- 著者
-
中島 和江
平出 敦
高階 雅紀
中田 精三
多田羅 浩三
山本 浩司
- 出版者
- 大阪大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2002
医学生及び研修医への医療安全に関する教育方法の開発を目的として、講義時期、内容、方法に関する検討を行った。さらに、医療事故防止の実践的な教育ツールとして、患者急変時の対応、チームメンバー間や患者・家族とのコミュニケーション、診療記録の記載、医学や医事法の基礎知識に焦点をあてたシナリオを作成した。医療安全に関連する領域の講義を継続希望する学生は9割を越え、各学年の医学知識に合わせた講義、具体的ケースの提示による思考型講義の実施、多岐にわたるテーマを教育するための講義時間及び講師の確保が必要であることが明らかになった。作成したシナリオの概略とポイントは次のとおりである。【シナリオ1】血管造影中に患者が心肺停止に陥ったが、適切な心肺蘇生ができなかった。ACLS(advanced cardiovascular life support)の実施、CPR(cardiopulmonary resuscitation)コールの活用、患者急変時のチーム医療におけるリーダーシップ、診療記録の記載。【シナリオ2】研修医がインスリン経静脈的持続投与の口頭指示を出したため、ベテラン看護師に注意され医師指示簿に記載するが、単位を省略して書いたために新人看護師が投与量を誤った。薬剤に関する基礎知識、医師指示における注意点。【シナリオ3】大腸内視鏡で大腸穿孔が発生し、家族から強く責められた担当医は、感情面での支援や適確な説明が行えなかった。インフォームドコンセントのあり方、合併症発生時の患者・家族とのコミュニケーション。【シナリオ4】末期患者がベッドからの転落により急性硬膜下血腫を発症後、しばらくして死亡したが、主治医は安易に死亡診断書を作成しようとした。医師法第21条と異状死に該当する事例に関する知識、死亡診断書と死体検案書との違い。今後、これらのシナリオを実際の医学教育に使用し、教育効果を評価する予定である。