著者
松井 利仁 平松 幸三 宮川 雅充
出版者
公益社団法人 日本騒音制御工学会
雑誌
騒音制御 (ISSN:03868761)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.367-374, 2012-10-01 (Released:2020-01-16)
参考文献数
20

航空機騒音が空港周辺住民のメンタルヘルスに及ぼす影響を明らかにすることを目的として,成田国際空港暫定平行滑走路(B滑走路)周辺において,精神健康調査票(GHQ-28)を利用した質問紙調査を行った。GHQ-28で神経症と判別された者の比率と騒音曝露量および騒音感受性との関連を分析した結果,騒音感受性が高い群において,住民のメンタルヘルスに影響が生じていると考えられた。さらに,騒音曝露群について,神経症と判別された者の比率と生活妨害との関係を分析した結果,夕方から夜間の時間帯(18∼23時)における生活妨害とメンタルヘルスとの間に,有意な関連が認められた。
著者
松井 利仁 平松 幸三 長田 泰公 山本 剛夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.80-85, 2003-02-01
被引用文献数
3

沖縄県は1997年に県内の飛行場周辺に航空機騒音のモニタリングシステムを設置した。本報告では,モニタリングシステムによって集積された測定資料を用い,嘉手納,普天間飛行場周辺の騒音曝露の現状を示している。両飛行場周辺では,昼夜を分かたず広範囲で高レベルの騒音が観測されており,特に嘉手納飛行場近傍では,夜間においても110dBを超える騒音レベルが記録されていた。また,防衛施設庁の定める騒音に基づく地域区分との関連を検討したところ,嘉手納飛行場周辺では,離着陸コース直下を除いて,今回算出したWECPNLが防衛施設庁の地域区分より低い値となったが,普天間飛行場周辺では両者がほぼ一致した。
著者
足立 明 平松 幸三 安藤 和雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、アクター・ネットワーク論(以下、ANT)を地域研究に援用し、地域における出来事や事象を、人、モノ、言葉(記号)のネットワークとしてとらえ、それらを動態として記述・分析することを目指した。ここでは、研究代表者と研究分担者がこれまで個別に関わってきた開発、在地の技術、基地の事例研究を、ANT的に再構成することで、地域研究におけるANT的な展開の可能性を具体的に議論した。本研究を通して理論的・方法論的に明確になってきた点は、以下の通りである。1.ANTは、科学技術研究を目的として発展してきたもので、上記のような対象には、十分な分析概念を必ずしも備えておらず、新たなボキャブラリーを付け加える必要がある。2.そのために、ANTと親和的な存在論と分析枠組みを持っている生態心理学とメディオロジーを検討した。生態心理学は、活動というものを人と文化的道具(言語、技術、改変された自然物など)の媒介過程ととらえている。また、メディオロジーでは、イデオロギーが歴史的に制度とモノによって媒介されて力を持つ過程を分析している。そして、これらの理論の検討の結果、これらのボキャブラリーが、今後のANTの理論的、方法論的な検討に有効であることを認識した。例えば、多様なアクタントが巻き込まれる過程の分析には、ANTにおけるネットワーク概念よりも生態心理学やメディオロジーにおける媒介概念の方がよりその動態を考えやすいと思われる。3.上記の検討から、新たなANTの分析枠組みを、人と文化的道具(制度、イデオロギーを含む)の歴史的な媒介過程の分析と言いかえることができるであろう。この意味で、本研究によって、このような媒介過程をより詳細に分析し、記述するという理論的・方法論的展望が開かれたといえる。
著者
森谷 尅久 藤本 憲一 角野 幸博 平松 幸三
出版者
武庫川女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

家庭機能の外部化は、都市化と密接に関係する。都市への人口集中が、必然的に住宅価格を引き上げ、一家の居住面積を縮小した。結果的に家庭が果たしていたある部分が、外部化されていく。家庭機能の外部化が進行するということは、都市が拡大された家庭の役割を果たすことを意味する。家庭機能の外部化の進行は、経済発展と深く関わっている。戦後の急速な工業化社会の中で、第一次産業従事者が減り、代わりに第二次・第三次従事者が増大していった。まず食事機能の外部化を歴史的にみると古代から中世にかけては、花会の宴・歳賀の宴が盛んになっている。花会は梅・桃・桜・ハス・萩・菊の宴が主流であるが、遠出して野趣を味いながら一日を過ごすことも多くなった。その後、日本の宴会はいっぽうで確実に外部化が進み、多様化を示すとともに、また内在化も確実に定着しはじめている。現代の外食産業については、ファーストフードに代表されるが、その多様化も急速に進行中である。また宿泊機能の点ではなく、わが国におけるホテルの歴史は幕末の開港とともに始まった。神戸、横浜、長崎などの開港場には外国人の居留地が整備され、商用で訪れた外国人のための宿泊施設が、外国人の手によってつくられた。わが国のホテルは、外国人の旅行客をもてなす施設として誕生したため、一般には「洋風の宿泊施設」として理解されている。しかしその概念規程ははなはだ曖昧であり、このことは、ホテルの多様化をもたらしたと同時に、ホテルという用語の混乱を招く結果ともなった。さらに、ホスピタリティ機能の外部化について病院は、戦後、高度経済成長にともなう都市化の進行につれて、家庭で行えない療養の場として、急速に需要を延ばした。現代の日本人は、大多数が病院で生を受け、半数以上が病院で生を終える。病院は、日本人にとって実に身近な存在になっている。入院が驚くべき出来事ではなくなるにつれ、病院は家庭の延長としてとらえられるようにもなった。以上、本年度は食事・宿泊・ホスピタリティ(療養)の三つの家庭機能について、その外部化を考察した。
著者
平松 幸三 箕浦 一哉 松井 利仁 宮北 隆志 長田 泰公 山本 剛夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.556-564, 2000-08-01
参考文献数
24
被引用文献数
1

