著者
後藤 英昭 原田 寛之 漆谷 重雄
出版者
一般社団法人 大学ICT推進協議会
雑誌
学術情報処理研究 (ISSN:13432915)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.197-204, 2023-11-27 (Released:2023-11-27)
参考文献数
12

教育・研究機関向けの無線LANローミング基盤であるeduroamは,多くの機関で,ID・パスワードを使う形で運用されている.利用者がID・パスワードを記録しておく必要性があり,手作業での設定の負担が大きかった.一方,市民一般向けのローミング基盤であるOpenRoamingの開発と並行して,OSベンダ各社は近年,Wi-Fiプロファイルを用いたウェブベースの設定投入の仕組みを提供するようになった.これにより,WPA2 Enterpriseの無線LANでも,複雑な手順を踏まずに設定できるようになった.本研究では,主要なOSの対応状況を調査した.また,機関の情報システムに組み込んでWi-Fiプロファイルを発行できるようにするためのツールキットを開発した.このツールキットを用いると,組織のアカウントなどを用いてログイン済みのウェブサイトから,プロファイルを電子的手段で端末に流し込み,ID・パスワードレスなeduroam/OpenRoaming設定を実現できる.誤入力・設定ミスの可能性を極力排除することで,サービスの利便性と安定性の向上が期待される.
著者
野口 岳 ウン クアンイー 上田 尚之 乗添 凌太郎 島田 敬士
出版者
一般社団法人 大学ICT推進協議会
雑誌
学術情報処理研究 (ISSN:13432915)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.22-28, 2023-11-27 (Released:2023-11-27)
参考文献数
6

九州大学では学生たちが中心となりボトムアップ型で学生支援・教育支援を行う体制としてquickQが組織されている.quickQでは,コロナ禍の様々な課題に対してチャットボットの開発・運用を通じて解決に貢献してきた.2021年までに3つのチャットボットを開発・運用してきたが,3つを別々のアカウントで運用を続けることに様々なデメリットが存在することがわかった.2022年4月に各チャットボットを「ワンストップ」という考え方に基づいて統合した.結果,2022年3月から2023年6月末時点で33614回の問い合わせをチャットボットによる自動応答を用いて解決した.ワンストップをベースとしたチャットボットの開発・運用について,設計と開発環境の紹介をしたうえで2023年7月までのデータを元にした運用状況を報告し,直近の持続的な取り組みを紹介する.
著者
浅木森 浩樹 山田 哲 矢谷 鷹将 末廣 紀史 武田 啓之 國枝 孝之 米谷 雄介 八重樫 理人
出版者
一般社団法人 大学ICT推進協議会
雑誌
学術情報処理研究 (ISSN:13432915)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.112-118, 2023-11-27 (Released:2023-11-27)
参考文献数
13

香川大学は,ユーザ主導により業務システムをアジャイル内製開発する取り組みを開始した.香川大学が実施した業務システムのアジャイル内製開発では,ユーザ主導で開発するシステムの要件を抽出するとともに,スクラム開発で業務システムを開発する.本論文では,ユーザ主導による香川大学の業務システムのアジャイル内製開発について述べるとともに,ユーザ主導開発,学内アジャイル内製開発の視点からそれを考察する.
著者
門田 陽介 森野 勝太郎 本山 一隆 重歳 憲治 福江 慧 石井 真理子 芦原 貴司
出版者
一般社団法人 大学ICT推進協議会
雑誌
学術情報処理研究 (ISSN:13432915)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.79-86, 2022-12-28 (Released:2022-12-28)
参考文献数
18

文部科学省が推進するGIGAスクール構想の中で教育現場における「講義のオンライン化」は重要な目標課題の一つであったが,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をきっかけに全国の教育機関における講義のオンライン化が急速に進んだ.オンライン化が感染対策として有効である事は疑問の余地はないと思われるが,オンライン配信による遠隔講義が,対面講義と同等の学習効果を生み出しているかどうかについては,これまで十分な客観的検証がされているとはいえない.我々は,無線LAN接続による位置情報とZoom®ログを用いて学生が遠隔講義と対面講義のいずれに出席していたかを推定し,講義形式が学業成績GPAに与える影響を検討した.粗解析では対面講義参加割合が正に学業成績GPAと相関していた.学業成績には前年度の学業成績と入試成績が関与している事が分かったため,これらの因子を調整したところ,低学年では対面講義を志向する群が遠隔講義を志向する群に比して学業成績が良かったが,高学年では両群に統計学的な差は無かった.本分析は,ポストコロナ期の高等教育機関における教育の在り方について議論する貴重な材料になり得ると考えられる.
著者
岩瀬 雄祐 山口 由紀子 川瀬 友貴 石原 正也 嶋田 創
出版者
一般社団法人 大学ICT推進協議会
雑誌
学術情報処理研究 (ISSN:13432915)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.157-166, 2023-11-27 (Released:2023-11-27)
参考文献数
6

名古屋大学では本学構成員およびゲストユーザ向けの全学的な無線LANサービスとして名古屋大学無線ネットワーク(NUWNET)を提供している.無線アクセスポイントの更新・増設によるWi-Fi環境の改善を進めてきたが,「NUWNETが途切れる,遅い」等の問い合わせが多く,ユーザ側からの通信状態を把握するため,Raspberry Piを用いた学内向けWi-Fi環境観測システムを構築した.また,本システムは学内のプライベートネットワーク用として構築したが,学外に設置したWi-Fiセンサと学内のサーバをVPNで接続することで,学外のWi-Fi環境についても観測できることを確認した.本稿では,Raspberry Piを用いた学内向けWi-Fi環境観測システムの構築,観測データの可視化,Wi-Fi環境の調査事例に加えて,AXIES 2022におけるデモ展示と観測について報告する.
著者
中鉢 直宏
出版者
一般社団法人 大学ICT推進協議会
雑誌
学術情報処理研究 (ISSN:13432915)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.29-37, 2023-11-27 (Released:2023-11-27)
参考文献数
16

情報プレースメントテスト(以下:IPT)とは,情報処理学会一般情報教育委員会が実施する,大学初年次の学生を対象に行われるテストである.本研究では,ChatGPTを使用したIPTのための作問支援についてその可能性を検討した.情報分野においてもChatGPTを使用することで,キーワードから設問の作成や既存の設問に対する選択肢の作成が可能であることが分かった.また,作成時に難易度を指定することにより,段階的な出題の傾向が見られた.IPTで使用された既存の設問に対してChatGPTに解かせたところ,高い正答率であった.そして,計算などの問題の間違える傾向について確認することができた.ChatGPTを使った難易度の評価については,大学1年生レベルの平均の難易度と評価され,IPTの作問時に想定した難易度と一致した.しかし,実際の正答率と各設問の難易度の関係は弱い負の相関であった.