著者
村田 浩平 土屋 守正 増島 宏明
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.75-87, 2007-12-25

太平洋上空を浮遊する昆虫相に関する調査をこれまで報告例のない1月から3月にかけて東海大学海洋調査実習船望星丸により1999年,2002年,2003年の3航海実施するとともに,独立行政法人海洋研究開発機構が運行する海洋地球研究船みらいにより2005年に1航海実施し,以下のような結果を得た.1.全航海で得られた海上を浮遊する空中移動性昆虫の目別個体数は,多い順にハチ目,ハエ目,カメムシ目,チャタテムシ目,アザミウマ目,コウチュウ目であり,そのほとんどが体長1mm前後の微小な昆虫であった.2.得られた昆虫の個体数は,主な分散源と考えられるオーストラリア大陸やニューギニア島近海で多かった.また,陸地から400km以上離れた海上で得られることもあったが,多くが陸地から数十キロ以内で得られた.3.海洋上空で昆虫が得られる条件として,最も近い島から風が吹いていること,海洋上空で昆虫が得られる傾向が見られた.また,風速との関係では無風時,強風時には得られない傾向が見られた.4.航路によって得られる昆虫の個体数には違いが見られ,日本から南東への往復航路では他の航路に比べて少ない傾向が見られた.5.イチジクコバチ科の1種は,ニニーゴ島沖120kmの海上で得られ,コバチ上科の1種,アザミウマ科の1種は,ニューギニア島から40km離れた海上で生存状態で得られていることから,これらの種は,島嶼間を分散する可能性があることが示唆された.6.港に停泊中に得られた昆虫の目構成は,海洋上空とは異なり,ハエ目,カメムシ目,ハチ目の順で多く,環礁で少なく火山島で多い傾向が見られた.7.甲板では,アカアシホシカムシ,ヒメアケビコノハ,トゲハネバエ科の1種,ツヤウミアメンボ,ハネアリなどが得られ,これらは海洋島が点在する海域では,島嶼間を分散する能力を持つことが示唆された.
著者
村田 浩平 松浦 朝奈 岩田 眞木郎
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-10, 2007-03-25

ヒメイトアメンボは,水田に生息する水生カメムシの1種である.本研究では,本種の飼育条件下における捕食行動を明らかにするとともに,餌昆虫の1つであるセジロウンカに対する天敵としての能力を評価すること,長日条件下(16時間明期,8時間暗期)において,23℃,25℃,30℃,35℃の異なる飼育温度における本種の繁殖能力を評価した.餌昆虫の密度に対する本種の機能の反応は,セジロウンカ,キイロショウジョウバエいずれを供試した場合も飽和型を示し,セジロウンカに対する日あたり攻撃量の最大値は1.65個体,キイロショウジョウバエに対しては1.48個体であった.捕食率(捕食数餌/密度)は,両餌昆虫とも捕食数の増加とともに減少した.セジロウンカを供試した場合の寄主発見能力,攻撃摂食時間,攻撃摂食時間から予想される日あたり攻撃量の限界値は,キイロショウジョウバエを供試した場合に比べて高かった.本種の産卵行動は,水面上や容器壁面,キムワイプ上に1卵ずつ行われた.本種の産卵前期間は,およそ1〜2日であった.産卵期間は,23℃区で10.5日,25℃区で20.8日,30℃区で19.5日,35℃区で7.5日となり,25℃区と30℃区における産卵期間は23℃区と35℃区のそれらとの間に有意差は認められなかったものの,後者では産卵期間が短くなる傾向が示された.1メスあたりの平均総産卵数は,23℃区で100.8卵,25℃区で186.2卵,30℃区で223.2卵,35℃区で55.4卵となり,23℃区および35℃区における1メスあたりの平均総産卵数は25℃区,30℃区に比べて少ない傾向を示した.卵から成虫までの生存率は,25℃区で最も高く,次いで23℃区,30℃区の順で35℃区は,全卵が孵化しないか孵化失敗により死亡した.本種の卵期間は,23℃区で8.7日,25℃区で7.4日,30℃区で5.9日であり,飼育温度が高くなるにつれて有意に減少した.幼虫期は,通常5齢までであったが,25℃区,30℃区において各1個体,計2個体のみ幼虫期が6齢の個体が見られた.1齢から終齢までの幼虫期間は,23℃区で15.6日,25℃区で13.1日,35℃区で10.9日であり,温度が高くなるにつれて有意に減少した.
著者
村田 浩平
出版者
九州東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は,1992年にコンケン大学と九州東海大学間で調印された学術交流協定に基づき,タイ国の環境保全型農業における生物的防除に関する研究を1999年から2001年の3年間に渡りタイ国東北地方において実施したものである.研究期間中,九州東海大学からのべ4名を派遣し,調査を実施すると共にコンケン大学からのべ4名を招聰し,九州東海大学において調査法に関する研修を実施した.タイ国では,環境保全型水田,野菜圃場における害虫および天敵相に関する調査と,穀物貯蔵庫におけるポストハーベスト害虫の被害状況に関する調査を実施し,以下の結果を得た.1.タイ国東北部の天水田における有力天敵の1つであるキクヅキコモリグモは,雨期に冠水する水田では個体数が少ないこと,コンケン周辺の灌慨地域に個体数が多いこと,個体数の増減に水管理が大きく影響を及ぼしていることを明らかにした.2.タイ国東北部の環境保全型水田における主要害虫相を明らかにすると共に,天敵相が多様であることを明らかにした.3.タイ国東北部におけるウンカ・ヨコバイに対する捕食寄生性天敵の寄生率は,概して低いが,地域差も見られることを明らかにした.4.トビイロウンカ寄生菌を同定し,天敵としての評価に関する実験を実施し,トビイロウンカ防除に有望な天敵であることを明らかにすると共に,簡便な培養法を開発した.5.ポストハーベスト害虫相に関する調査を実施し,タイ国東北部のコメの主要害虫による被害状況を明らかにすると共に,被害の原因として,農村部のコメの乾燥および仮集積所における貯穀害虫の侵入防止および防除が重要であることが明らかになった.
著者
村田 浩平 土屋 守正 増島 宏明
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.75-87, 2007-12-25 (Released:2018-09-21)
参考文献数
18

