- 著者
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足立 明
平松 幸三
安藤 和雄
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2004
本研究は、アクター・ネットワーク論(以下、ANT)を地域研究に援用し、地域における出来事や事象を、人、モノ、言葉(記号)のネットワークとしてとらえ、それらを動態として記述・分析することを目指した。ここでは、研究代表者と研究分担者がこれまで個別に関わってきた開発、在地の技術、基地の事例研究を、ANT的に再構成することで、地域研究におけるANT的な展開の可能性を具体的に議論した。本研究を通して理論的・方法論的に明確になってきた点は、以下の通りである。1.ANTは、科学技術研究を目的として発展してきたもので、上記のような対象には、十分な分析概念を必ずしも備えておらず、新たなボキャブラリーを付け加える必要がある。2.そのために、ANTと親和的な存在論と分析枠組みを持っている生態心理学とメディオロジーを検討した。生態心理学は、活動というものを人と文化的道具(言語、技術、改変された自然物など)の媒介過程ととらえている。また、メディオロジーでは、イデオロギーが歴史的に制度とモノによって媒介されて力を持つ過程を分析している。そして、これらの理論の検討の結果、これらのボキャブラリーが、今後のANTの理論的、方法論的な検討に有効であることを認識した。例えば、多様なアクタントが巻き込まれる過程の分析には、ANTにおけるネットワーク概念よりも生態心理学やメディオロジーにおける媒介概念の方がよりその動態を考えやすいと思われる。3.上記の検討から、新たなANTの分析枠組みを、人と文化的道具(制度、イデオロギーを含む)の歴史的な媒介過程の分析と言いかえることができるであろう。この意味で、本研究によって、このような媒介過程をより詳細に分析し、記述するという理論的・方法論的展望が開かれたといえる。