- 著者
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馬場 敏幸
苑 志佳
相澤 龍彦
河村 哲二
近藤 章夫
兼村 智也
折橋 伸哉
佐藤 隆広
田中 美和
- 出版者
- 法政大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2014-04-01
今年度はブラジルサンパウロ、ジョインビレ、カシアスドスルを訪問した。ジョインビレとカシアスドスルはこれまでの調査で判明したブラジルの金型クラスターである。ジョインビレはドイツ系移民による工業都市であり、ブラジル第一の金型集積地である。ブラジル金型工業会もジョインビレに位置する。ジョインビレの金型技術は大手配管メーカーと大手家電メーカーの部品成形およびそれらの成形のための金型作成を核として形成されていった。やがて蓄積された技術をもとにして自動車など他産業向けの金型作成も盛んに行われるようになった。ジョインビレでは金型メーカーおよび中核企業である家電メーカーの金型部門を訪問した。金型はドイツ・マイスター風の金型製作手法がとられ、製作される金型品質はグローバルレベルであった。カシアスドスルはプラスチック射出成形が盛んなイタリア系の移民都市である。金型製作はイタリアカロッチェリア風の金型手法がとられ、製作される金型品質は高かった。今年度の訪問により、これまでの企業のグローバル化および企業の成立・調達・技術系製などの経営学的・工学的知見に加え、ブラジル金型産業クラスターの成立という経済地理的観点からも大きな知見が得られた。特に興味深かった点は、金型クラスターごとに異なる形成経緯である。すなわち、コスモポリタン的な形成がなされたサンパウロABC地域は1950年代以降の自動車産業振興に伴って金型クラスターはコスモポリタン的に形成されたが、ジョインビレ地域はドイツ系移民のもちこんだ工業蓄積と共に形成され、カシアスドスル地域はイタリア系移民のもちこんだ工業蓄積と共に形成された。ブラジルの金型産業の形成・発展に「移民」のキーワードが重要であるとの点が明らかになった。これはアジア地域の地場民族による金型産業・クラスター形成とは異なるタイプの金型産業・クラスター形成であり、大きな発見であった。