太平洋上空を浮遊する昆虫相に関する調査をこれまで報告例のない1月から3月にかけて東海大学海洋調査実習船望星丸により1999年,2002年,2003年の3航海実施するとともに,独立行政法人海洋研究開発機構が運行する海洋地球研究船みらいにより2005年に1航海実施し,以下のような結果を得た.1.全航海で得られた海上を浮遊する空中移動性昆虫の目別個体数は,多い順にハチ目,ハエ目,カメムシ目,チャタテムシ目,アザミウマ目,コウチュウ目であり,そのほとんどが体長1mm前後の微小な昆虫であった.2.得られた昆虫の個体数は,主な分散源と考えられるオーストラリア大陸やニューギニア島近海で多かった.また,陸地から400km以上離れた海上で得られることもあったが,多くが陸地から数十キロ以内で得られた.3.海洋上空で昆虫が得られる条件として,最も近い島から風が吹いていること,海洋上空で昆虫が得られる傾向が見られた.また,風速との関係では無風時,強風時には得られない傾向が見られた.4.航路によって得られる昆虫の個体数には違いが見られ,日本から南東への往復航路では他の航路に比べて少ない傾向が見られた.5.イチジクコバチ科の1種は,ニニーゴ島沖120kmの海上で得られ,コバチ上科の1種,アザミウマ科の1種は,ニューギニア島から40km離れた海上で生存状態で得られていることから,これらの種は,島嶼間を分散する可能性があることが示唆された.6.港に停泊中に得られた昆虫の目構成は,海洋上空とは異なり,ハエ目,カメムシ目,ハチ目の順で多く,環礁で少なく火山島で多い傾向が見られた.7.甲板では,アカアシホシカムシ,ヒメアケビコノハ,トゲハネバエ科の1種,ツヤウミアメンボ,ハネアリなどが得られ,これらは海洋島が点在する海域では,島嶼間を分散する能力を持つことが示唆された.
著者
村田 浩平
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.94, no.6, pp.486-493, 2019-06
著者
村田 浩平
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.83-96, 1995 (Released:2007-03-29)
参考文献数
22
被引用文献数
9 10

水田の栽培管理が水稲害虫の有力天敵であるクモおよびその餌昆虫の発生消長に与える影響を明らかにするために, 農薬および化学肥料を使わない保全田と慣行田において調査を行った. 1990年と1991年に, 水田内および畦畔においてクモおよび餌昆虫の個体数をスイーピソグ法によって調査し次のような結果を得た.1. 畦畔を含む水田環境では, 10科から14科のクモが採集された. 各水出とも水田内のクモの個体数はアシナガグモ科, カニグモ科, フクログモ科の順に多かった.2. 保全田の水田内では慣行田に比べてクモの個体数が明らかに多く, その差は2倍以上であった. 特に保全田では慣行田に比ベアシナガグモ科, カニグモ科, ハエトリグモ科の個体数が多かったのが特徴である. 保全田と慣行田のこのような違いは, 栽培管理の違い, 特に水管理によると考えられた.3. 水田内と畦畔のクモ相を比較すると, 両年とも畦畔が科数, 個体数ともに多い傾向がみられた. このことは, 畦畔が天敵としてのクモの温存場所として重要であることを示唆すると考えられる.4. 全ての調査水田でウンカ, ヨコバイの発生消長とクモの発生消長が重なる傾向が見られ, この傾向はウンカに比べヨコバイに対してより強かった.5. 保全田では慣行田に比べてユスリカの個体数が多く, これはクモの密度を維持するうえで重要であると考えられた.以上のことから, クモを天敵として有効に活用するためには, 農薬の使用を避け, 春期にはゲソゲを栽培し, 落水時も水田内を完全に干上がらせないことによって, ウンカ, ヨコバイの発生の間隙においても餌昆虫の安定した供給を計ること, 畦畔の除草回数を減らしクモの温存場所を確保することが重要であると考えられた.
著者
村田 浩平 土屋 守正
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

