能性定理を証明している.このことを検証するために実験室にてさまざまな実験を実施した.日本における実験では,参加をせずにフリーライドをする主体を参加者がパニッシュするという行為を通じて,自分の利得が下がるのにも関わらず,ほぼすべての主体が参加するということを観察している.一方,アメリカにおける実験では,進化論的に安定的な均衡という理論の予測どおりに被験者が行動している.この極端に異なる実験結果の分析は今後の課題となろう.

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