著者
水落 裕美 藤丸 千尋 藤田 史恵 藤好 貴子
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.48-55, 2012-03-20
被引用文献数
1

本研究の目的は、気管切開管理を必要とする重症心身障害児を養育する母親が在宅での生活を作り上げていくプロセスを明らかにすることである。在宅で6ヶ月以上、気管切開管理を必要とする重症心身障害児を養育する母親6名に、半構成的面接を行い、インタビューで語られた内容をデータ化し、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。その結果、自分らしい生活の創造、生活を後押しするマンパワー、母親としての自信の芽生えの3つのカテゴリーが抽出された。在宅療養を開始した当初、母親は、想像のつかない恐怖からくる退院初日の不安が一番強い。無我夢中の毎日から試行錯誤の日々を経て、意外と大丈夫な日常へと自分らしい生活を作り上げていくプロセスにおいて、積極的な父親の関わりやきょうだい児によるお手伝いなどの家族の協力や共感出来る母親の存在が、生活を後押しするマンパワーとなっていた。
著者
神道 那実 浅野 みどり
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.9-16, 2007-09-20
被引用文献数
1

本研究の目的は、小児血液疾患の治療に伴って必要となる療養行動において、患児がどのような自主性を発揮しているのか、また病状説明と親の関わりが自主性にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにすることであった。対象は、小児血液疾患をもつ入院中の10〜14歳の患児とその親4組であり、質問紙および半構成面接を行った。その結果、患児は療養行動に対して否定的感情を抱きながらも個々の理解に応じた自主性を発揮していた。内服では多くの自主性が見られたのに対し、含嗽では不十分であり、自主性が体調や血液データ、過去の経験、必要性の理解度に影響を受けていることが明らかとなった。病状説明においては、すべての患児が希望通りに病状説明を受けていたことが自主性の促進因子となっていたが、入院初期の説明内容は3事例が覚えていなかった。また、患児の意思や行動を尊重した親の関わりが自主性を促進していることが示唆された。
著者
富澤 弥生 塩飽 仁
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.16-23, 2005-03-20
参考文献数
14

本研究の目的は、小児白血病の中で頻度が高く再発のリスクが最も低い子どもの低リスク群白血病を母親が認識する過程を明らかにすることである。本研究は、低リスク群白血病患児の母親7名を対象に調査を行い、研究方法は、グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。その結果、母親が子どもの低リスク群白血病を認識する過程において,【発病理由の追究】,【仲間がいる感覚】,【見通しの実感】,【死と遠い距離感の保持】,【生活上の目標設定】の5つのカテゴリーが生成され,その中で最終過程にあるカテゴリーは【生活上の目標設定】であり,中核カテゴリーは【まともな生活】であった。本研究において、他の子どもが亡くなった時、再発した時、また、退院後などに、各カテゴリーに対応した母親に対する適切な看護介入の必要性が示唆された。
著者
萩原 綾子 権守 礼美 相原 慎
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.33-39, 2009-11-20

本研究は、先天性心疾患(以下、CHD)によりフォンタン手術を受ける子どもの家族の満足度について過去3年に手術を受けた40名の家族を対象にし、2006年10月〜2007年2月までアンケート調査を実施した。回収率は70%で、早期退院と医師の説明やケアに関する満足度は8点以上(10点満点)であった。看護師の説明やケアに対する満足度は、早期退院、医師の説明やケアの満足度と比べると低い傾向にあり7点が6項目あった。特に入院中の看護師への声のかけやすさに関しては、4.9±3.1点であり低かった。質問項目の自由記述について意味内容ごとに項目を抜き出し、内容を分析した。満足度に影響を与える因子として、二つのカテゴリーが抽出され、それぞれに【説明】【専門的なケア】と命名した。家族は、看護師に手術や治療の看護ケアだけでなく、これを踏まえた食事や睡眠といった療養に関する看護ケアを期待しており、これを実践することが質の高い看護ケアにつながると考えた。
著者
石井 佳世子
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.1-8, 2007-09-20
被引用文献数
1

小児がん発症後5年以上を経過し、社会生活を送っている青年後期の小児がん経験者をもつ母親20名を対象とし、母親の子どもへの関わりとその関わりの意味を明らかにするため、質的記述的研究を行った。その結果、母親は〔子どもへの基本的な思い〕、〔母親として責任のある子どもへの思い〕、〔豊かな人生を送って欲しい〕という3つの【母親としての願い】を持っていた。この願いは、【体験を無駄にしたくない】という病気体験の捉え方、【やっぱり病気を忘れられない】という病気そのものの捉え方、【将来のある子ども】という子どもの捉え方によって、常に揺れ動いていた。また母親は、【母親としての願い】を持ちながら、【子どもを守る】という関わりを行い、これはこの先も子どもを守り続けたい<終わりのない見守り>という意味を持つと考えられた。さらに母親は、子どもへの関わりを通して、【変わっていく自分】を感じ、子どもの病気を自らの体験として意味づけていた。
著者
奈良間 美保 堀 妙子 山内 尚子 塚本 雅子
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-8, 2001-02-28
被引用文献数
4

本研究は、先天性の疾患により排泄管理を必要とする幼児の日常生活の自立の特徴を、健康児との比較から明らかにすること、また排泄行動の自立の関連要因を明らかにすることを目的とした。排泄管理を必要とする幼児の母親、保育園に通園する健康児の母親を対象に質問紙調査を行い、患児の母親58名、健康児の母親107名の回答から以下の結果を見いだした。1)排泄管理を必要とする患児は、健康児に比較して排泄の自立に明らかな遅れが認められたが、必ずしも生活全般の自立に遅れはなかった。2)導尿などの特殊な処置を行っている患児は、排泄行動の自立の遅れが顕著であった。3)患児が規則的な排便習慣を達成していないことは、排泄行動の自立が遅れることと関係が認められた。4)患児の家族は健康児の家族より、食事内容の調整を積極的に行っていた。家族が食事内容や生活時間を調整することは、患児が規則的な排便習慣を確立することと関係が認められた。