外来植物セイタカアワダチソウが侵入したことで,絶滅危惧種オオルリシジミや希少な食糞性コガネムシの生息環境がどのような影響を受けたかについて節足動物相を調査することで解明を試みた.また,草原生態系における捕食‐被食関係の解明の一環として,希少な草原性の食糞性コガネムシや土壌節足動物に関する調査を実施するとともに,捕食-被食関係を調査し,オオルリシジミを中心とした食物網を解明した.また,セイタカアワダチソウが侵入した環境において,除草の効果を評価した.研究期間中,阿蘇山の噴火や熊本地震により調査地が被害を受け,当初計画した一部の研究は実施ができないなどの問題も生じたが研究成果の公表に努力した.
著者
村田 浩平 野原 啓吾 阿部 正喜
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.21-33, 1998-06-25
被引用文献数
6

阿蘇地域におけるオオルリシジミの生息地は, 外輪山内壁と内輪山の標高400∿800mの地域に集中しており, クララの自生している地域に多く生息していることが解った.本種の生息地は, 毎年, 早春に野焼きを実施している草原に限られる.ルートセンサス法による個体数の年次変動の調査の結果, 早春の野焼きを継続している地域では, 本種の個体数が減少することもなく, 逆に早春の野焼きを停止した地域では, 個体数が著しく減少していることが判明した.しかし, 2∿3年のうちに野焼きを再開すると個体数が回復の方向へ推移することがわかった.阿蘇地域の本種が利用する吸蜜植物は, 現在までに8属8種を確認したが, 野焼き停止後数年を経過すると, これらの吸蜜植物ばかりでなく食草であるクララも減少し, ススキ等のイネ科植物の侵入によって生態系が大きく変化していることが観察された.また, 野焼きの停止は, クララの生長を悪化させることがわかった.このことから, 野焼きの停止による生息環境の変化は, 本種の個体数を著しく減少させる大きな要因の1つであると考えられる.早春における野焼きの実施は, 食草であるクララや吸蜜植物を保護し, 本種の生息環境を維持する上で有効な管理法であり, その実施は, 本種が羽化する2∿3カ月前に行う必要がある.また, クララの生育期間中の除草や採草も回避するべき作業であると考えられる.しかしながら, 畜産農家の高齢化や人手不足などから, 野焼きの実施地域は年々減少傾向にあり, 本種の存続には憂慮すべき状態となりつつある.現在, 熊本県, 阿蘇町および白水村によって全国的にも貴重な本種の保護を目的とした条例が制定されており, その内容は, 本種の全ステージの採集を禁止するものであるが, 採集禁止のみによる保護では甚だ不充分で, 野焼きの実施による生息環境の維持管理に意をそそぐ必要があると考えられる.
著者
村田 浩平
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.105-113, 2009-09-25

水田内におけるヒメイトアメンボH.proceraの発生消長,捕食行動および餌動物の種構成に関する調査を実施し,以下のような結果を得た.1.野外における本種の捕食行動は,餌動物に近づき,口吻を伸ばして構えた後,餌動物の胸部側面に口吻を刺し体液を摂取するなど,室内においてこれまで観察されている捕食行動と同様であった.2.本調査により確認された餌動物は,セジロウンカ,ツマグロヨコバイ,ユスリカ科の1種,トビムシ目の1種など水田面にいる3目5科6種の昆虫と1科のクモであった.3.本種の水田内個体数が最も多くなる9月中旬の個体数のピークは,トビイロウンカの個体数のピークとよく一致し,トビムシ目やツマグロヨコバイの発生消長とも一致する傾向がみられた.また,6月の越冬後のピークはセジロウンカのピークと一致することがあり,これらの水田昆虫が水田面において本種の餌動物になっていることが示唆された.4.本種の卵巣は,田植直後の5月下旬には未熟であり,6月下旬までに成熟し,7月中旬まで成熟個体の割合が高いこと,その後は,10月にかけて卵巣発育個体の割合は低下し,卵巣の発育を休止して越冬する可能性が高いことが示唆された.5.本種の発育零点は14.0℃,発育有効積算温量は250日度であった.これらの結果から,本種は,水田面において多様な餌動物を捕食し,ウンカ・ヨコバイ類など水稲害虫を餌の1つとしていることが明らかになった.また,トビイロウンカやツマグロヨコバイが少なくなった9月以降,越冬までの間は,トビムシ目を餌の1つとしていることが示唆された.