著者
馬場敏幸
出版者
財団法人 素形材センター
雑誌
素形材 (ISSN:09101985)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.13-14, 2005-11-20
被引用文献数
1
著者
馬場 敏幸 苑 志佳 相澤 龍彦 河村 哲二 近藤 章夫 兼村 智也 折橋 伸哉 佐藤 隆広 田中 美和
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

今年度はブラジルサンパウロ、ジョインビレ、カシアスドスルを訪問した。ジョインビレとカシアスドスルはこれまでの調査で判明したブラジルの金型クラスターである。ジョインビレはドイツ系移民による工業都市であり、ブラジル第一の金型集積地である。ブラジル金型工業会もジョインビレに位置する。ジョインビレの金型技術は大手配管メーカーと大手家電メーカーの部品成形およびそれらの成形のための金型作成を核として形成されていった。やがて蓄積された技術をもとにして自動車など他産業向けの金型作成も盛んに行われるようになった。ジョインビレでは金型メーカーおよび中核企業である家電メーカーの金型部門を訪問した。金型はドイツ・マイスター風の金型製作手法がとられ、製作される金型品質はグローバルレベルであった。カシアスドスルはプラスチック射出成形が盛んなイタリア系の移民都市である。金型製作はイタリアカロッチェリア風の金型手法がとられ、製作される金型品質は高かった。今年度の訪問により、これまでの企業のグローバル化および企業の成立・調達・技術系製などの経営学的・工学的知見に加え、ブラジル金型産業クラスターの成立という経済地理的観点からも大きな知見が得られた。特に興味深かった点は、金型クラスターごとに異なる形成経緯である。すなわち、コスモポリタン的な形成がなされたサンパウロABC地域は1950年代以降の自動車産業振興に伴って金型クラスターはコスモポリタン的に形成されたが、ジョインビレ地域はドイツ系移民のもちこんだ工業蓄積と共に形成され、カシアスドスル地域はイタリア系移民のもちこんだ工業蓄積と共に形成された。ブラジルの金型産業の形成・発展に「移民」のキーワードが重要であるとの点が明らかになった。これはアジア地域の地場民族による金型産業・クラスター形成とは異なるタイプの金型産業・クラスター形成であり、大きな発見であった。
著者
馬場 敏幸 玄場 公規
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.71-82, 2003-08-29

本研究は,インドネシアの現地系自動車部品メーカーの獲得した技術水準に着目し,アジアの自動車産業の産業システム高度化進展度を分析することを目的としている。分析にあたっては自動車メーカーとサプライヤー間の取引方式に着目した。先行研究によると「承認図」方式を通じてなされる取引方式では,双方化による学習(Learning-by-Reciprocating)効果が期待され,開発途上国への技術移転速度を速めると提唱されている。しかし,一方で,「承認図」方式による取引には,1)初期開発能力(企画・設計), 2)後期開発能力(工程開発能力,VE), 3)量産能力(品質,納期など),4)改善能力(VAなど)のすべての能力が必要とされている。そのため,本研究では現地系自動車部品メーカーヘの「承認図」方式の普及状況が産業システム高度化進展度の指標になると考え,承認図に関する事例分析を行った。分析の結果,現地系の部品メーカーは自動車メーカーに対して製造技術を提供できる段階に達しているが,その開発能力は発展途上にあり,産業システムとしてはいまだ未成熟であるとの結論を得た。しかし,「承認図メーカー」に近い現地系自動車部品メーカーも存在しており,産業システムが進化しつつあることも確認された。