- 著者
-
沖原 謙
松本 光弘
柳原 英兒
塩川 満久
菅 輝
磨井 祥夫
- 出版者
- 広島大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2003
以下に研究成果について概説する。本研究の目的は、モダンサッカー戦術の獲得過程と応用範囲について客観的なデータをもとに分析することである。具体的には、ユース年代から熟年選手になるまでにモダンサッカーのコンパクトな状態を保った上での速い攻守の切り替えにどのように適応して行くかについて考察を加えた。本研究で用いた比較(ユース年代と代表クラス)研究対象は、選手のスピードの変化、相手選手とボールに対する対応、そして両チームの図心(チームの重心)問の距離に関する3要素であった。そして、これらの結果を以下に示した。選手のスピードの変化は、熟年選手の方がトップスピードの頻度が高くなり、低いスピードでの移動時間も長い。つまり、試合における選手の動きは、熟練されるに従ってスピードの変化が多くなる。相手選手とボールに対する対応について、ピッチの縦成分と横成分に分けて分析した。その結果、代表クラスの選手は、縦と横の動きに対する対応は、相関係数が高い。ユース年代では縦に関する相関係数は高い。そして、横に対する相関は、低い。興味深いことに、この年に日本一に輝いたサンフレッチェ・ユースは、代表クラスの選手と同等な数値を示した。個々の動きは、熟年選手になるまでに横の動きに対する対応がスムーズになると考えられる。両チームの図心間の距離は、ユース年代より代表クラスの方が長い。しかし代表クラスの試合は、ユース年代の試合と比較して、モダンサッカーの特徴であるコンパクトな状態を保っている。この意味は、レベルの高い試合ではコンパクトな状態を保ちつつ、お互いのチームが相手陣地に入れない状態でゲームが進行する頻度が高いことを示している。モダンサッカー戦術として獲得してゆく要素一側面としてコンパクトに保たれた密集の中では、動きの量ではなく、緻密な横の対応と動き(スピード)の変化、そして相手チームの中に入り込むチャンスが少ない中での的確な判断力であるといえる。