著者
中谷 正生 飯尾 能久 小笠原 宏 佐野 修 山内 常生
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

断層の滑り摩擦の絶対値を知るために、来るべき地震の断層のすぐそばに精密温度計のアレーを設置するという世界で初めての観測を行った。南アフリカの金鉱山に、地下3kmでの採掘活動が大規模な地質断層のそばで行われているところがある。我々は、この地点で長さ30m程度の多数のボーリングを行い、コアと、孔内ビデオ映像の詳細な解析により、厚さ20mを超える複雑な断層帯の構造を三次元的に描きだした。その結果、断層帯の片側と母岩の境界の厚さ10cm程度の部分だけが、損傷が激しく、際だった弱面になっていることが見出された。この構造は面をつらぬくボーリング孔がカバーする全範囲(10x10m程度)にわたって連続しており、また、相当に平面的であった。この面を中心に、距離1m以内に多くの温度計を設置することができた。断層帯は、主に母岩の砕屑物が固結した岩石でできていたが、その中で面構造を示す部分はごくわずかであった。数センチの厚みで、剪断の集中による葉状構造が観察される所は他にも数カ所あったが、先に述べたものだけが、ぼろぼろの状態で、全ての掘削孔で、この面を通る部分だけ、壁の材質がリング状に失われていた。連続観測された温度データは非常に安定で、この鉱山で発生が期待されるM2-3クラスの地震が、上述の弱面で起こった場合、その滑り摩擦強度が、実験室から予想される値の1/10程度でも、測定することができるほどである。これは、いわゆる地殻応力問題で取りざたされている断層強度の範囲の全域をカバーできていることになる。地震によって起こった発熱による周辺岩盤温度の時間変化をみるこの観測では、地震後1ヶ月ほどのデータが必要だが、地震の被害を受けやすい断層直上での観測であるため、地震後に観測機器にアクセスできなくなる可能性もある。そのため、データの収録、伝送、電源供給方法は無線を含めた多重化を行った。

言及状況

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こんな研究ありました:地震滑りによる摩擦発熱量の直接測定(中谷 正生) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/15340143

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