特殊空港周辺で実施されている家屋防音工事が生活実態上どの程度生活環境の改善に寄与しているのかを検討するため, 嘉手納基地周辺において質問紙調査を行い, 家屋防音工事の実施状況, それに対する満足度と効果の有無並びにうるささ, 生活妨害, 環境質に関する回答を分析した。その結果によると, 騒音曝露地区では, 家屋防音工事への満足度が高く, その効果を評価する回答が多かったが, 高度曝露地区ではそれらの回答率が著しく低かった。多重ロジスティック分析を行って生活妨害の反応に関するオッズ比を家屋防音工事実施群と非実施群とで比較したところ, 両群において反応に差が認められなかった。このことから家屋防音工事が生活環境を改善することにはなっていない, と結論された。
著者
松井 利仁 平松 幸三 長田 泰公 山本 剛夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.20-24, 2001-12-25
参考文献数
9
被引用文献数
2

沖縄県には在日米軍専用施設面積の約75%に及ぶ基地が存在し, 沖縄本島の約20%を米軍基地が占めている。嘉手納・普天間飛行場は人口の稠密な地域に位置しており, 約48万人(県人口の38%)が環境基準を超える航空機騒音に曝露されていると推定されている。このような状況に鑑み沖縄県は航空機騒音曝露による住民影響に関する疫学調査を行った。本報告では, 航空機騒音の健康影響調査の基礎的資料として, 過去の騒音曝露量の推定を行っている。ベトナム戦争以降の現存する騒音測定資料を分析し, それに基づいて各種騒音評価量を推定している。また, 防衛施設庁が定めている騒音区分の妥当性についても検討を加えている。
著者
足立 明 花田 昌宣 子島 進 平松 幸三 佐藤 寛 山本 太郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、開発過程を総合的に記録・記述する民族誌的プロセス・ドキュメンテーションの可能性を検討するところにある。いうまでもなく、開発は、開発援助機関、プロジェクトマネージャー、受益者といった直接のアクターのみならず、それを取り巻く多様なアクターとの関わりで、紆余曲折しながら進行していく。それは「複雑系」といってよい過程である。本研究は、参加型開発での現地調査をとおして、開発過程を記録し記述する手法を学際的に検討し、開発研究者や開発実務者のみならず、開発の受益者にも利用可能となるような汎用的記録法の可能性をさぐることを目的としていた。平成14年度は方法論的としてのアクター・ネットワーク論を議論した。平成15年度、16年度は、すでに検討した方法論をふまえて、開発プロジェクトの参与観察を行った。なお、現段階で収集した資料の整理がすべて終わったわけではないが、これまでに判明した点は以下である。1.調査を始めて見た結果、この研究はきわめて「時間のかかる」仕事であるということを実感した。たとえ実験的なプロセス・ドキュメンテーションの調査であっても、数週間から1ヶ月程度の期間でできることはきわめて不十分で、博士課程の院生が全力で取り組むような規模の研究課題である。2.方法論的な検討の結果、アクター・ネットワーク論は有効であることが分かった。例えば、「参加型」というフレームの成立、安定化、揺らぎを、アクターを追うことで、参加型開発の「公的台本」と「隠された台本」を見いだしうる。3.しかし、アクター・ネットワーク論的方法論を、事後的に使ってプロセス・ドキュメンテーションを描くことは、異種混交なアクター間の微妙な相互作用を見落としがちであり、事後的な分析ではなく、「アクターを追う」ことで、このような調査を継続し、方法論的な検討を深める必要がある。
著者
渡久山 朝裕 松井 利仁 平松 幸三 宮北 隆志 伊藤 昭好 山本 剛夫
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.14-25, 2009 (Released:2009-02-26)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

Objectives: To investigate the association between aircraft noise exposure as expressed by Weighted Equivalent Continuous Perceived Noise Level (WECPNL) and preschool children’s misbehaviours around the Kadena and Futenma airfields in Okinawa. Methods: A questionnaire survey on children’s misbehaviour was conducted in nursery schools and kindergartens around the Kadena and Futenma airfields. The children living around the Kadena airfield were divided into four groups according to WECPNL at their residences and those around the Futenma airfield into three groups according to WECPNL. The subjects were 1,888 male and female preschool children, 3 to 6 years of age, whose parents, caregivers, and teachers answered the questions. The answers used for the analysis were limited to those of respondents fulfilling the following conditions: parents living with their children, fathers with a daytime job, and mothers with a daytime job or no job. Thus, the number of valid answers was 1,213. The responses were analysed using logistic regression models taking the number of misbehaviours related to the items of Biological Function, Social Standard, Physical Constitution, Movement Habit, or Character as the dependent variables, and WECPNL, age, sex, size of family, birth order, mother’s age at birth, mother’s job, caregiver’s career, and category of subject as the independent variables. Results: A significant dose-response relationship was found between the odds ratio and WECPNL for the outcomes of Physical Constitution around the Kadena and Futenma airfields. Conclusions: It would be reasonable to conclude that the aircraft noise exposure is a factor that increases the number of preschool children’s misbehaviours.