著者
村本 由紀子
出版者
一般社団法人 日本産業保健法学会
雑誌
産業保健法学会誌 (ISSN:27582566)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.25-29, 2022-07-10 (Released:2023-02-22)
参考文献数
20

組織が新たなルールや制度を導入したとき、従業員がその新制度に即応し、活用することは必ずしも容易ではない。従業員の心理や行動は、明示的な制度よりも目に見えない職場の文化に規定されがちであり、文化には、環境が変わっても容易には変化しがたいという特質が備わっているためである。特に留意すべきは、旧態依然とした文化が「多元的無知」によって維持されている場合である。本稿では、多元的無知に関する社会心理学の研究例を紹介しながら、組織における制度と文化の関係について考察する。
著者
泉 陽子 菰口 高志 立道 昌幸 三柴 丈典
出版者
一般社団法人 日本産業保健法学会
雑誌
産業保健法学会誌 (ISSN:27582566)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.21-32, 2023-12-30 (Released:2023-12-21)
参考文献数
28

国の第4期がん対策推進基本計画では、職域のがん対策、特にがん検診の推進が重視され、受診率の向上や精密検査受診率の向上が課題となっている。一方で、制度上、事業者のがん検診実施はあくまで任意であり、またがん検診結果のような健康情報に関し、個人情報保護法、労働法等に照らした適正な取扱いについて必ずしも見解の一致が見られるわけではない状況にある。このため本稿では、職域のがん検診に関する現状を考察したうえで、健康情報の取扱いを中心に、現行法制度のもとでの課題解決のための論点や方向性を提示した。
著者
加藤 憲忠 村本 浩 豊澤 康男 竹田 透
出版者
一般社団法人 日本産業保健法学会
雑誌
産業保健法学会誌 (ISSN:27582566)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.271-279, 2022-07-10 (Released:2023-02-22)
参考文献数
2

現在、促進されている副業・兼業・フリーランス等の働き方における発注者・委託者の責任について、各シンポジストからご報告を頂き、下記のような見解が提示された。 ・ 副業・兼業・フリーランス等の新しい働き方については法的に未整備な部分が多く、特にフリーランスに対する安全衛生には十分な議論が行われていない現状がある。 ・ DX(デジタルトランスフォーメーション)の一つであるフロントローディングという手法は、設計段階で安全配慮を履行すると同時に現場の生産性向上にも寄与する画期的な取組みで、建設業以外の業界にとっても大きなヒントを秘めている。 ・ 雇用類似労働者への産業保健サービスの展開は技術的には可能だが、それを可能とするために解決しなければならない法的課題がある。 本シンポジウムでの議論を通じ、今後ますます拡大するであろう副業・兼業・フリーランス等の働き方において、発注者・委託者の責任範囲の明確化と労働者の健康確保措置は喫緊の課題であるという示唆が得られた。
著者
玉山 美紀子
出版者
一般社団法人 日本産業保健法学会
雑誌
産業保健法学会誌 (ISSN:27582566)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.15-23, 2022-12-26 (Released:2023-02-22)
参考文献数
17

COVID-19によりテレワーク導入が加速化し、すでに3年が経過した。パンデミックが落ち着いてもテレワークの継続が定着しつつある一方、在場勤務に戻す企業も多くある。テレワークにより、働き方に関わる法的課題や、人事部門として課題と認識する内容が浮上してきた。よって「テレワークの必要性と定着への課題」、「テレワークによるwell-being 向上」及び「サスティナブルな経営の手法の1つとして継続的に考えるべき内容」について記述する。
著者
白波瀬 丈一郎
出版者
一般社団法人 日本産業保健法学会
雑誌
産業保健法学会誌 (ISSN:27582566)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.210-216, 2022-07-10 (Released:2023-02-22)
参考文献数
10

本稿では、メンタライゼーションの概念を用いて、パーソナリティ障害あるいは自閉症スペクトラム障をもつ労働者とやりとりするときに、我々が被る心理的重圧の影響と、この影響への対策について述べる。そのための布石として、精神医学を理解することの意味について論じる。